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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/08/03 毎日新聞朝刊
[綱領物語]/8 自民党 なりひそめる改憲論
 
◇天皇発言と冷戦構造崩壊で
 「国の利害がからむ政治の場に天皇陛下のお言葉を借りるということは、そもそも決して良いことではない。憲法の趣旨に反する」
 今年五月十四日、国会内で記者会見した小沢自民党幹事長は、こう韓国側に反論した。ちょうどこの日、ソウルでは訪日を十日後に控えた盧泰愚(ノ・テウ)韓国大統領が日本人記者団との懇談で、過去の植民地統治に対する謝罪と反省を期待していると表明したばかりだった。
 自民党は、党の政策の基本を示した「政綱」に自主憲法の制定を明記している。改憲が党是なのだ。その自民党ナンバー2の口から“護憲の言葉”が飛び出したことは極めて異例だった。
 自由、民主両党による「保守合同」で現在の自民党が結成されたのは一九五五年(昭和三十年)十一月だ。対日講和条約が発効し、連合軍総司令部(GHQ)が廃止されて三年目。独立国になったという気負いも手伝い「占領下の押しつけ憲法反対」というムードが自由、民主両党に強かった。
 とくに民主党の鳩山一郎元首相は、経済復興を優先し憲法改正に消極的姿勢を貫いていた自由党の吉田茂元首相に対抗するうえからも「再軍備」「憲法改正」を前面に掲げた。
 新党の「政綱」は自由、民主両党から選ばれた十人ずつの政策委員らが策定した。長年、憲法問題に携わってきた党職員の一人は「政綱作りは実態的には多数党だった民主党ペースで進められた」と語る。
 その後、自民党は八五年(昭和六十年)の結党三十周年を機に「時代に合わせるため」と内容を改正したが、この間、政綱も無風ではなかった。改憲の表現を残すか残さないかで、党内論議が繰り広げられた。
 その一つが七五年(昭和五十年)十一月、結党二十周年を期して党政綱等改正委員会幹事会(河野洋平座長)がまとめた草案だ。自民党はその前年の参院選で“企業ぐるみ選挙批判”を浴び敗北。党内から「党の近代化が遅れていたからだ。政綱にも問題がある」との声が上がり、当時の松野頼三政調会長が河野氏に草案作りを指示した。
 草案は「自主憲法制定」には全く触れず「憲法を含め諸制度を見直し、改革に努力する」とのマイルドな表現だった。しかし当時のタカ派グループ「青嵐会」などは強く反発、草案は日の目を見ずに終わった。この一件は河野氏らがその後、脱党し新自由クラブ結成に走る一因につながる。
 八〇年(昭和五十五年)には、衆参同日選挙での圧勝を背景に奥野法相(当時)が「押しつけ憲法論」を展開、物議をかもしたこともあった。
 こうした改憲派の主張のポイントは、象徴天皇制(第一条)と戦力の不保持(第九条)を改正し、天皇の元首化と自衛隊認知を目ざすというものだった。
 しかし、いま自民党内に改憲を現実の政治日程に乗せようという動きはない。冒頭の小沢発言は「お言葉問題で『これ以上、譲るべきではない』というタカ派の声を代弁し、象徴天皇制を都合よく逆利用しただけ」(自民党若手議員)との側面はあるものの、「改憲しろといまブチ上げる状況にない」(亀井静香・国家基本問題同志会座長)からだ。
 それは天皇陛下が昨年一月九日の「即位後朝見の儀」で「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」と述べられたことも大きく影響している。
 事実、その直後(一月三十一日)の党大会宣言は「自主憲法の制定は立党以来の党是だ。われわれは現行憲法を常に検討し国民的合意が得られるよう啓蒙(もう)普及につとめる」との表現に変わり、前半までの「現行憲法を常に見直し、その改正について絶えず研究・検討を重ねる」のくだりが消えた。宣言作成にかかわった関係者の一人は「陛下の護憲発言も表現を変えた一つの要因だった」と認めている。
 もう一つの防衛論。戦後の冷戦構造を背景にしたものだったが、社会主義陣営が“崩壊”し、冷戦構造の終えん、軍縮機運の高まりの中では、これも言い出しにくい状況になった。
 自民党内には現在も憲法問題調査会(栗原祐幸会長)がある。しかし昨年十二月以来、一度も開かれていない。(おわり)
 
◇政綱のうち改憲に関する表現◇
【結党時】
 平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正を図り、占領諸法制を再検討し国情に即してこの改廃を行う。
【現在】
 わが党は自主憲法の制定即ち憲法の自主的改正を立党以来の党是としている。今後とも平和主義、民主主義、基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、時代の変遷に即して現行憲法の改正につき検討を進める。


 
 
 
 
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