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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/12/20 朝日新聞朝刊
自民党の憲法論を歓迎する(社説)
 
 「憲法については、すでに定着している平和主義や基本的人権の尊重などの諸原則を踏まえて、時代の変化に適応するため国民とともに幅広く論議を進めていく」
 自民党が一月の党大会で採択する新宣言の原案に盛り込まれた、憲法の部分だ。
 「論議」はするが、党として頭から改憲の方向に引っ張りはしない、という慎重論の意思表示と受けとれる。
 党内外の改憲派は「自民党の党是を捨てるのか」などと反発して、修正を求めている。だが私たちはこれを、現実を踏まえた妥当な判断として歓迎したい。
 「自主憲法の制定」は、確かに長く自民党の党是のように思われてきた。一九五五年(昭和三十年)の結党に際し、「現行憲法の自主的改正をはかる」とうたった政綱が、その後も改定されなかったからだ。
 しかし、そもそもこの「党是」にどれほどの重みがあったかは疑問だ。
 自民党は結党時に五つの文書を作ったが、「独立体制の整備」として憲法改正を盛り込んだのは、政綱などの二文書だった。より重要度の高い立党宣言や党綱領には、憲法が一言も出てこなかった。
 自主憲法制定は、公職追放から政界復帰を果たした戦前派が多い民主党の主張だった。自由党との合同にあたり、それが妥協的に盛り込まれたのが実情だろう。
 その後四十年近く、自民党内閣は一度も具体的に改憲を目指すことはなかった。そして、その間の時代の変化から、党内にも改憲への慎重派が増えていた。
 六五年(昭和四十年)、党の近代化を目指して作られた党基本憲章は、憲法に全く触れなかった。八五年(昭和六十年)、改憲派の中曽根康弘総裁のもと、新政策綱領に改憲の「検討」が盛り込まれはしたが、そのエッセンスとされた特別宣言には憲法が登場しない。
 これらは、国民意識をくみ取った現実判断だった。しかも最近は宮沢喜一、河野洋平両氏という代表的な党内護憲派が、総裁に選ばれている。「独立体制整備」が過去のものとなったように、「自主憲法制定」は過去のものになっていた。
 最近の改憲論には「国際貢献」という新たな要素もあろう。しかし、今度の原案をまとめた党基本問題調査会長の後藤田正晴氏らは、その点でも性急な方向づけを避けた。社会党と連立を組む河野自民党の色合いからも、これは十分理解できる。
 もちろん渡辺美智雄氏のように、これに反発する党員がいても不思議ではない。新進党の中も憲法の判断は割れているが、それぞれが憲法論議を深め、今後の政界再編に生かすのもいいだろう。
 「二十一世紀に向けて新たな出発」と題した自民党の新宣言案と、要約版の新綱領案は、憲法論が主体ではない。むしろ「清新な政治」や「小さな政府」、「科学技術立国」、「男女共同参画型社会」などが強調されている。党の「理念」は「自由、民主、平和」の三項目に集約されている。
 さして新味や衝撃はないが、それなりに時代を意識したものだろう。だが、本当かな、と思いたくなるところは多い。
 例えば、おごりや腐敗で政権を失った反省を口にしているが、政権復帰で早くも企業献金や「族」政治が復活している。「小さな政府」というが、規制緩和や行革に力が入っているだろうか。男女共同参画も結構だが、それなら国政選挙に女性候補者を大勢立てる覚悟があるのか。
 宣言や綱領は紙切れである。重要なのは、それを現実政治に生かすかどうかだ。


 
 
 
 
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