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1993/02/03 読売新聞夕刊
自民・小沢調査会答申 国際貢献は改憲避け対応 「解釈拡大」に異論も(解説)
 
 自民党の「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(会長=小沢一郎・元幹事長)の答申の特徴は、武力行使を目的とした自衛隊の参加を正規の国連軍に限定し、具体的な改憲の提言にまで踏み込むのを避けたことだ。
 正規国連軍に参加を限定したのは、多国籍軍や朝鮮戦争型の準正規国連軍が国連としての意思に基づく行動かどうか議論の余地が残るのに比べ、正規軍なら「憲法が禁じている主権の発動としての武力行使とはまったく異質で憲法上も問題ない」との判断からだ。
 しかし、政府は「国連軍に自衛隊を参加させることは憲法上の問題が残る」(平成二年十月、工藤敦夫内閣法制局長官答弁)としており、今回の提言との隔たりは大きい。また、野党の中には武力行使を国際貢献の重要な役割とすることへの根強い反発があるうえ、自民党内にも「国連軍とはいえ憲法の新解釈で対応するのは無理」などの批判がある。
 こうした問題点は同調査会内部でも論議され、途中段階では「むしろすっきりと改憲を提言して国民的議論を起こすべきだ」との意見もあった。しかし、小沢氏は「改憲への道のりはなお遠く、その間、国際貢献をしないわけにはいかない」との政治判断から改憲論を抑えた経緯がある。
 結局、今回の提言では、憲法改正による論理的な分かりやすさより、自衛のための武力行使以外は一切禁じてきた従来の政府解釈に風穴をあけることを優先した形だ。言い換えれば「新時代に合った憲法の読み方をして欲しい」というのが提言の眼目だと言っていい。
 今後、新解釈に対する反対論や、正規国連軍に参加を限定したことで「国際貢献の幅を狭めた」との批判が噴き出ることも予想され、提言をきっかけに憲法論議に一段と拍車がかかりそうだ。  (政治部 村岡彰敏)


 
 
 
 
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