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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/08/17 読売新聞朝刊
[社説]戦後50年 一国主義からの脱却(中)「普通の政治」の時代を迎えた
 
 やっと日本でも「普通の政治」が始まりそうだ。
 「自衛隊違憲・非武装中立」を党是としてきた社会党の、「自衛隊合憲・日米安保体制堅持」への転換は、戦後日本の政治をいびつにしてきた根本的原因の消滅を意味している。
 自民、社会両党の対立を軸としてきた日本政治の構造は、東西冷戦の反映だったとされる。その通りではあるが、世界全体が冷戦構造の下にあった中でも、日本への反映の仕方は、極めて特殊だった。
 国の安全責任を分担するはずの大政党が、防衛力を否定し、「中立」を掲げつつ、実際には「親ソ反米」路線を推進しているというのは、世界的“奇観”ともいうべきものだった。
 この点が、西欧などの社会民主主義政党と決定的に異なる社会党の特殊性である。西欧の社民政党にとっては、共産党独裁の全体主義ソ連は、本質的に自由、民主主義の敵であり、軍事的な脅威だった。
 そうした社会党の実態と限界は、社会党・旧総評系の護憲・反戦平和運動団体「憲法擁護国民連合」(護憲連合)の近年の動きを見るとわかりやすい。
 
◆異様だった日本の政治構造
 社会党が「社会民主主義の党」といい出したり、自由と民主主義の価値観を共有する「西側の一員」などと口にしたのは、東欧のソ連圏諸国の社会主義が揺らぎ始めた八九年の夏あたりからだった。ところが、この年秋の護憲連合の大会でも、外国からの賓客として招待されていたのは、いぜん、ソ連だけだった。
 九一年秋、ソ連共産党の解体直後の大会で初めて、そうした自らの路線への「反省」が出てくる。「反戦平和運動は、社会主義国が平和勢力で資本主義国は戦争勢力と考え、反米的な性格をもっていた」と。
 それほど、日本政治の構造は、異様だった。それだけにかえって、社会党の政策転換は戦後政治史上、大きな意味をもつ、ということでもある。
 わたしたちは、長年にわたり、社会党が自衛隊違憲・安保条約反対を変えない限り、政権を担う資格はないと指摘し続け、社会主義コンプレックスにとらわれた左翼的マスコミと一線を画してきた。
 こうしたわたしたちの一貫した立場から、政権についた結果としての村山首相による社会党の政策転換は、さまざまな問題はあるにしても、歴史的な、望ましい方向の決断として評価したい。
 ただし、その後の社会党内の動きを見ると、いぜん、冷戦イデオロギー体質の大きなしっぽを引きずっているようである。「非武装」などという、現実世界では実現不可能なスローガンにこだわって、防衛論議抜きの「軍縮」を自己目的化しているところにも、それが表れている。
 防衛論議にとって重要なのは、社会党の過去のスローガンとのつじつま合わせなどではなく、現実的・中長期的視点に立った日本国民の安全保障である。冷戦時代思考の払拭(ふっしょく)を求めたい。「普通の政治」は、そこから本格化する。
 
◆安全保障論議に新しい土俵
 また、「日の丸」を国旗と認めたことも、戦後の政治・社会史上、大きな意義をもつ。これについても、わたしたちは、左翼的マスコミとは異なり、社会党が「普通の党」になるための必要条件の一つであると、繰り返し指摘してきた。
 社会党全体が、自衛隊合憲・安保体制堅持という責任政党としての思考様式に転換できれば、日本の安全保障論議にも、従来の“神学的”言語解釈論争を超えた、新しい論議の土俵ができるだろう。
 国際社会における日本の責任分担という問題にしても、これまでは「自衛隊違憲」論が、論議の入り口で障害となってきた。社会党が、海外の自然災害・人道援助に自衛隊も参加できるようにする国際緊急援助法の改正にまで反対したのは、その典型的な例である。
 そうした入り口の障害がなくなれば、国際的平和活動への協力や、国連安保理常任理事国入り問題に関する論議も、一国平和主義的な視野を超えた内容になる可能性が広がる。ひいては、国際経済との協調の在り方についても、一国繁栄主義的な思考からの脱却へと、波及効果が生じよう。
 自衛隊の合憲・違憲という対立軸の消滅は、憲法論議の在り方にも変化をもたらすだろう。
 「憲法を一字一句も変えるな」式の護憲論には、自衛隊違憲論と一体不可分といった部分があった。このため、憲法改正論議といえば、とかく「九条問題」に絞られ、「戦争か平和か」「軍事大国への道」などといった感情的なレッテルを張るだけに終始しがちだった。
 先に挙げた護憲連合の「反省」にも、「冷静な憲法論議が少なく、(護憲連合の主張に)反対するものは保守反動だとキメつけ・・・」とあった
 
◆九条を超えた幅広い憲法論議を
 すでに、各種の世論調査をみれば、東西冷戦の終了と湾岸戦争の経験後、憲法論議自体をタブー視するような空気は、変わってきている。「九条問題」をめぐる状況が変化すれば、憲法の基本精神をさらに発展させるためにも憲法をさまざまな角度から冷静に見直す必要がある、との議論も高まるだろう。
 また、小選挙区比例代表並立制を柱とする政治改革の実現も、政治論議全体の枠組みの変化に拍車をかけるだろう。中選挙区制度下で、わずか十数%のイデオロギー的、情緒的支持をアテにするだけで当選できたような“棲(す)み分け”政治は、もはや、できなくなる。
 戦後五十年。日本は今、政治構造全体が変化する時代を迎えた。政党、政治家に最も求められているのは、まず二十一世紀の世界における日本の在り方を展望した明確な「国家像」の提示であり、その上に立った現実的で責任ある政策論議である。


 
 
 
 
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