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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/09/14 朝日新聞朝刊
改憲論の底流 復古的思想(点検・内閣調査会 1957―64)
 
憲法を考える
 「敗北と占領の時期を、自由な選択が制限され、外国のモデルが強制された、圧倒的に屈辱的な時代として描き出すのである」
 米国の歴史学者のジョン・ダワー氏は近著「敗北を抱きしめて」の中で、現代日本のナショナリズムの特徴の一つをこう表現した。
 それは「押しつけ憲法論」という形で改憲論の底流に流れてきたし、今夏の教科書問題や首相の靖国神社参拝問題にも通底する。
 内閣の下に作られた憲法調査会を舞台にした50年代〜60年代の改憲論に共通するキーワードは、「押しつけ」と「歴史・伝統」の強調だった。
 例えば、改憲派委員17人による共同意見書は「憲法の目指す平和主義、民主主義などの根本精神には何人といえども反対してはいない」と言いつつ、次のような理由で憲法の全面改定を訴えた。
 いわく、「日本民族の祖国愛、自主性、伝統に根ざすことによって、はじめて『日本人の、日本人による、日本人のための憲法』とすることができる」
 憲法の基本原理は評価すると言いながら、共同意見書が各論で主張したのは、天皇の元首化であり、国民の国防義務の明記であり、公共の福祉を強調した基本的人権の制限だった。
 「憲法の人権規定はいささか時代遅れの感がある」(共同意見書)と新しさを装いつつ、その本質は、ダワー氏の言葉を借りれば、「過去につながる『橋』をもう一度後戻りし、後ろ向きに進む」ような中身にほかならなかった。
 それから約40年たった衆参両院の憲法調査会。改憲論の中で押しつけ論こそ少数派になったものの、似通った主張が繰り返されている。
 「憲法は時代遅れになった」という論者が、「自由や権利に関する規定が非常に多く、義務や責任といったところに対する規定が甘い」「権利のみを主張し、国家、社会、家族への責任と義務を軽視する風潮を改めるべきだ」などと基本的人権の制約を求めている。
 改憲論者がしばしば改定回数の多さで引き合いに出すドイツ基本法は、その第1条でうたう。
 「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、かつ、保護することは、すべての国家権力の責務である」
 ここに表れているのは、日本国憲法と同じように、個人の権利や自由を保障するために国家権力を制限することを目的とした近代立憲主義の普遍的な考えである。
 「国家権力の制限」ではなく、「個人の権利の制限」を繰り返し強調する倒錯した改憲論。そこには、「憲法は我々が早まった決断をしないための戒めとなる意図的な障害物である」(長谷部恭男・東大教授)という本質的な理解がおよそ欠けているのである。
 独立の回復と冷戦下の再軍備の中で生まれた50年代の改憲論の中心が「押しつけ憲法論」だったのに対し、湾岸戦争をきっかけにわき起こった90年代改憲論は「国際貢献論」を中核とし、質的な変化も生まれてはいる。
 しかし、この夏のナショナリズムの高揚にみられるように、復古的思想が克服されたわけではない。国際貢献といっても、「正義のための武力」を否定する憲法9条との間でたえず緊張関係を強いられることになるだろう。
 内閣調査会は7年にわたる審議を経て、1161ページに上る分厚い報告書を作成した。社会党のボイコットの中で審議が進むなど調査に一定の限界はあったものの、400人を超える参考人から意見を聞くなど、膨大な記録を残した。
 そこで何が明らかになったのか。国会の憲法調査会が今、真しに学びとることは少なくない。(論説委員・豊秀一)
 
 「点検 内閣調査会」は今回で終わります


 
 
 
 
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