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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/05/03 朝日新聞朝刊
9条解釈、揺れ続けた国会 憲法施行50年特集
 
 憲法九条に関する論議は、戦後政治の中で揺れ続けた。自衛のための戦争を否定した占領の初期から安保論争、国際貢献論議を経て、最近では憲法が禁じる集団的自衛権の行使に触れかねない日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し作業に入っている。時の政権は憲法にどんな見解を示し、国会ではどんな議論が戦われてきたのか。変遷を追った。
 
<第9条>
 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
●朝鮮戦争・・・一転「自衛権許される」
 まず問われたのは、憲法九条が自衛のための戦争を禁じているかどうかだった。吉田茂首相は当初、自衛権の発動にすら消極的だった。
 共産党・野坂参三氏「自国防衛のための戦争は正義の戦争である。憲法改正案には戦争一般でなくて、侵略戦争の放棄を明記すべきだ」
 吉田首相「正当防衛や防衛権による戦いを認めることは、戦争を誘発する有害な考えだ」(1946年6月28日、衆院本会議)
 ところが、中国の内戦が共産党の勝利に終わり、さらに朝鮮戦争が勃発(ぼっぱつ)してアジアに冷戦が広がると、政府の解釈は一転する。「攻撃を迎え撃つことは国を守る武力行使で、自衛権の発動として許される」(五四年、内閣法制局)。第一項で「永久に放棄」したのは侵略戦争であって、自衛のための戦争は対象に含まれないとされた。
 
●「最小限度の実力、戦力と違う」
 第二項で定めた「戦力の不保持」が、次の焦点になった。当初、政府は自衛のための戦力の保持も許されないという立場を取っていた。しかし、第二項に「前項の目的を達するため」という文言が日本側の要請で書き加えられたことが、「自衛のための戦力保持は否定していない」という解釈の根拠とされた。
 自衛隊の前身である警察予備隊が五〇年に発足した当時、激しい議論があった。政府は当初「戦力なき軍隊」という説明で、野党の批判をかわそうとした。戦力に関する政府の考えは、五二年に吉田内閣が発表した統一見解に示されている。
 それによると、「戦力とは、近代戦争遂行に役立つ装備を備えるもの」「戦力とは人的・物的に組織された総合力で、兵器そのものは戦力そのものでない」としたうえで、「戦力に至らざる程度の実力を保持し、直接侵略防衛の用に供することは違憲でない」とした。
 岸信介首相「陸海空の自衛隊は、あくまでも自衛のために必要な最小限度のもので、憲法に違反しない」(60年3月29日、参院予算委)
 岸内閣は、自衛力と戦力は同一でないと主張した。しかし、吉田内閣の見解を踏まえて、自衛力を「近代戦に役立たない能力」と定義した場合、そのような能力が自衛に耐え得る最小限度の実力になりうるのか、という矛盾を露呈することにもなった。
 
●集団的自衛権、グレーゾーンに
 日本はこれまで、外国の侵害から自国を守る個別的自衛権については、保持も行使も認めてきた。これに対して、友邦国が攻撃された場合に反撃する集団的自衛権については、国際法上、保持は認めるが、「その権利行使は憲法九条の下では許されない」(五九年、内閣法制局)という立場をとっている。
 九〇年八月のイラクのクウェート侵攻をきっかけに、集団的自衛権不行使の原則に抵触しない範囲内で、人的支援ができるかに焦点が移った。海部俊樹内閣は憲法の枠内でも自衛隊は海外出動できるという踏み込んだ解釈を打ち出し、国連平和協力法案を提出した。
 「『参加』とは国連軍の司令官の指揮下に入ることで、国連軍の組織外で行われる参加に至らない『協力』ならば国連軍の任務が武力行使を伴うものであっても、武力行使と一体とならない支援は憲法上許される」(90年10月26日、衆院国連平和協力特別委での政府統一見解)
 しかし、論議が進むにつれて、ペルシャ湾で展開する多国籍軍への後方支援の是非をめぐって意見が対立。同法案は審議未了、廃案となった。九一年一月には、多国籍軍によるイラク攻撃が始まり、湾岸戦争に。日本は支援金百十四億ドルを供出したが、国際的な評価を得られなかった。
 人的貢献の必要性を痛感した宮沢喜一内閣は、(1)停戦合意の成立(2)紛争当事者の受け入れ合意(3)独自の判断での撤収――など参加五原則を盛り込んだ国連平和維持活動(PKO)協力法を成立させた。内戦が終結したカンボジアへ自衛隊の部隊が派遣された。
 また、自民党の「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」の小沢一郎会長が九三年、「いまの憲法のもとでも自衛隊の国連軍への参加は可能」とする見解を発表した。
 九四年に誕生した自社さ政権では社会党の村山富市委員長が首相になり、自衛隊合憲、安保堅持と従来の同党の政策を百八十度方向転換。憲法をめぐる政党間の対立があいまいになった。
 橋本龍太郎首相「安保条約の義務を果たしていく上で、米軍へ施設提供の責任がある」(97年4月3日、衆院予算委)
 駐留軍用地特別措置法の改正でも、憲法問題として正面から取り上げる議論は乏しかった。
 四月二十五日(米国時間)の日米首脳会談で、ガイドラインの見直し促進が合意された。両国政府とも「憲法の枠内で」と強調しているが、武器・弾薬の補給、民間飛行場の提供など集団的自衛権との絡みで憲法議論はグレーゾーンに入った。


 
 
 
 
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