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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/12/09 朝日新聞朝刊
「九条の役割」で激論(憲法を考える)
 
 憲法調査会は衆参両院とも「国のかたち」をテーマにした参考人招致が熱を帯びてきた。参院は十一月十五日に西部邁、佐高信両氏を、同二十七日に加藤周一、内田健三両氏を招き、それぞれ評論家の立場からの意見を聴いた。衆院は十一月三十日に石原慎太郎・東京都知事とジャーナリストの桜井よしこ氏を参考人に招き、憲法九条が戦後の国際社会に果たしてきた役割や、安全保障や国際貢献に一定の武力を準備することが現実的かどうかなどについて改憲、護憲の両論が活発に交わされた。
(本田雅和、豊秀一)
 「日本(国憲法)の九条を礼賛しても、どこの国が日本に続いて自国の戦力を放棄しますか。その国が現れてきたら私は世界を見直すけれど、そんなものはあり得ない」
 十一月三十日の衆院調査会。石原慎太郎都知事は、山口富男氏(共産)の質疑時間が終わろうとしていたのを「ちょっと、ひとこと」と遮って発言した。
 山口氏は、昨年五月のハーグ平和市民会議での決議や米国での九条の理念を広げようという運動を例に「世界には九条を学ぶべきであるとの動きがある」と述べ、九条の役割を否定的にとらえる石原氏との食い違いを指摘して質疑を締めくくっていた。
 石原氏は、憲法前文や九条の平和主義について「国民の生命、財産を守るという国家の責任を外国人の好意にゆだねること」と解釈し、「他国の人間が見たら皆笑う」と言い切った。また、連合の鷲尾悦也会長が事務局長だったころ、当時会長だった山岸章氏らと交わした「改憲論議」も紹介した。
 「(二人が)石原さん、とにかく憲法を直しましょう。九条になるとやっかいだから、まず直すくせをつけた方がいいと、連合の労働組合の連中が非常におもしろい発言をした」
 石原氏は代議士時代、九条改定を棚上げにした改憲論を執筆している。その理由を柳沢伯夫氏(自民)に問われて「そのときの(連合側の)発言を斟酌(しんしゃく)した」と説明するためだった。
 もっとも、調査会の後の朝日新聞の取材に対して、鷲尾氏は「直すくせをつけようなどとは言っていない」と否定する。「九条や前文の理念的部分は変える必要がないと考えているし、世論を二分する議論になるのでじっくりやればいい。ただ五十年たち社会構造も変わった。総点検して国民的合意で直せるところは直せばいいじゃないかと話した」と振り返る。
 桜井よしこ参考人は、九条の役割について「過去五十年余の日本の平和は九条によるものではなく、軍事力を担保する日米安保条約があったから、中国もロシアも日本に手を出さなかった」と発言した。与党席からは護憲派の委員の席に向けて「分かったか!」というヤジが飛んだ。
 桜井氏の発言は、三日前、参院で加藤周一参考人が述べたことと対照的だった。加藤氏の見方は「冷戦時代、日本への侵略者として想定されたのはソ連(現ロシア)と中国だった。しかし、中国の脅威がまず消えたのは一九七二年、日中で平和友好条約締結を決めたから。日本の再軍備が進んだからではないし、日米安保条約が強化されたからでもない」。
 
 福島瑞穂委員(社民):ご両人に聞きたい。かつて侵略戦争とうたって行われた戦争はあったのか?
 西部邁参考人:そういう質問の仕方自体に、ある種卑劣なものを感じる。
 佐高信参考人:すべて、ほとんど戦争は自衛の名の下において行われたと思う。
 十一月十五日の参院調査会。焦点である九条二項を「侵略戦争禁止のための戦力否定」とする西部氏は「日本人を侵略と自衛を区別する能力がないか、自衛を口実に必ず侵略する好戦的な民族であると自ら認めている。とんでもない」と語った。「九条改正の際には日本国民には国防の義務ありと明記すべきだ」と述べた。
 一方の佐高氏は九条に関して「平和外交」「一国平和主義」といったさまざまな議論があることを指摘したうえで「外(海外)に向かって九条の意味を外務省を中心として説いたことがあるのか」と問いかけた。
 さらに湾岸戦争当時、「日本はカネは出すが血は流さない」との非難が高まったころに高知県の一人の高校生が米国のコラムニスト、ボブ・グリーン氏へ手紙を出し、九条の存在を知らせた逸話を披露した。「それをグリーン氏がコラムに書き、それを読んだ米国人から九条があるなんて知らなかった、米国にも欲しいという多くの手紙が高校生に寄せられた。九条こそ世界に輸出すべきなのではないか」と語った。
 
