五月三日の憲法記念日を前に、朝日新聞社は二十、二十一の両日、面接方式による全国世論調査を行い、施行五十年の日本国憲法について有権者の意識を探った。その結果、憲法が戦後の日本社会にもたらした影響を、多くの人が積極的に評価していることがわかった。とくに九条の平和主義に対する信頼は高く、六九%が「変えない方がよい」と答えた。しかし、憲法の改正については「必要がある」四六%、「必要はない」三九%だった。この傾向は若い世代ほど強く、具体的な改正点では、軍事的役割のほか、国民投票制度の新設や情報公開、環境権の盛り込みなど、幅広いのが特徴だ。
憲法がこの五十年間に日本の社会に直接、間接にもたらした影響を二つまで選んでもらったところ、「平和が続いた」とする人が四割で最も多かった。「民主主義が根付いた」「社会福祉が進んだ」などを含めて憲法を積極的に評価する意見が、「国際情勢の変化に対応できなくなった」など批判的な意見を大きく上回った。
憲法で「戦争放棄」を決めたことを八二%の人が評価。九条の理念がアジア太平洋地域の平和に「役立ってきた」は七二%、これからの世界の平和に「役立つ」とみる人が七三%と、ともに高い比率を示した。こうした評価が、九条変更を認めない見方に結びついたとみられ、「変える方がよい」は二〇%にとどまった。
しかし、九条を含めた憲法全体については、「改正が必要」が「必要はない」を上回った。「改正する必要がある」という人だけに、改正した方がよい点を九項目の中から選んでもらったところ、「国際紛争の解決での軍事的役割の明記」と「自衛権の明記」を合わせ、九条関係は三分の一で、「首相の公選制や国民投票制度の新設」や「プライバシー権や環境権」などさまざまに割れた。
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