日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/10/21 朝日新聞朝刊
「論憲」読めぬ後半戦(憲法を考える)
 
 国会の憲法調査会は、設置期間5年の折り返しを超えた。これを機に、衆院の憲法調査会が11月3日に中間報告を公表するが、各党の対立を背景に「資料」に徹する見通しだ。この2年半、「9条」以外を突破口に改憲を目指す動きが目立ったが、小泉首相の誕生で盛り上がった首相公選制の熱は冷めた。環境権導入などで「タブーなき改憲論議」を唱える若手が台頭した民主党も党内のまとまりを欠き、失速気味になっている。
 「憲法9条(改正)は、日本は戦争の後遺症が強いですから、政治課題に乗せることは難しい」
 小泉首相は昨年4月の就任直後の記者会見で憲法問題について、そう発言した。さらに「私が一番こうすれば改正できる、と思っているのが首相公選制です」と提起した。
 護憲派の反発が強い「9条改正」を正面から問うことは避け、改憲に踏み出す切り口を首相公選制に求める――いわば迂回(うかい)戦術だ。
 
●論点整理だけ
 首相は「首相公選制を考える懇談会」(座長・佐々木毅東大学長)をつくり、昨年7月には「国民が納得できる具体的な公選制の姿を提示してほしい」と指示した。
 しかし、同年9月の衆院憲法調査会によるイスラエル訪問をきっかけに風向きは変わる。
 同国は公選制を導入したものの、小党分立と政局の混乱で5年間で廃止。「議会にも首相にも良くない制度だった」(ペレス元首相)との声に触れ、積極的だった調査会メンバーもトーンダウンした。
 今年に入ってしばらく続いた内閣支持率の低迷も首相公選論に影を落とした。佐々木懇談会が今年8月に提出した報告書は論点整理にとどまった。首相の意気込みは大きく後退。高支持率を背景とし、首相公選制をテコに改憲を狙う動きはしぼんだ。
 
●若手は前向き
 「憲法改正も視野に入れて人権保障の議論を深めたい」
 7月25日。衆院調査会の島聡・基本的人権に関する調査小委員長(民主党)は、通常国会での議論をこう総括した。民主党の若手には、環境権など「新しい人権」を導入する形での改憲を目指す志向が強まっている。
 島氏は9条改正に抵抗感がある民主党議員も「新しい人権」を盛り込むことには前向きだ、という。自民と民主がまとまれば、憲法改正を発議できる議員数3分の2に達する。「我々が動けば改憲は現実のテーマになる。今後、調査会では各条項ごとに議論を進めるべきだ」と強調する。
 自民や公明でも世代交代が進む。戦後生まれの赤松正雄代議士(公明)のように「憲法も現実も変化するものと認識し、タブーを設けず議論すべきだ」と発言する議員が目立つようになった。
 島氏らは、「押しつけ憲法論」を唱えて改憲を求めるベテラン議員とは一線を画す「新改憲派」とも呼べるグループだ。
 こうした状況に「議論の共通認識ができてきた」(中山太郎・衆院調査会長)と、民主と与党間での改憲論議の収斂(しゅうれん)に期待する声も増えてきた。
 だが、民主党代表選をめぐる混乱は、寄り合い所帯である同党の体質を裏付ける結果になった。
 同党憲法調査会は7月末の報告書で日本の多国籍軍参加を選択肢に加えたものの、改憲の是非については判断を先送りしている。党内の混乱が長引けば、避けてきた9条問題で路線対立が再燃する可能性も大きい。
 
●活性化いかに
 国会調査会とは別に、憲法論議の行方の試金石となるのが、憲法96条にある憲法改正手続きを具体化する「憲法改正国民投票法案」の扱いだ。共産、社民両党を除く与野党議員が参加する憲法調査推進議員連盟(中山会長)が中心になり国会提出への準備を進めている。
 各論での意見集約が進まないなか比較的、各党間での合意が容易とみられる手続き面での見直しを優先しようというのだ。
 しかし依然として、「主舞台」であるはずの調査会の方向性は定まらない。
 11月公表の中間報告は、改憲への「一里塚」になるという護憲派の反発もあり、討論や参考人質疑の発言を並べるだけの内容に落ち着く。
 地方公聴会でも、参加した市民陳述人の半数以上が現行憲法の堅持を求める意見を示した。中山会長も「国会と世論には隔たりがある」と認める。
 これまで同様、改憲派・護憲派双方がそれぞれの主張を繰り返すのか、それともなんらかの方向性を打ち出すのか。なによりも、いかに論議を国民レベルに広げ、活性化させていくのか。調査会は「後半戦」に入る。
 (伊藤厚史、西山公隆)
 
○安保面、潮流とズレ 政治を国民の手に 衆院憲法調査会・中山太郎会長に聞く
 衆院憲法調査会の中間報告がまとまり、5年を期限とする調査期間も「後半戦」に入る。同調査会の中山太郎会長に2年半に及ぶ議論の総括や、今後の展望を聞いた。
(聞き手・伊藤厚史)
 
