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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/01/21 朝日新聞朝刊
政府解釈に見直し論(憲法調査会 論議への視点:中)
 
 ごく簡単な記述が、かえって目を引いた。
 「集団的自衛権の行使などについて国民的な論議を持つべきである」
 小渕恵三首相の私的諮問機関「二十一世紀日本の構想」懇談会が、十八日にまとめた報告書の一節だ。
 同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなして共同で防衛にあたる。国際法でこのことを集団的自衛権と呼ぶが、国会で憲法九条問題が議論されるとき、必ずといっていいほど取り上げられるキーワードだ。「集団的自衛権に触れないから問題はない」「いや、集団的自衛権の行使に踏み込む恐れがある」。一九九〇年代の安全保障論議は、ほぼこの繰り返しだった。
 
○懇談会が提言
 九条がうたう平和主義と集団的自衛権の行使は相入れないと政府は繰り返し説明してきた。その考えを見直す時期だと、いま首相の諮問機関が提言している。
 自衛権を二つに分け、自分の国を守る個別的自衛権は認めるが、同盟国を守る集団的自衛権は日本は行使できない――。五六年以来、政府が一貫してとってきた解釈が、いま挑戦を受けている。
 民主党の鳩山由紀夫代表は十四日、日本記者クラブの講演で「『日本は集団的自衛権を有しているが、行使は憲法上許されない』という説明は国民にわかりやすいだろうか。国際貢献のあり方をめぐって細部を詰める必要がある」と疑問を投げかけた。
 自民党の山崎拓元政調会長はより踏み込む。「日本は相応の負担を受け入れ、責任を果たすべきだ。集団的自衛権の行使を認めるため、合意形成ができたなら憲法改正手続きを経るべきだ」
 
○「平和」の変化
 こうした見直し論が台頭する契機になったのが、九一年の湾岸戦争だ。中東原油に頼る日本に、自国の国益と密接に絡む地域の秩序維持にどれだけ貢献できるか、という課題を突きつけた。九四年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発疑惑をめぐる危機が表面化、朝鮮半島有事の際に同盟国・米国のためにどんな協力ができるかが問い詰められた。
 さらに昨年は東ティモールやユーゴスラビア・コソボ自治州などで地域紛争が頻発し、国際社会は人権問題への対応を迫られた。海外での武力行使の禁止を自らに課すという考え方だけでは「平和」が語れない時代に入りつつある。
 国連平和維持活動(PKO)協力法でカンボジアに自衛隊を派遣し、周辺事態に備えてガイドライン関連法を成立させるなど、政府は対応を迫られるたびに急場しのぎの「対症療法」を施してきた。
 だが、その結果、憲法との整合性が一層危うさを増したのも事実だ。
 例えば、PKOに派遣された自衛隊員は、憲法の制約から自分を守るためにだけ武器使用を認められている。が、現地の治安状況によってはその枠内では対応できない可能性もある。ガイドライン関連法では、米軍への自衛隊の支援は戦闘行為の行われていない「後方地域」に限るとされるが、法案審議の過程では、補給が死命を制する現代戦では後方も攻撃されると指摘された。政府の憲法解釈が限界にきているとの指摘は、こうした点を突いたものだ。
 半世紀前、敗戦の廃虚の中で新憲法を巡る論議が始まったとき、日本にとって「平和」とは不戦の誓いにほかならなかった。四六年六月二十八日の衆院本会議。
 吉田茂首相「国家正当防衛権による戦争を認めるということは、有害な考えだ。近年の戦争の多くは国家防衛権の名において行われている」
 その後、米ソの冷戦が始まると政府は「攻撃を迎え撃つことは国を守る武力行使で、自衛権の発動として許される」(五四年、内閣法制局)と解釈を変更。憲法九条が「永久に放棄」したのは侵略戦争であり、自衛の戦争は含まれないとされた。
 さらに日米安保条約は、前文で日本が集団的自衛権を持つことを確認している。政府は「有しているが行使できない」との解釈で九条とのつじつまを合わせてきた。
 
○分かれる見解
 従来の政府解釈の枠内にとどめるのか、解釈を変えて集団的自衛権の行使を認めるのか、改憲まで突き進むのか――。憲法の根幹にかかわる問題だけに、同じ民主党の保守系議員の間でも「集団的自衛権の行使までは認めるべきだ。しっかり説明すれば外交問題にはならない」(前原誠司代議士)、「いま集団的自衛権を必要とする現実はない。慎重な議論を」(岡田克也代議士)と意見が分かれる。
 九条の原点である不戦の誓いを踏まえ、各国の信頼を維持しながら、平和主義の意味をどう膨らませていくのか。憲法調査会の取り上げる論点のうち、この問題が最も注目を集めていることは間違いない。
 
<戦争の放棄>
 第九条第一項:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 第二項:前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
◆関連の国際的取り決め
【国連憲章51条】
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
 (以下略)
 
【日米安保条約前文】
 日本国及びアメリカ合衆国は、(中略)両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、(中略)次のとおり協定する。
 
【同5条】
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 (以下略)
 
●憲法9条を巡る出来事
1945年 敗戦
47年 日本国憲法施行
50年 朝鮮戦争(−53年)
警察予備隊発足
51年 対日平和条約と日米安保条約調印
54年 自衛隊、防衛庁発足
60年 新日米安保条約調印
73年 長沼ナイキ基地訴訟で自衛隊違憲判決(二審破棄、上告棄却)
78年 日米防衛協力のための指針(旧ガイドライン)決定
89年 ベルリンの壁崩壊。冷戦終結
91年 湾岸戦争。終結後、自衛隊の掃海艇派遣
92年 国連平和維持活動(PKO)協力法成立。カンボジアに自衛隊派遣
94年 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核疑惑巡り朝鮮半島危機
社会党委員長の村山富市首相が自衛隊合憲と表明
98年 北朝鮮が弾道ミサイル(テポドン)を発射し日本上空を通過
99年 ガイドライン関連法成立
東ティモールの住民投票後、独立反対派民兵による騒乱
2000年 国会の憲法調査会で論議始まる


 
 
 
 
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