 加藤参考人は十一月二十七日、戦争無制限の時代から「自衛」や「人道」のための武力行使などを例外にしたうえで戦争を制限する時代に入り、その先にある第三段階が「例外のない戦争放棄」だとして「戦争違法化への流れ」を説明した。日本国憲法が例外を認めなかった理由を「自衛の定義があいまいで、近代戦争のほとんどが自衛の名のもとに行われた」と指摘。「日本国憲法より先に自衛の武力に反対したのはガンジーだった」と述べた。
 ガンジーの話は、衆院調査会でも石原氏が九条との関連で言及した。石原氏は「非暴力不服従運動」を「無抵抗主義」と呼び「『無抵抗主義』は英国の統治を長くしただけだ。インド人の憂き目を私は味わいたくない」と話した。
 この見解も加藤氏の述べた内容と対立する。加藤氏は「ガンジーは武器を放棄したが抵抗は放棄してはいない。これは現実的で合理的な政策だった」とし、「もしインドが第二次大戦以前に武器を用いる独立運動をしていたら、英国の強大な武力の使用を招来することになっていただろう。結果は目に見えていた」と、英国統治が長引いた可能性を示唆していた。
 
<語録>
○ブラックリスト
 憲法の根幹は九九条にある。天皇または摂政、大臣、国会議員、裁判官、その他公務員は憲法を尊重し擁護する義務を負う。改めてこれらの人間にこの義務を課したのは、歴史的にここに掲げられた人間たちが憲法を破ってきたからであり、憲法を邪魔者扱いする要注意人物ですよ、という警報というふうに思う。憲法にとっての危険人物のブラックリストだ。(佐高信参考人)
 
○女性にとっての九条
 ある母親はこう言う。男女同権もありがたいが、何よりもありがたいのは九条。夫や子どもを軍隊に徴集されない権利が与えられた。軍隊に行けとか戦争で死ねと、心を偽る必要がなくなり、安心して夫や子に愛情を注ぐことができるようになった。戦前は「婦人は本来的に平和主義者であり、選挙権を与えれば戦争のじゃまになる」との陸軍参謀本部の反対意見もあった。(佐高信参考人)
 
○内閣法制局は憲法違反
 内閣法制局の解釈というものは百害あって一理なし。政治家のみなさんこそが国民の代表で、大臣の発言を差し置いて内閣法制局がこうでなければならないという権限はどこに由来するのか。私は内閣法制局の存在そのものが憲法違反であると思っていますので、内閣法制局の出した集団安全保障についての行使ができるとかできないという議論は、受け入れられない。(桜井よしこ参考人)
 
○法の存在理由
 自衛隊が憲法と矛盾するという。しかし、一般論でいえば、現実とのかい離は法律の存在理由だ。どろぼうがいなければ刑法はいらない。徹底した平和主義は世界を先取りしているだけでなく、日本の将来にとって有効な施策を憲法が先取りしている。憲法に表れていることを実現することが日本の将来を開く。これは米国憲法と公民権の関係に似ている。人種の平等をうたっているが、米国は憲法を変えて人種差別の現実に合わせようとはしなかった。そして公民権運動は一九六〇年代から七〇年代に大きな成果を上げた。(加藤周一参考人)
 
○小選挙区発想の背景
 私どもは戦争を始めたことにも負けたことにも全く責任がない世代。押しつけられたとかの議論にもほとんど関心がない。今の憲法を五十年愛してきたけれど、そろそろ改正の時期に来て、四、五年のうちに変わらなければならないと考えている。憲法の改正規定は大変厳しい。マッカーサー草案の段階でも大議論になったそうだ。鳩山内閣は国会の三分の二以上という関門(発議の条件)を突破できないものだから何とかして三分の二を取りたいと、小選挙区を発想したというのが当時の実情ではなかったか。(木村仁氏=自民)


 
 
 
 
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