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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/03/05 朝日新聞朝刊
「護憲」の首相 憲法論議の背景:4 (なんでもQ&A)
 
Q:宮沢喜一首相の憲法観はどんなものでしょう。
A:宮沢政権には「顔」がない、と評されてきましたが、こと憲法問題については顔を持っています。「現行憲法擁護」です。こんどの通常国会での答弁でも「国民の世論が成熟するに至っているとは思っていないので、政府として、私として、現在、憲法を改正することは考えていない」と明言しました。
 
Q:歴代政府の基本路線を踏襲しているわけですね。
A:その通りですが「私として」の表現がミソなのです。「戦後政治の総決算」を掲げた中曽根康弘元首相の場合は「個人・中曽根としては改憲論者である」ことをはっきりさせていました。宮沢氏の場合は、護憲を軸にした「戦後政治の継承・発展」路線をかたくなに守ろうとしているようです。
 
Q:いってみれば、中曽根氏の「対岸」にいるわけですね。
A:そうです。一連の憲法見直し論議を、強くけん制してきたのも首相でした。それも、自民党分裂―政界再編成問題をも計算に入れて。
 
Q:例えば。
A:宮沢首相は、一月の東南アジア諸国連合(ASEAN)歴訪の際の記者懇談で、保守分裂の場合は護憲派と改憲派に分かれるという見方があるが、と問われて、「憲法にとって大変不幸なことだ。どこをどうするとよく考えないで、それを政治の旗(印)にするのは危険だ」と、改憲ムードを批判しています。また「自分が経験していないと過去の間違いが人ごとのように思えるのだろう」とも言い切りました。第二次世界大戦と敗戦を直接経験していない若い世代への批判です。
 
Q:小沢一郎氏など、昭和二けた世代が頭に浮かんだのでは。
A:だと思いますよ。そういえば、あれは確か一九九一年十一月、宮沢氏が首相就任後、初の所信表明演説をする前夜のことでした。当時、小沢氏らが「改憲」という戦後最大のタブーにメスを入れる動きに出ているのが気になって、筆者(国正)が「どう対応しますか」とただしたことがあります。
 
Q:その返事は。
A:「私の政権が続く限り、憲法改正を土俵の上にあげる気持ちは全くありません」のひとことでした。翌日の演説で宮沢首相は「核兵器について我が国が何十年も唱え続けてきたことが、世界的に理解され始めている」と強調しました。日本国憲法に基づくわが国のこれまでの生きざまを肯定した上での発言でしょう。
 
Q:でも、宮沢内閣で生まれた国連平和維持活動(PKO)法は、自衛隊の海外派遣が中核で、事実上の「解釈改憲」なのでは。
A:その点、国会で国弘正雄参院議員(社会党)が「君子豹変(ひょうへん)なのではないか」と直接、本人にただしました。すると宮沢首相はきっとなって「憲法上できないことがある。そのことはだれが何と言っても、できないことはできないのであって、アメリカがどう考えるかということとは関係ないことである」と答えました。
 
Q:痛いところをつかれてムキになったのではないでしょうか。
A:かもしれませんね。ただ、宮沢首相と立場を異にする政治家の中には「首相がPKOで解釈改憲路線を選んだというのは宮沢氏に酷過ぎる。竹下派支配の下で政権は不安定だったのだから」との声もあります。
 しかし、宮沢氏自身、時に心境の変化がかいま見られることも確かです。例えば、仮に将来、国連常設軍がつくられる場合「日本がどのようなことができるかを十分に議論しておくべき時が来ていると思う。それは『血』の問題に対する回答をさぐる作業でもある」と言っています。
 
Q:政界再編とのからみについても何かふれていますか。
A:そうね、これは首相就任直前なんだけれども「日本で政党が二つになった時に(政権交代しうる態勢になった時に)何が違いなのだろうか、何をもって両党は争うのか。私は憲法改正を争うのじゃないかと心配している」と。
 
Q:でも、宮沢首相が今後も「護憲」の王道を歩み続けるのは確かなのでしょう。
A:もし、首相がこの問題で権力や謀略によって覇道を行くようなことにでもなれば、その時は政権それ自体が終幕を迎えることになるのでしょう。
(編集委員・国正武重)


 
 
 
 
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