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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/08/16 朝日新聞朝刊
新憲法 感謝表明(昭和天皇と50年 徳川前侍従長の証言:5)
 
 昭和二十一年(一九四六年)二月の新憲法策定時の動きとしては「二十二日金曜日晴れ。総理午後二時五分から三時一五分、御文庫」と記録しています。
 陛下はお風邪気味で、前日の仁孝天皇祭もご代拝とし、この日も終日吹上で過ごされていたのですが、幣原さん(喜重郎首相)が「どうしても」と、御文庫で拝謁(はいえつ)した。陛下は洋服に着替えてご政務室まで出ていらした。この日の拝謁は幣原さんだけでした。憲法のGHQ(連合国軍総司令部)案のことだったのでしょう。
 そして、三月五日には「午後五時三〇分から七時一〇分、総理と松本(烝治憲法担当)国務大臣拝謁。GHQ原案による憲法草案」と、侍従長から聞いて記録しています。三月六日に改正案が政府から発表され、マッカーサーが歓迎の声明を出しました。
 日本側の憲法改正案は松本さんがつくり終えていたが、「それじゃだめだ」と司令部は不満。それに(これからつくり直させるには)遅いっていうんですね。「ソ連、豪州などがうるさいから早く」という。陛下もお聞きになって「そう遅いんじゃだめ」と。そこは司令部と一致したので、司令部案が出てからサッといったんですね。
 
 陛下はその年の五月三十一日に米大使館でマッカーサーとお会いになった時に「憲法策定ご助力ありがとう」と伝えられた。私は記録のため通訳の寺崎英成さん(宮内省御用掛)から差し障りない範囲で聞いて記録していたのです。
 この日、ご服装はねずみ色のお背広。マッカーサーは玄関まで出迎えて握手、会話中に寺崎さんのメモ用紙がなくなると、自ら自室まで紙を取りに行って戻った。気軽で機嫌よく、約二時間会談。憲法のほか、食糧援助に対するお礼、民生安定と生産奨励・文化発展へのご希望の表明、皇室財産を政府へ出して役立てたい、ご巡幸を進めたいなど、おっしゃったようです。
 
 日本の松本案が旧来の帝国憲法の発想から飛躍するのは無理だったでしょうね。ガバメントセクション(GHQ民政局)のほうがよく調べている感じでした。ただ、急いだからおかしくなったところもある。南原繁さん(東大総長)など「翻訳がよくない」としきりに言っておられた。
 新憲法の天皇の地位が「国民の総意に基づく」というのは、ポツダム宣言に則(のっと)ったものでしたが、もともと総司令部でも天皇について原案では「君臨する」としていた。ところが、英国ではレイン(君臨する)とガヴァーン(統治する)は違うけれども、日本語の「君臨」にはガヴァーンの意味が含まれると民政局のラウエル中佐がクレームをつけ、削られた。
 そして「象徴」となったのですが、元の案は「皇位は象徴する」だった。途中から「天皇は象徴する」になってしまった。私は、天皇の地位が象徴ならわかるが、人間である天皇陛下が、卍(まんじ)印や何かと同様に「象徴」というのはおかしいと思いましたね。
 天皇が統治権の総攬(そうらん)者から象徴へと憲法の上では変わったわけですが、陛下は同じですよ。前の(立憲君主としての)考え方が間違っていたとは思ってらっしゃらなかったし。戦後も認証が増えるなど大変でしたが、むしろ戦後のほうがよかったという感じを受けました。私見ですが、憲法はいまのままでいいと思いますね。
 
○天皇制存続かけGHQ案受ける《解説》
 日本の松本案は、天皇の地位や人権、軍の条項など帝国憲法をほとんど踏襲。これを知ったGHQは、急きょ民生局で新憲法案を作り、二月十三日に日本側に手渡した。二十一日、マッカーサーは幣原首相に、連合国極東委員会の発足が二十六日に迫り、ソ連や豪州が日本の再軍備と天皇制存続に反対し天皇の戦犯訴追を求めている情勢を伝え、天皇を守るため先手を打つ必要を説いたとされる。
 二十二日午前の閣議はGHQ案受け入れを決定。同案を天皇が内諾したのはこの日午後の幣原首相拝謁の時とみられるが、吉田茂外相らと三人で拝謁したとの米側の記録と食い違い、一部に疑問視する見方もあった。徳川氏の証言は、幣原首相が一人で天皇に拝謁したこと、天皇が早期改正に前向きだったことを裏付けている。
 同年五月の天皇・マッカーサー会見の中身は新事実。同年十月十六日の会見では、マッカーサーは「陛下のお陰で憲法は出来上がった。陛下なければ憲法もなかったでありましょう」と述べたとされている。
 ラウエルは、GHQ民政局で憲法改正案作成を統括した運営委員マイロ・E・ラウエル陸軍中佐。原案は「皇位は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、天皇は皇位の象徴的体現者」としていたが、皇位という言葉に神秘的な語感がある、などとして改められた。


 
 
 
 
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