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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/10/30 毎日新聞朝刊
[社説]「協力法」を撤回し出直せ
 
 国連平和協力法案をめぐる国会の論戦を通じ、政府のあいまいな姿勢や法案の基本的な欠陥がはっきりしてきた。それらは、国民世論の厳しい批判を浴びているだけでなく、アジア近隣諸国の反発をも招いている。
 毎日新聞が行った自民党衆院議員のアンケート調査では、同法案成立を見越す議員は三割にも満たない。憲法に抵触するとか、なんらかの疑問を感じている意見は三割に達している。足元の自民党内にすら同法案への疑問や異論が強いことが分かる。
 野党は、社会、公明、共産の各党が法案に反対し、民社党も慎重論に傾いている。海部首相や小沢自民党幹事長は法案修正に柔軟な姿勢を示しはじめたというが、「自衛隊派遣」という根幹にかかわる修正には応じない方針なので、与野党の妥協の余地はほぼないとみていいだろう。
 フランスやソ連などによる湾岸危機打開の動きが活発化しているなかで、日本の対応はいかにも視野が狭く、国際不信を招きかねない。政府は平和協力法案を速やかに撤回すべきだ。そのうえで、国際社会への貢献策について国会での幅広い論議を行い、難民救済など合意できる問題は早急に着手してもらいたい。
 海部内閣の誤りは第一に、湾岸危機の平和的解決のための外交努力や、中東難民救済など平和政策の一環としての国際協力の視点が欠落している点である。日本は国際的な地位にふさわしい貢献を求められているし、カネだけでなくヒトを含めた積極的な役割を果たさなければならない。しかし、国際協調イコール自衛隊派遣ということではないはずだ。
 首相が中東歴訪の際に、イラク第一副首相と「対話の継続」で合意しながら、その後の平和的解決のための外交展開は皆無に等しい。ヨルダンにあふれている難民の救済など中東地域で手を汚していない日本にふさわしい貢献策がいくらでもあるはずだが、外交努力はまったく不足している。
 第二に、平和憲法に基づく国の基本政策の転換を、正面から問うことなしに、なし崩しに進めている点だ。政府は自衛隊の海外派遣について、一時検討した憲法解釈の変更を断念したが、「政府統一見解」の形で憲法の拡大解釈が行われている。
 平和協力法案は国連の平和維持活動への協力よりも、多国籍軍や将来の国連軍への後方支援に重点を置いているようにみえる。その際に、多国籍軍や国連軍の指揮下に入らない「協力」は、「参加」ではないので可能というのが政府統一見解である。
 紛争地域の実態や後方支援の性格からみれば、明らかに「武力行使を伴う自衛隊の参加は憲法上許されない」とする従来の政府見解の変更であり、憲法解釈の変更にもつながる。国是の変更を、憲法改正、憲法解釈の変更にかかわる問題として正面から論議せずに、一内閣の見解として提起していることは極めて重大である。
 第三に、こうした過程で首相の姿勢がぐらつき、指導力を発揮しないまま自民党や外務省の強硬論に振り回されている結果、国民の政治不信を増幅していることである。
 これでは首相が「憲法解釈は変えない」と国会で約束しても、状況次第で前言を翻すかもしれないし、まして内閣が代わったり、参院で自民党が多数を握るようなことがあれば、同じような法案を再提出するのではないかという疑問を抱かせる。
 この問題での政府のボタンのかけ違いは、自衛隊の派遣が実現しないことで米国の不興をかい、それを検討しているためにアジア近隣諸国の反発を招き、独自の貢献策を打ち出せないことで中東諸国を失望させるという最悪の選択になりつつある。
 政府は協力法案を撤回し、平和憲法の理念を生かしたポスト冷戦下の国際貢献策を再検討すべきである。軍事偏重の姿勢を改め、国連の平和維持活動(PKO)に対する協力など、非軍事的な貢献を中心に据えて国民合意を探る必要がある。


 
 
 
 
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