●改正が国際的な常識
 ――今までの憲法調査会による議論の成果は。
 調査会ができるまでは、護憲論と改憲論の間に「橋のない川」があった。それが調査会の参考人質疑や海外調査を通じて、各党とも共通認識を持ったのではないか。
 ――共通認識とは。
 憲法は改正するのが国際的な常識だ、ということだ。「日本国憲法は世界一だ」と言う人もいるが、海外調査で訪れた国のなかで、日本国憲法を参考にして憲法をつくった国はなかった。
 ――日本の憲法は世界の主流ではないと。
 私はそう思う。特に安全保障の面ではっきりしている。(制定当初は)国連に対して安全保障上の期待があったと思う。しかし、冷戦時代に国連は機能を発揮できず、冷戦後も戦闘が世界各地で続いている現実はだれも否定できない。そこで日本はどうするかが、議論の出発点だ。
 ――9条問題はどう議論を進めていくのか。
 中国も訪問したが、日本の軍事的なプレゼンス拡大に懸念が示された。だからこそ、日本の立場をきちんと周辺諸国に説明することが大切だ。調査会は英文ホームページなどで広報しており、アジア諸国にも調査会の活動を伝える努力をしたい。
 ――民主党憲法調査会は7月、多国籍軍への参加も選択肢に入れる報告を出した。
 野党第一党が安全保障の議論を盛んにするのは好ましい。グローバリゼーションの中で地域の安全保障が問われ、各党とも国のあり方について、考え方を出してきた。
 ――調査会の議論を聞くと、自民・民主の若手議員の憲法観は接近している印象もある。
 占領期を体験した人は「自国の憲法は自国でつくる」という原則論にこだわる。しかし、今は世界的な再編期の中で、日本の位置づけを考える人が増えている。
 ――今後の議論の焦点は。
 政党のあり方を憲法に規定すべきだ。国民は税負担で政党助成金を出しているが、リーダーを直接選ぶ権利を持っていない。選挙後に派閥争いで決まるのを横で見ているしかなかった。
 首相公選制はトーンダウンしたが、それに代わる方法では、例えば英国のように政党が首相候補を事前に明示して選挙に臨めば、実質的な「首相公選制」になる。議院内閣制を中心に、国民が参画できるリーダーの選び方については今後の課題になるだろう。
 ――政治制度や統治機構が大きな論点になると。
 一番大事なのは政治と国民との乖離(かいり)を防ぐことだ。国民による国民のための政治が求められている。憲法改正のための国民投票法や、個別の政策課題をテーマにする国民投票制度も議論されるべきだ。
 
●憲法判断の場もっと
 ――その他の課題は。
 各国とも憲法裁判所が非常に大きな機能を果たしている。日本の最高裁は憲法判断を避ける傾向があり、憲法裁判が長引くのも好ましくない。人権擁護などで憲法判断する場が必要だ。
 ――11月公表の中間報告は今後の議論とどうかかわるのか。
 国民に訴える一つの機会だと思う。調査会の各委員や参考人がどんな発言しているか、みな知らないと思う。国民に憲法論議にもっと参加してもらう方法を考えたい。中間報告は、公正中立に事務局が整理することが好ましいと思っている。
 ――衆参両院の調査会で若干取り組みが違う。「後半戦」に入り、どう運営していくのか。
 参院の調査会長と協議したい。合同審査会か、懇談会方式にするのか。情報交換は不可欠だと考える。
 
◆衆院憲法調査会の主な論点(中間報告素案から抜粋)
【9条】
《集団的自衛権行使に肯定的意見》
 ▽集団的自衛権は他国とともに武力を行使するという権利でなく、自国を守るために行使する権利であり、主権国家である以上、これを保持し、行使できるのは当然(自民・久間章生氏)
 
《集団的自衛権行使に否定的・慎重な意見》
 ▽行使を認めることはアジア諸国に不信感と脅威を与え、国益を擁護する観点からはマイナスの効果が生じるのでは(社民・日森文尋氏)
 
《自衛隊は合憲との発言》
 ▽9条は侵略のための軍隊の保持を禁ずるものと解釈すれば、一定程度の軍事力の保持は許される(自民・奥野誠亮氏)
 
《自衛隊は合憲であり、憲法に明記を》
 ▽侵略戦争を禁止する9条1項を堅持しつつ、現実に合わない(戦力不保持などを定めた)2項を改正し、自衛隊の存在を認める方向で議論を尽くすべきだ(自民・葉梨信行氏)
 
《自衛隊は違憲の疑いがあり、憲法に明記を》
 ▽9条の規範的意味を考えれば自衛隊の存在は違憲だが、解釈改憲と日本を取り巻く環境の変化により状況が変化した(民主・前原誠司氏)
 
