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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/01/22 朝日新聞朝刊
想定外のテーマ続々(憲法調査会 論議への視点:下)
 
 川面を、冷たい風が抜ける。十六日、徳島市に近い吉野川の両岸を結んで築かれた第十堰(ぜき)の上で約五百人の住民らが集会を開いた。「私たちの意見を表現できるチャンスが与えられた」
 徳島市では二十三日、この固定堰に代えて可動堰を造る国の公共事業計画への賛否を問う住民投票が実施される。問われるのは計画の是非だけではない。
 「計画に異を唱える住民の意思が政策に反映していない。間接民主制の形がい化だ」。運動母体「第十堰住民投票の会」の姫野雅義代表世話人はいう。
 憲法の基本原理の一つである国民主権。国のあり方を最終的に決めるのは国民であり、それを議会制民主主義が支える。だが、議会は本当に国民の意思を代表しているのか。全国で相次ぐ住民投票の動きは、そんな政治の現状への問いかけでもある。
 
○立法機関の壁
 住民投票にならい、全国民の意思を直接問おうという動きもある。
 民主党の桜井充参院議員は昨夏、日の丸・君が代を国旗・国歌とする法案に対抗して、法制化の是非を国民投票にかける法案の試案を作った。「国会議員だけで決めていい問題なのだろうか」と感じたからだ。党内の議論がまとまらず提出できなかったが、いま国民投票制導入に向けて有識者らの会を立ち上げようと準備中だ。「徳島の住民投票が成功すれば国民投票の議論も進む」と期待する。
 フランス、イタリア、スペインなど欧州には国民投票を憲法に規定している国が多い。一九九三年の欧州連合(EU)発足の際、加盟の是非を問う国民投票が各国で相次いだ。だが、日本の場合、憲法上唯一の立法機関は国会であり、国会を法的に拘束する国民投票を導入するには憲法の改正が必要だ。
 桜井氏の案も投票結果を衆参両院議長に「通知」するだけ。桜井氏は「本来は憲法に規定すべきだが、まずは国会に投票結果を示す形のものを十年ぐらいやってから」。住民投票に理解を示す議員らの間でも、一足飛びに国民投票、さらには憲法改正へと進むかどうかでは議論が分かれる。
 
○「今が追い風」
 「憲法調査会も始まることだし、ぼちぼちやりますか」
 十九日、自民党の伊藤公介代議士は山崎拓元政調会長に電話で持ちかけた。
 伊藤氏は、国会議員でつくる「首相公選制を考える会」の幹事長、山崎氏はその会長だ。
 「考える会」は九三年に発足。メンバーは自民、民主、自由、公明など与野党にわたるが、ここ五年ほどは「休眠状態」だった。
 首相公選制も、国民投票の流れの一つ。ただ、重要政策への「民意の反映」より「国民の支持を背景にした首相のリーダーシップ強化」に軸足を置く議員が多い。
 もともと、改憲論者の中曽根康弘元首相らが唱えてきた。「憲法改正の突破口とする狙い」と警戒する向きもあるが、伊藤氏は「連立時代になって自分が支持しない政党と組んだ政権もできてしまう。政治不信が募る中で、公選制に追い風が吹いている」。来月一日に会の世話人会を開き、活動を再開する。
 
○ケーキの飾り
 「この会では、憲法に環境保護をうたうかどうかを話し合おう」「情報公開やプライバシー保護の検討も必要だ」
 二十一日、衆院議員会館で開かれた公明党の憲法調査会(座長・太田昭宏幹事長代行)は、「新しい権利」を次回のテーマにすることを決めた。
 久しく「九条論争」に彩られてきた憲法論議とは様変わり。国会の憲法調査会に臨む各党とも、国民投票のほか、憲法制定時には想定されなかったり、軽視されたりした問題への取り組みを強調する。
 「所有権、環境権、情報公開、私学助成も重要なテーマになる」(菅直人民主党政調会長)
 「九条は変えないが、環境権やプライバシー、地方自治の問題など議論すべきことはある」(神崎武法公明党代表)
 こうした風潮に、民主党の横路孝弘副代表は「環境やプライバシーを憲法に盛り込もうと主張する人たちの中に、そういう問題に熱心だった人はほとんどいない」と冷ややかだ。九条という「本丸」に迫るための方便、というわけだ。
 発表された改憲案などを見ると、環境権などの「新しい権利」について掘り下げたものが少ないことは確かだ。
 民主党ネクストキャビネットの環境農水担当大臣である佐藤謙一郎代議士は「生態系や環境を守ることは、九条以上に憲法全体を覆うような重いテーマのはず。『環境権』を、ケーキの飾りのようにしてしまってはいけない」と、憲法論議の必要性を認めつつも上滑りの改憲論とは距離を置く。
 憲法を論じることは、国のあり方を見つめ直すことでもある。地道な議論を積み上げれば、いまの日本に何が欠けているのかが浮かび上がるかもしれない。
 
 このシリーズは、中西豊樹、矢崎雅俊、駒木明義、磯貝秀俊が担当しました。
 
◆国民主権・国会
 前文:・・・主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。(以下略)
 第四一条:会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
 
◆憲法9条以外に指摘されてきた主な論点
○前文、全般
 ・翻訳調で、日本語としておかしな表現が多い。
 ・日本の歴史、伝統、文化に言及する。
 
○天皇
 ・元首であると明記する。
 ・外交儀礼のみ元首として扱うことを定める。
 
○国民の権利と義務
 ・国民主権を、天皇についての条文より先にする。
 ・皇室伝統の儀式や戦没者慰霊行事などが問題とならないよう政教分離規定を見直す。
 ・国がどこまで教育に関与できるか明確にする。
 ・情報公開、プライバシー権、環境権などを付け加える。
 ・権利の乱用を防ぐために「公共の福祉」を独立させて規定する。
 ・国民の国防の義務を付け加える。
 
○国会
 ・参院に条約案件、人事案件の優越権を与える。
 ・一院制にする。
 ・参院は選挙によらない名誉職的な議員で構成する。
 
○内閣
 ・首相が欠けた場合の規定を設ける。
 ・首相公選制を導入する。
 
○司法
 ・憲法裁判所を新設する。
 
○財政
 ・私学助成が違憲と解釈できる現状を変える。
 
○地方自治
 ・国と地方自治体の役割分担を明記する。
 
○憲法改正
 ・改正の条件を緩和する。
 
○その他
 ・政党について規定する。
 ・国民投票制度を導入する。
 ・緊急事態での内閣への権限集中、国民の権利制限を定める。(最近発表された提言などから)


 
 
 
 
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