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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/10/29 朝日新聞朝刊
揺れる九条への視線 「憲法公布50年」(社説)
 
 三年前、カンボジア王国が新発足した。このとき公布された新憲法には、「カンボジア王国は直接、間接を問わず他国を侵略したり内政干渉をせず、あらゆる問題を平和的に解決し、相互の利益を尊重する」(五三条)というくだりがある。
 国連統治下で進められた憲法草案づくりには、日本の官民の法律家たちも様々な形でかかわった。
 戦乱に明け暮れた歴史を断ち切って平和を実現したいという、切実な願いがこの条文に表れている。直接的な影響とはいえまいが、日本の憲法とも通じる平和主義がアジアの国の憲法に明記された例である。
 日本国憲法は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、自国の安全と生存を保持しようと決意し、戦争放棄を誓った。その結果、この半世紀、日本は外国へ軍隊を送って人を殺傷したことはなく、武器の輸出も控える独自の道を歩んできた。
 日本の憲法、とりわけ第九条の存在は、日本が軍事力を背景に国益を追求する国にならない安全弁として、国際社会から評価を受けてきた。
 国民の大多数は、この国に軍国主義を復活させようとは、まったく考えていない。この点は、改憲を主張する人々も同じであろう。しかし、戦前の歴史と戦後の強烈な経済進出がだぶってみえるアジア諸国の人々には、日本国民の信念はそれほど確かなものとは映らない。
 憲法九条があり、軍事増強につながるような政策をめぐっては必ず激しい論争が巻き起こることだけが、日本が再び危険な国にならないための一種の歯止めと受け取られてきた。こうした視線は、米国などにも共通している。
 だがアジア諸国は、こうした憲法が掲げる平和主義の理念と、日本の現実政治のかい離には、厳しい言葉を投げかける。
 「政治大国としての役割の発揮をあせり、憲法の規定を顧みることなく、米軍の行動を支持すべきだと吹聴している。戦後五十年来、歴史の真剣な反省と、戦争犯罪行為の確実な清算も全然していない」。これは今年七月、橋本首相が靖国神社を参拝した際の北京週報の論評である。
 「日本の平和憲法は国際紛争に武力で介入することを放棄し、このための武力保持も禁止している。従って、万一、日本が憲法を改正して地域紛争に介入する場合、アジア諸国が第二次大戦の悪夢を再び思い起こすのは自然のことだ」。今年四月の日米安保再定義の際に、韓国の東亜日報は社説でこう指摘した。
 日本が繰り返さないと決意した「戦争の惨禍」には、日本がアジアの人々にもたらした「戦争の惨禍」の意味もこめられている。不信感の根底には、それをきちんと清算しない歴史認識の問題がある。また、自衛隊装備の近代化や拡充をとらえて、九条の空洞化を懸念する声も絶えない。
 不信は、行動でなければ解けない。いまの日本に必要なのは、そうした現実を正面から受け止め、国際協調の観点から平和主義を具体的な政策に組み直し、打ち出していくことではないか。
 アジア諸国にはまだ、歯止めの見えない軍拡競争の危険など、憲法が掲げる平和主義や、人権の尊重に反する動きがあふれている。軍備拡張と成長最優先の開発路線への対抗軸として、憲法の精神を広めていくことは、日本の国益にもかなう。
 そのためにも日本は、みずからその精神を現実のものとする努力に、全力を傾注しなければならない。


 
 
 
 
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