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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/10/31 朝日新聞朝刊
集団的自衛権と集団安全保障(論点 憲法を考える)
 
 「日本の安全保障政策の歴史的転換」――国連平和維持活動(PKO)協力法、周辺事態法、テロ対策特措法と、冷戦後のこの10年、新法成立のつど、この枕詞(まくらことば)が使われてきた。何が、どう、転換しつつあるのか。
(編集委員 本田優)
 焦点は自衛隊の役割拡大だ。その本質を理解するために、概念図を描いてみた(図参照)。
 中央の楕(だ)円は、45年の国連発足後、国際法上武力行使が認められている範囲を示す。
 それは3種類から成る。他国からの武力攻撃などを阻止する「個別的自衛権」、密接な関係にある第三国が武力攻撃を受けた場合などに共に戦う「集団的自衛権」、国連軍や国連安全保障理事会の決議に基づく多国籍軍などによる「集団安全保障」だ。
 日本の憲法が自衛隊に認めている武力行使は、このうち「個別的自衛権」の一部である。
 (1)急迫不正の侵害(2)他の手段がない(3)必要最小限の実力行使――との自衛権発動の3要件を厳守しているからだ。
 米国はテロに対して「個別的自衛権」を根拠に、アフガニスタン空爆を始めたが、仮に東京でテロが起きても、日本は米国のような攻撃はできない。「必要最小限の実力行使」を超えるからだ。
 「集団的自衛権」についても、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義したうえで、「必要最小限度の範囲を超える」として禁じている。
 それが戦後日本の選択だった。この基本は、冷戦時代から現在まで変わっていない。
 
○揺れる見解
 冷戦後、「平和憲法」と「国際貢献」の間で、政府が探ってきた自衛隊の新たな役割は、楕円の外側の影の部分だ。
 A領域は、武力行使に至らない「集団的自衛権」の世界。政府の定義は「実力阻止の権利」であり、これだともともと武力行使に至らない領域は存在しないことになる。が、現実には存在する。日米安保条約による米軍への基地提供がそれだ。
 B領域は武力行使に至らない「集団安全保障」の世界。
 90年の湾岸危機で、政府は多国籍軍支援とPKO参加を可能にする国連平和協力法案を提案したが、廃案となった。これはB領域だ。
 その後、政府は目的を絞り、PKO協力法を92年に成立させた。
 99年には、第二の朝鮮戦争などを想定した周辺事態法を成立させた。国連決議を前提とせず、周辺事態での輸送などの対米支援を可能にした。
 この実態はA領域だ。だが、政府は「集団的自衛権」とは言えない。日本の「平和・安全の確保」という根拠にした。
 テロ特措法はどうか。
 国連決議は「テロ非難」で、武力行使を求めていない。米国は「個別的自衛権」を発動した。
 その米軍への補給・輸送・医療などの支援をする。政府は「国際協調」を根拠にしたが、いかにも苦しい。実態は、被災民支援などの一部を除けば、A領域だろう。
 
○責任は重く
 ともあれ、日本は周辺事態法に続いて、この特措法で、米国などの戦争に協力する自衛隊派遣に道を開いた。
 国際秩序の流動はこれからも続く。世界第2の経済力の日本の責任は重い。憲法改正をめぐる論議の一方で、楕円外の国際貢献も拡大していく必要に迫られるだろう。
 その場合、AとBのどちらの領域に重点を置くべきか。
 今回のテロは、その問題を考えるヒントを示しているように見える。
 米英はテロリスト集団やそれをかくまうタリバーンに対する戦争に入ったものの、その「出口」であるタリバーン後のアフガニスタン再建の展望と戦略を持っていないことが表面化しつつある。
 ブッシュ米大統領は急に「国連」の役割を強調しだした。米国は怒りに駆られて戦争に突入する前から、国連の枠組みを利用したテロ集団の孤立化を考えるべきだった。
 日本は同盟国として、米国にそういう忠告ができたはずだ。被災民支援とアフガニスタン再建も、憲法の理念に合う仕事だ。
 小泉純一郎首相が強調する「主体性」を生かせる道はAよりもBの方だろう。


 
 
 
 
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