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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/04/27 朝日新聞朝刊
憲法50年と日本の改革 「頭をつくりかえる」 佐柄木俊郎(座標)
 
 日本国憲法は、「シンボル」としての役目は終えつつある。ようやく、個々の条項の「規範」としての真価と、それを現実化させる努力が問われる時代になったのではないか。
 憲法施行五十年を前に朝日新聞社が行った世論調査の結果(二十六日付朝刊に詳報)をみて、感じたのはそのことである。
 何より目を引いたのは、「憲法改正の必要あり」が四六%と、「改正必要なし」の三九%を上回ったことだ。
 しかも、改正派にどんな点に改正の必要があるかを聞いた質問の答えは、「国際紛争での軍事的役割」「首相公選制や国民投票制度の新設」「国や自治体の情報公開」「国会の衆参二院制」などと多岐にわたった。
 近年の改憲論の底流をつくりだしてきた「国際紛争での軍事的役割を」の主張への支持が一番多かったが、自衛隊が力を入れるべき役割を問うた質問で、「国連下での軍事面も含む活動」の回答がごく少数だったことも併せ考えると、それほど多数の共感を集めているとはいえない。
 その意味で、ここにみられるのは、方向性や目標がはっきりした改正論というよりは、日本社会の停滞感や閉塞(へいそく)感を反映した、そこはかとない「気分的改憲論」といったものの広がりであろう。
 中でも、首相公選や国民投票、情報公開、二院制など、政治制度への改正意見が多いのが驚きだ。 昨年の総選挙の投票率が戦後最低を記録したことなどを考えると、政治の現状や、民主主義の機能不全に対する不満が憲法批判に形を変えて表れた、と判断できるのではあるまいか。
 
○「国民主権」が消えた
 日本ではいま、明治維新、戦後改革に続く、「第三の改革」が叫ばれている。透明で民主的な政策決定システムを、民間主導による真の市場経済を、疲労した制度に新たな息吹を――と、各分野で「変革を」の大合唱が続く。
 しかし、個々の課題をみると、ほとんどが、戦後改革の原動力だった憲法の理念や仕組みを、現実に生かしてこなかったことに原因がある、と気づく。
 政治への国民の不満は、何より「国権の最高機関」(四一条)とされた国会が、その役割を十分に果たしていないことにある。
 他方、薬害エイズ問題や住宅金融専門会社問題の処理、厚生省前事務次官の汚職事件などが浮き彫りにしたのは、「公務員は全体の奉仕者」(一五条)であることを忘れ、勝手気ままに振る舞ってきた官僚たちの姿だった。そこには、「官」が「民」を支配してきた明治憲法下の天皇制官僚時代の意識が根強く残っている。
 どこの省庁でも、新しく採用した職員が職務に就く前に、服務の宣誓書に署名させ、提出させる。
 この宣誓書の文面は、一九六六年までは「主権が国民に存することを認める憲法に服従し、擁護することを固く誓う」と、国民主権を強調し、「公務を民主的に運営する責務」にも触れていた。
 しかし、今はそうした表現が消え、「私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し・・・」と形式的な文面に変えられている。
 半世紀前に憲法が描いた公務員像は、現実化への真剣な努力がないまま、むしろ骨抜きにされてきたといわざるをえまい。
 
○現実に生かす努力を
 戦後改革の不徹底さが「第三の改革」を余儀なくさせている構図は、政府の推進委員会の下で具体的な取り組みが本格化した地方分権もまったく同じだ。
 九二条以下の「地方自治」四カ条が、この半世紀に規範として働いていれば、「民主主義の学校」のありようは、ずっと違ったものになっていただろう。
 住民の意思を身近な政策に反映させていく仕組みを競うような風潮が各地に生まれていさえすれば、この国の政治と市民の関係はもっとみずみずしいものになっていたはずだ。
 しかし、現実には、国も地方も戦前の官選知事時代からしみついた中央支配の構造から抜けきれなかった。政策面ではむしろ、中央集権が年を追って強まり、分権推進の機運の中で、多くの自治体は、「何をすればいいのか」と戸惑っているありさまだ。
 「新憲法はうれしいが、奴隷的教育を受けてきた国民の頭をつくりかえ、きちんと運用できるようになるのには、三代ぐらいの時間がかかるのではないか」
 「憲政の神様」と呼ばれた尾崎行雄は、五十年と六カ月前、憲法公布翌日の朝日新聞一面に、「新憲法の運用」と題するこんな趣旨の一文を寄せている。
 尾崎のいう「三代」に近い時が流れ、憲法施行五十年を迎える。この間、私たちは、「頭をつくりかえ、きちんと運用する」努力を十分に傾けてきただろうか。
 「第三の改革」は、その点検から始めなければならない。
(論説主幹)


 
 
 
 
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