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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/11/08 朝日新聞朝刊
改憲読売試案 国民投票なしの条項に懸念(現在史ウォッチング)
 
 三日付の読売新聞朝刊に同社の「憲法改正試案」が発表された。膨大な、ほぼ全面的な改正案で、小欄で全体に触れることはとうていできない。ここではただ一つだけ、最も重大と私が考えた点を述べてみたい。以下は折ふし憲法の問題も考えてきた一人の政治記者の個人的な感想で、もちろん朝日新聞の見解などといったものではない。
 その一点というのは、最後の「第十一章 改正」の条項だ。
 改正手続き案は、衆参両院でそれぞれ在籍議員の三分の二以上の出席により、(1)過半数の賛成で発議し、国民投票にかける(2)三分の二の賛成で可決すれば国民投票なしに改正できる、の二本立てである。「今後の時代の変化に対応できるよう、改正のハードルをやや低くした」という。
 問題は、国民投票を経ないで改憲できるという部分にある。「国民の代表である議員の三分の二の多数の賛成が得られれば、国民のコンセンサスが成ったと見るのが妥当だろう」というのが読売紙の説明だが、ここには落とし穴がある。
 政党政治のもとで、政治家たちの選挙時の言動と、当選後のそれとが大きく違ってしまうことはよくある。昨今の社会党をみれば多くの説明は要るまい。したがって、とくに改憲のような重要な問題では、主権者自身が最終の判断を示すための国民投票が欠かせないと私は思う。
 百歩を譲ってそのことに一時目をつむるとしても、「国民の代表である議員の三分の二」という〈数量〉を国民のコンセンサスつまり過半数という〈数量〉に読み替えることができるのは、選挙で選ばれた代表の数の分布と国民の意思の分布との間に、かなりの程度の比例関係が確保されている場合だけだろう。
 
○得票・議席比に開き
 選挙制度こそが真の憲法だといわれるのは、この点を指している。小選挙区制を基本とした選挙制度だと、議会の多数派が国民の多数を代表してはいないということがざらに起きる。だからこそ、国会の三分の二というハードルにするのだというかもしれないが、過半数の得票率がなくとも三分の二前後の議席を占める可能性だってあるのだ。
 小選挙区制で大きな二つの党がある場合、その二党の全国得票の比は、議席比では三乗に拡大されるという経験則が知られている。逆にいうと、二大政党の議席比が二対一になる得票比は一・二六(二の立方根)対一で済む。いま、二党の得票率合計が八〇%だったとすると、両党の得票率が四四・六%対三五・四%以上に開けば第一党が三分の二以上の議席を占める可能性があることになる。
 もちろんこれは第三党以下が計二〇%得票しても獲得議席はゼロであるとするなど、きわめて単純化した理論である。しかし、たとえば英国の八三年総選挙では、保守党が四二%の得票率で六一%の議席を得、第三党の自由・社民連合は保守党の六割の二五%の得票率を挙げながら、議席率は三・五%にすぎなかった。第一党が五割以下の得票率で三分の二の議席を占めることは十分にあり得る。
 日本の新制度は「並立制」で比例代表区もあるから、このゆがみがいくぶんかは緩和される。しかし、比例区当選の少数党には、過去、参院の福祉党や税金党などのように政権政党に吸い寄せられやすい党もある。三分の二の調達は小選挙区制を基本にした制度なら、それほど難しくはないだろう。
 
○主権の行使、少なく
 試案は第一章に「天皇」でなく「国民主権」を置き、民主性を強調している。しかし、その主権の行使では国民投票の機会を少なくした。新選挙制度と併せて考えると、実質ではむしろ民主主義が後退すると考えられる。
 このような案だと、極端な話、他の条項ではとりあえず現憲法下の国民投票を通りやすいように改正を提案し、同時にこの改正条項さえ変えてしまえば、あとで国会内多数派の思うように再改正できる。ほかの部分についても私には意見があるが、それらを超えて何よりも改正条項が問題だと思うのは、そうした懸念があるからだ。
(石川真澄 編集委員)


 
 
 
 
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