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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/05/04 毎日新聞朝刊
[近聞遠見]平野貞夫の「憲法欠陥問答」=岩見隆夫<編集局顧問>
 
 4月6日の参院決算委員会。質問者として、自由党の平野貞夫(党副幹事長・比例代表)が立った。
 「憲法改正手続きの整備について質問したい。手続きを定めた憲法96条では、国会が3分の2以上の賛成で改正を発議し、国民投票で過半数の賛成が必要、とされているが、この規定だけで改正は可能かどうか」
 大森政輔法制局長官が答える。
 「たとえば国民投票の投票日をどうするか、投票権者の範囲、投票方法とか、法律でこれを定める必要がある。現行法制だけでは動かない」
 平野:「憲法が制定されて半世紀以上たつのに、国民投票法とか国会法の整備ができていない。諸外国にこんなケースはない。憲法体系の不備と認識していいのか」
 大森:「どういう言葉を使うのが適切かちょっと戸惑うわけだが、内閣としては、国の基本法である憲法改正の具体的な内容について、国民の合意が形成されていないというふうに、いままで考えてきた。
 したがって、(手続き法の)整備については、国会でのご議論、それがまさに行われようとしているやに漏れ聞いているので、ご議論を踏まえて検討されるべき問題だろう」
 平野:「改正の機運があるとかないとかじゃなく、これは国家統治機構の欠陥だと思う。長年の放置は99条の憲法尊重、擁護義務違反じゃないか」
 大森:「そう言われるのも非常につらいが、やはり憲法をめぐる政治情勢というものがあった・・・」
 平野:「ちょっと政治的意見が入りすぎている。そこは切断して、論理として答えてほしい。過去に改正手続きの整備の動きはあったのか」
 大森:「文献資料によると、昭和27年ごろ自治省で『憲法改正国民投票法案』の草案的なものが立案されたが、国会には提出されなかった」
 平野:「このままでは国民の憲法制定権が行使できない。重大な問題だ」
 このやりとりの後、護憲論者の宮沢喜一蔵相にホコ先を向けた。
 「総理経験者として感想を聞きたいが、やはり今世紀中に整備をしておかなきゃならないのではないか」
 宮沢の答えはこうだった。
 「日本国憲法の法体系として、96条にもとづく所要の法はつくっておくべきであった。本来そういうものだろう、と私は純粋に思う。
 実は憲法がつくられて50年、そのいかなる段階においても、今日はなおさらそうだが、この96条の法整備をしよう、国民投票法とか国会法改正とか提案すれば、必ず憲法改正をするしないの議論につながらざるを得ない。
 お互いに法律を冷たく考える立場からいえば、そんな理屈はないわけだが、いままでないものをここで整備するのは、やっぱり(改正を)やる気があるんだろう、という議論を呼び起こすことは間違いない。
 それから、改正を議論することになると、最近(改正内容で)微妙な変化があると思うが、必ず9条問題がでてくる。これは不可避で、再び大変なことになるのではないだろうか」
 平野は、「私は、この憲法の欠陥をそのまま放置していることが、日本国家の衰退の原因だと思っている」
 と発言して、論議を締めくくった。
 知事選挙投票日の5日前だから、東京は熱気の渦だった。そんななか、国会の片隅でやられたこの短い「憲法欠陥問答」は大変に興味深い。
 以前長く衆院事務局で、議長秘書や委員部長などを務めた経験を持つ平野は、政界きっての国会通である。小沢一郎自由党党首の知恵袋としても知られる。その平野が憲法論議に新たな視点を持ち込んだ。
 1947年5月3日に日本国憲法が施行されてから、きのうで丸52年。改正問題はたえず上澄みのところでやられてきた。護憲論者も改憲論者も大まじめのようで、どこか人ごとだった。双方とも、
 「いまはできまい」
 というアウンの合意のなかに安住していたのではないか。そこに国家の衰えをみる、という平野の憂国の情は、よく理解できる。(敬称略)


 
 
 
 
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