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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/11/03 朝日新聞朝刊
現実政治の規範に 「憲法公布50年」(社説)
 
 自民党単独政権を三年ぶりに事実上復活させることになった、今回の総選挙の結果を、別の角度からながめてみたい。
 まず、社民党の没落である。戦後史を通して憲法擁護の中心勢力を自任してきたかつての社会党が、衆院では議案提出権さえない小勢力に転落した。かたや、自民党と新進党の議席の合計は三百九十五に達した。衆院全議席の実に七九%にあたる。
 日米安保体制や自衛隊をめぐる理念対立を基調とした五五年体制の時代、憲法改正の発議に必要な三分の二以上の議席を自民党に与えないことが、社会党の最大の目標だった。それがいまや、衆院の八割が二大保守勢力によって占められている。
 この変化は、現実政治の前面に改憲問題を押し出しているだろうか。決してそうではないし、すぐに、そうした事態が生じるとも考えにくい。
 自民党は昨年の党大会で、「自主憲法制定」の旗をおろした。総選挙の公約では、「定着している平和主義や基本的人権の尊重などの諸原則」を踏まえ、新しい時代にふさわしい憲法のあり方を「国民とともに論議する」とうたった。
 新進党が公約で憲法に触れたのは「憲法で保障された基本的人権の保障される社会をつくる」というくだりだけだ。「国際合意の下でなら海外での武力行使への参加は違憲ではない」を持論とする小沢一郎党首も、選挙戦では憲法問題を避けた。
 こうした現実は、国民の平和主義、民主主義への支持が不動であること、九条を軸にした憲法論議が、必ずしも政治の争点として歓迎される状況でないことを示しているといえるだろう。
 しかしそれは、政治の場で憲法や国の針路をめぐる論争を棚上げすべき状況だ、ということを意味しない。
 戦後の日本は、ひたすら自らの繁栄を目指し、紛争や貧困に苦しむ国際社会にそれほど関心を寄せてこなかった。いま、この経済大国が世界平和のためにもっと貢献すべきことは当然であり、国民的な合意といっていい。
 憲法の理念でもある平和への積極的な関与や協力を、どう行動に表し、平和国家としての存在感をどう高めていくかは、日本政治の大きな課題なのだ。
 とはいえ、例えば小沢氏がいう「普通の国」論に沿った自衛隊の活動や日米軍事協力の強化が、国際社会の平和を強めるために必要か、といえば疑問である。
 きちんとした歴史認識も、日米関係やアジアの平和についての確かな構想もないまま、軍事的な貢献さえすれば評価されるという考えは、ほとんど空想に近い。
 日米安保体制の役割は大きく変質した。橋本龍太郎首相とクリントン大統領の共同宣言に基づく日本周辺の有事研究は、集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈を実質的に変える可能性がある。地域の平和にとって、それは危うさもはらむ。
 積極行動という点で、今後、日本政治が取り組むべきは、憲法の理念を肉付けする非軍事的な貢献のプログラムづくりと、具体化であろう。それこそが、世界にとっても日本にとっても利益になる。
 安保や外交をめぐる課題に関してばかりではない。総選挙では各政党が競って「行政改革」を掲げた。これも、国民主権の原理や最高機関としての国会の内実を問い直す、暮らしに密着した憲法問題なのだ。
 その意味で、時代の規範として、憲法には政治の場でもっと議論され、もっと働いてもらわなければならない。


 
 
 
 
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