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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/10/05 朝日新聞朝刊
制定過程:上 国民の意思(点検・内閣調査会 1957―64年)
 
憲法を考える
 一九五五年の保守合同で成立した自民党は、政綱で「現行憲法の自主的改正をはかる」とうたい、翌五六年二月に当時の岸信介幹事長らの発議で「憲法調査会法案」を国会に提出。内閣の下に憲法調査会(内閣調査会)が設置された。社会党は参加せず、自民党国会議員十八人、緑風会の国会議員二人、学識経験者十九人の計三十九人でスタート。五七年八月以降、六四年七月まで総会を百三十一回開き(委員会などの会議は計三百十九回)、四百人を超える参考人から意見を聞いた。何が議論され、どんな結論に至ったのか。随時、点検していく。
 日本国憲法は、連合国軍総司令部(GHQ)から押しつけられたものなのか、そうでないのか――。内閣調査会の最大の争点の一つは、憲法を作る際に国民の自由な意思が働いたといえるかどうかにあった。
 内閣調査会は制定経過に関する小委員会を作り、五八年一月から六一年九月まで四十九回の会議で延べ四十人を超える参考人らから意見を聞いた。海外調査では約三十人の米国政府やGHQ関係者から意見を聞いたり資料の提出を受けたりした。六四年七月に出された小委員会報告書は、七百八十一ページに及んだ。
 調査の中で、自主憲法の制定を目指す改憲派による「押しつけ憲法論」のよりどころとなったのは、マッカーサー草案の日本政府への交付だった。
 四六年二月十三日、ホイットニー民政局長らGHQ関係者が、独自に作った憲法草案を当時の吉田茂外相、松本烝治国務大臣らに手渡した劇的な「事件」のことだ。
 第二次世界大戦に負けた日本は連合国軍に無条件降伏し、ポツダム宣言を受諾、独自に憲法草案の作成を進める。しかし、「統治権の総攬者(そうらんしゃ)」として天皇の地位を温存するなど保守的な内容だった。その中身を四六年二月一日付の毎日新聞のスクープ記事で知って驚いたGHQが、象徴天皇制や戦争放棄などを盛り込んだ憲法草案を一週間で作り、日本政府にこれに沿う憲法改正を進言した。
 GHQ関係者が残したメモが、その場面の雰囲気を伝えている。「ホイットニー将軍の発言に、日本側の人々ははっきりとぼうぜんたる表情を示した」「特に、吉田氏の顔は驚がくと憂慮の色を示した」
 四七年五月の日本国憲法施行から七年。自由党や改進党を中心に改憲の動きが強まり、五四年七月には防衛庁・自衛隊が発足する。そのころ、松本氏は自由党憲法調査会で「GHQ側の草案に基づいて日本案が作られないと天皇の身体を保障できない、と言われた」などと証言し、「押しつけ憲法論」の推進力となっていった。
 しかし、内閣調査会の渡米調査などの結果、四六年二月十三日のGHQ側と日本政府側とのやりとりの中には、松本国務大臣の証言を裏づける資料は見あたらなかった。GHQ関係者も聞き取り調査でこうした発言の存在を否定した。
 憲法制定の経過に関する小委員会報告書は「松本国務大臣がそれを脅迫と受け取ったかどうかは別として、当時の総司令部の側には脅迫の意思はなかった」と結論づけた。
 外形的に憲法の原案が英文で日本政府に渡されたことは事実だ。一方で、マッカーサー草案の作成にあたって、日本側の民間草案の一つ「憲法研究会案」が、ある程度、参照されるなどした面もあった。
 こうした経緯を踏まえ、小委員会報告書は「押しつけられたとすることも正当」としつつ「日本国民の意思も部分的に織り込まれていることも否定できない」などとし、単純な「押しつけ論」に立たなかった。


 
 
 
 
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