日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/01/20 朝日新聞朝刊
「論憲」ムード、実体は?(憲法調査会 論議への視点:上)
 
 あっけない結末だった。
 十三日、社民党本部で開かれた常任幹事会。渕上貞雄幹事長が「国会に憲法調査会が設置される以上、参加して我々の考え方を示そう」と切り出した。「憲法改正を視野に入れた調査会だ。それを念頭に対応を」との声があったものの、すんなり了承された。
 かつては違った。一九五七年、内閣に憲法調査会が設置されたとき、当時の野党第一党で、社民党の前身である社会党は「調査会は憲法改正が目的だ」と批判して参加をボイコット。調査会は社会党や共産党抜きで議論を進め、七年後に改正の是非を併記した報告書をまとめて幕を閉じた。
 土井たか子党首は「いま各党とも、憲法を変えるのが当たり前という発想。参加して『それは違う』と主張しなければ」という。だが、与野党がこぞって憲法論議のテーブルに着くこと自体、日本政治における「憲法」の持つ意味合いの変化を物語っている。
 
○自民でも評価
 改憲か護憲か。自民、社会両党が角突き合わせた五五年体制の下、政治の対立軸は長らく「戦争放棄」をうたった第九条を中心とした憲法問題だった。「自主憲法の制定で真の独立を」「憲法を、戦後民主主義を守れ」・・・。
 だが、六〇年代に政府・自民党が経済成長路線をとって以降、そうした対立構図は表舞台から退く。
 自民党内でも、戦前回帰型の改憲論は次第に鳴りを潜めた。「(憲法の)根本原則によって、わが国は世界から信頼を得ている。憲法が果たした功績は大きい」。自民党の葉梨信行・憲法調査会長は昨秋、党機関誌にこんな一文を寄せた。
 一方、護憲の陣営も大波に洗われた。九四年には自社さ政権が発足。旧社会党は「自衛隊合憲」へとかじを切り、最大の対立点は消えた。
 
○「改革」ブーム
 「憲法を見直すのは国会議員の責務だ」。昨年一月の民主党代表選。当時四十歳の松沢成文代議士は、公約に憲法改正を論議することを掲げた。
 松沢氏は「我々の世代は憲法にこだわりを持たずに議論できる。労組幹部も若返り、私が改憲を主張しても文句を言われることはない」。戦後生まれの国会議員は衆院百八十八人、参院七十五人と、ともに三分の一前後を占める。与野党を超えて、国会議員の多くが「論憲」を当然視する状況が生まれている。
 もっとも、復古主義一辺倒の改憲論はほとんど聞かれない。代わって国際協力や首相公選制、情報公開など新たなテーマが改憲の理由にあがっている。
 背景には、冷戦後の国際環境や日本社会の変化がある。湾岸戦争への対応や国連平和維持活動(PKO)をめぐり、国際貢献と憲法との関係が論じられるようになった。折しもバブルが崩壊して戦後システムのほころびが表面化。「改革」ブームの中で、憲法もそ上にあがった。
 国民の意識も変わりつつある。憲法施行五十年の九七年に朝日新聞が実施した世論調査によると、憲法改正が「必要」という回答は四六%で、「必要ない」の三九%を上回った。
 
○高いハードル
 「三年ぐらいかけて論議し、四年目から各党が試案を作る。五年目に改正作業に着手したらどうか」。自民党の中曽根康弘元首相は先月、衆院の憲法調査会会長に就任する中山太郎元外相に持ちかけた。中山氏は「次の次の総選挙は憲法が争点になる」と語る。
 民主党の鳩山由紀夫代表も「二、三年で党の憲法改正試案を作りたい」。調査会は五年後をめどに報告書をまとめる運びだが、政界には気ぜわしい声が満ちている。
 だが、各党の論議はやっと緒についたばかり。論点も拡散気味で、衆参両院でテーマの優先度をめぐって意見の違いも出ている。
 しかも、憲法改正には衆参両院の三分の二以上の賛成と、国民投票での過半数の賛成という高いハードルがある。先の世論調査でも憲法改正を「差し迫った課題」と思う人は四人に一人に過ぎず、とても機が熟したとはいえない。
 中山氏は昨年暮れに訪中した際、中国外務省高官から憲法調査会について聞かれた。「日本は再び侵略国家にはなりません」と応じたが、中国側の関心の高さを改めて実感したという。憲法、特に九条は過去の軍国主義の反省から生まれた。「日米安保条約とともに、近隣諸国に『日本は軍事大国にならない』という安心感を与えてきた」(自民党の加藤紘一元幹事長)だけに、変えるとなるとその意味は重い。
 
 二十日召集の通常国会から衆参両院に憲法調査会が設置される。新憲法下で国会に憲法を専門に議論する場が設けられるのは初めて。いまなぜ「論憲」なのか、何が問題になっているのか。国会審議を前に点検する。
 
◆改正の手続き 第九六条一項 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又(また)は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
 
<憲法改正を巡る主な文書や提案>
 
●日本新党の「政策大綱」
 (1992年)
 (細川護煕代表)
 「憲法改正が必要だと考えられる条項には、国連平和維持活動への積極的参加の明文化、国際協調の精神の強調、立法府の主体性確立と内閣のリーダーシップの強化、衆参両院の役割分担の明確化、国民投票を拡大することなどが含まれる」
 
●自民党憲法調査会の中間報告
 (1993年)
 (栗原祐幸会長)
 「今こそ、憲法論議を喚起し、国民的論議に高めることが政治に強く求められる。憲法の見直しを行う上で、国民各界各層の参加を求めることが必須(ひっす)条件であり、内閣に調査委員会等を設置するか、国会に憲法調査会を設置しなければならない」
 
●自民党の「新宣言」
 (1995年)
 (河野洋平総裁)
 「国の指針となる憲法については、すでに定着している平和主義や基本的人権の尊重などの諸原則を踏まえ、21世紀に向けた新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民と共に議論を進めていく」
 
●愛知和男・自民党代議士の憲法私案
 (1998年)
 「平成憲法」として、前文を含め全文を書き換えた。天皇を元首と明記し、安全保障については「陸海空3軍その他の戦力を持つ」としたうえで、「正義に基づく国際秩序の形成、維持、発展に主導的な役割を果たす」としている
 
●小沢一郎・自由党党首の改正試案
 (1999年「文芸春秋」)
 自衛権、国際平和のための積極的な貢献義務を明記。基本的人権については「公共の福祉及び公共の秩序に従う」としている。そのほか、憲法裁判所の創設や国の緊急事態宣言の発令なども提言している
 
●鳩山由紀夫・民主党代表の「ニューリベラル改憲論」
 (1999年「文芸春秋」)
 小沢氏の試案を「国家主義的」と批判。9条については戦争の総括を内外に示したうえで「陸海空軍その他の戦力は保持する」と明記することを提言。「首相公選制を憲法改正の第一弾としてやればいい」としている


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
25位
(28,756成果物中)

成果物アクセス数
271,687

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年4月29日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から