《自衛隊は違憲の疑いがあり、解消すべきだ》
 ▽9条について、自衛のための軍隊や国際安全保障上の共同行動に参画するための軍隊を保持できるとの解釈を導き出すことはできない(共産・佐々木陸海氏)
 
【新しい権利】(環境権など)
《憲法への明記に積極的意見》
 ▽情報公開、環境権について憲法に明文の規定を設けるべきだ(自由・武山百合子氏)
 
《明記する必要がないとの意見》
 ▽あえて憲法上明記する必要があるのか。どのようなメリットがあるのか検討すべきだ(民主・山花郁夫氏)
 ▽環境権、知る権利などの「新しい人権」は現憲法の中でもいくらでも法律制定によって押し広げていくことが可能だ(社民・金子哲夫氏)
 
【公共の福祉】(人権制約の必要性)
《概念の明確化に関する発言》
 ▽人権の過度の主張は他人の人権を侵すことになるのだから、公共の福祉にもう少し具体的な指針を示した方がいい(自民・森山真弓氏)
 
《公共の福祉を重視する発言》
 ▽日本国が危殆(きたい)にひんした時、きちんとした法的手続きの下で権利が制限されることは、むしろ我々が権利を享受するため必要(自民・石破茂氏)
 ▽憲法改正では(国民の権利と義務を規定した)第三章の見直しや国を守る義務を定めることが最優先課題(自民・山崎拓氏)
 
《人権制約の強化を警戒する発言》
 ▽土地収用法などにみられるように政府や自治体という立場に立って公共の福祉が強調されすぎている(社民・金子哲夫氏)
 
【首相公選制】
《導入に積極的評価》
 ▽迅速なリーダーシップ発揮の実現には、議院内閣制では限界があり、首相公選制の導入が必要である(民主・島聡氏)
 
《導入に消極的な評価》
 ▽首相公選制が今日の日本にとり適切かどうか疑問。現在の議会制民主主義を健全な形に作り上げていく方が適切(自民・額賀福志郎氏)
 ▽マスコミを通して政治家が評価されている現状を考えるとポピュリズムにつながる恐れがある(自民・西川京子氏)
 
【両院制】(参議院のあり方など)
《両院制の維持に積極的な意見》
 ▽激変の時代に両院制は、両院においてそれぞれ審議することを確保する点では意義。これを維持すべきである(民主・伴野豊氏)
 
《両院制の維持に消極的な意見》
 ▽現実には両院とも同様の議論をしているため、結果として法案の審議や成立が遅れており、必ずしも両院制の維持には賛成できない(保守・井上喜一氏)
 
【地方自治】(道州制、住民投票制度など)
《道州制導入に積極的な発言》
 ▽市町村合併が進み、基礎的自治体に権限と税・財源が移譲された後は都道府県を整理して道州制を導入し、無駄のない国の統治構造を作るべきである(自民・保岡興治氏)
 
《道州制導入に否定的な発言》
 ▽道州制が導入されると、住民の声が反映されにくくなることが懸念されることから、賛成できない(共産・春名なお章氏)
 
《住民投票導入に積極的な発言》
 ▽直接政治に参加して住民投票で自分の意思を表明したいとの要求があることは、民主主義の原則から正しい(民主・中川正春氏)
 
《住民投票導入に慎重な発言》
 ▽住民投票は地方に関する事項に限定すべきで、安全保障、環境など国全体に関する事項は国会で審議すべきだ(自民・葉梨信行氏)
 
《住民投票導入にあたっての問題点》
 ▽ゴミ処理場誘致などあまりに身近な問題を住民投票に付すと、すべて反対され、行政が立ちゆかなくなる恐れがある(民主・生方幸夫氏)
 
【憲法論議の進め方】
《申し合わせ通り、5年間の調査を》
 ▽日本はいかなる国か、21世紀の日本はどうあるべきかとの観点を深く議論すべきだ。そのため5年間は必要である(公明・太田昭宏氏)
 
《調査期間の前倒しを》
 ▽拙速な改憲は避けるべきだが、5年の期間を少し前倒しして議論していくべきではないか(自民・奥田幹生氏)
 
《常設化を図るべきだとの発言》
 ▽憲法についての建設的な議論は、日本が存在する限り永遠に続けていくべきで、調査会は常設されているべきだ(民主・中野寛成氏)
 
《国家像などを議論すべきだとの発言》
 ▽調査会では21世紀の国のかたち、国家、国民のあり方を大きな切り口で語り合う機会を設けるべきではないか(自民・高市早苗氏)
 
《慎重または消極的な発言》
 ▽新しい国家像についての検討や憲法見直しの議論などは、本調査会の目的と任務を逸脱している(共産・佐々木陸海氏)


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
27位
(29,202成果物中)

成果物アクセス数
274,033

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年10月14日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から