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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/02/10 朝日新聞朝刊
何をどう変えるのか 憲法調査会(社説)
 
 国会に、憲法問題を議論するための「憲法調査会」がつくられそうな情勢となった。
 共産、社民以外の各党が大筋で合意した。国会法を改め、衆参両院の正式機関として設けるという。
 憲法調査会といえば、内閣や自民党に設けられてきた。しかし、国会は、憲法改正を国民に対して発議する権能を持つ。そこに憲法論議の場を置くのであれば、その重みは、おのずと異なる。
 憲法調査会の構成や運営、具体的な任務は、今後、各党間で協議される。そこでは、設置に反対している共産、社民両党の意見も十分聞くべきだろう。
 数で押し切るようなことはせず、いま一度、設置そのものの是非を含めて、慎重の上にも慎重な話し合いを求めたい。
 何よりも合点がいかないのは、論議の場づくりが独り歩きし、現行憲法にどんな不都合があるのか、という肝心の中身の議論がほとんどなされていないことだ。
 けん引役を果たしたのは、自民党議員を中心に一九九七年に発足した「憲法調査委員会設置推進議員連盟」である。
 議連の趣意書は、近年の新たな課題として、「冷戦後の国際関係の変化、地球環境問題の深刻化、価値観の多様化、地方分権と共生社会の必要性」を挙げる。
 そのうえで、社会の現実と「現行法制との乖離(かいり)現象」を指摘し、憲法論議が「喫緊の課題」だと訴えている。
 しかし、趣意書に示された課題が憲法のどの条文とかかわり、その規定にどんな不備があるのか、という点は明らかではない。環境問題にせよ地方分権にせよ、憲法の精神を十分生かしていない立法や行政のあり方をむしろ問うべきではないか。
 国会で憲法を議論するなら、こうした視点で取り上げてこそ意味がある。国会がなすべき審議とは、そういうものだ。
 それでもなお、憲法論議のための機関設置にこだわるのはなぜか。
 戦後日本の改憲論の標的は常に、戦争放棄と戦力不保持を定めた九条だった。
 一連の主張には、「知る権利」のほか、環境権、プライバシー権といった「新しい人権」の明記など、時流を意識した面が見受けられる。そのこと自体には反対する人が少ないことも計算に入っていよう。
 だが、巧みに迷彩を施してはいても、一部の議員の間に伝統的な改憲志向が根強いことを見逃すわけにはいかない。
 憲法を変えないと絶対にできないことを突きつめると、集団的自衛権の行使など九条にかかわる事柄に行き着くからだ。
 国民主権、人権尊重、平和主義という三つの原理の上に構築された憲法は、制定以来半世紀を超えた。その基本理念は大多数の国民に支持され、日本が国際社会の一員として生きる指針ともなっている。
 憲法を論議する以上、何をどう変えるのかという前提が欠かせない。抽象的な説明は、国の内外の懸念を強めるだけだ。
 議連の自民党メンバーらは当初、憲法調査常任委員会の設置をめざした。委員会には議案提出権がある。状況次第で憲法改正案を発案できるという含みだった。
 調査会方式が浮上したのは、民主党や公明党が改憲論議の性急な展開を警戒し、議案提出権を封じようとしたからだ。
 両者に本質的な違いはないといわざるを得ない。憲法改正の雰囲気を盛り上げるのを狙いとするような機関をいま、つくる必要があるのか。要はその問題である。


 
 
 
 
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