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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/02/02 朝日新聞朝刊
改憲へ草木もなびくよ(ポリティカにっぽん)
 
 この正月、CSテレビの朝日ニュースターの「説明責任−アカウンタビリティー」という番組に中曽根康弘氏が登場し、ほぼ二時間にわたって時局を語り尽くした。与謝野馨通産相が立ち会い、聞き手は朝日新聞の山田厚史編集委員と私の二人。
 「二十世紀は虐殺の世紀だった。共産主義は鬼っ子だった。資本主義は放蕩児(ほうとうじ)であった」「いま政治のバブル、経済のバブル、そして社会のバブルを克服するのは内なる道徳律」――ナカソネ語は相変わらず刺激的で面白い。
 こんどの自自連立については「私はその思想の供給者」と自負するだけに、「小沢さんはエンジン。しかし波が立つ。それを小渕さんが収める」などとデッサンは具体的だ。「自自だけでは右バネが強すぎる。自自公ならば政権は四、五年続く」ともご託宣なさる。
 ここで触れておきたいのは、中曽根氏のオハコ、憲法改正へのあくなき執念である。「五十年たって憲法のいいところ悪いところが分かってきた。改正は学者がやることではない。国会でやる。できるだけ早く憲法委員会をつくって議論すべきだろう。九条はあいまいな文章を直すべきではないか」
 自自連立を生み出した政治的空気は、そのまま改憲派の攻勢につながっているようである。こんどの国会は安保が焦点、なにしろ戦地の外国軍隊のための武器弾薬の輸送協力も後方なら可能という答弁が飛び出すのである。解釈改憲も限界に近く、この先に進もうとすれば憲法の条文を改めるほかないだろう。
 
◎法相発言への鈍さ
 それにしても、やはりこの正月、「日本人は・・・交戦権もない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいている」という中村正三郎法相の発言に対する反応の鈍さよ。野党もちょいと質問でつついた程度で、国会は審議ストップはいうに及ばず、つゆほどの紛糾もしない。
 五年ほど前、細川内閣の中西啓介防衛庁長官(当時は新生党、いま自由党)は「半世紀前にできた憲法に後生大事にしがみついているあり方は、どう考えてもまずい」と述べただけで、当時の野党自民党が罷免を要求して国会は審議空転、あっけなく辞任に追い込まれた。党利党略とはいえ自民党でさえそれだけのことをしたのに、今回、野党民主党は何をしているのか。
 などと注文するのは、もはや無理なのか、今度の民主党の党首選の公開討論会を聞きにいったら、候補者の松沢成文氏と菅直人氏がこんなやりとりをしていた。
 松沢:「安保、憲法、行革についても具体的な方向性を国民にアピールを」
 菅:「憲法の問題も闊達(かったつ)に議論して変えるべきは変える。しかし、もう少し時間がいる。あと十年くらいか」
 松沢:「いつまで待てばいいのか。憲法の条文と現実の乖離(かいり)ができる方が危険だ。自衛隊を持ち海外へいくことは九条からは読めない。憲法委員会をつくって民主党も積極的に加わること」
 菅:「私自身は憲法委員会に必ずしも反対ではない。しかし、自自が動いているときに民主党としてどう扱うかはきちんと判断したい」
 
◎政党より世代の差
 八十歳中曽根氏と四十歳松沢氏の論の何と似通っていることよ。五十二歳菅氏の何だか煮え切らないことよ。
 朝日ニュースターの番組で中曽根氏は「改憲反対が強いのは六、七十代。この世代はトラウマ、つまり心に戦争の傷がある。しかし、三、四十代は日教組教育が弱くなって純真、天衣無縫。改憲賛成が多くなる」と述べている。サンドイッチの菅氏の世代は、その間で悩む。つまり憲法は政党の問題ではなく世代の問題なのかもしれぬ。
 改憲へ改憲へ草木もなびくのか、往時の中曽根内閣のブレーキ役、官房長官だった八十四歳の後藤田正晴氏の言葉は実を感じさせる。
 「先の戦争の被害者がみんな生きているよ。だから、まだ早すぎるんだ。その世代がこの世からいなくなって論議して、憲法を変えていく必要があるならそれは結構だ」
 おれの目の黒いうちは憲法に触れるのはだめだ、ということなのであろう。
(早野透・編集委員)


 
 
 
 
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