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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/03/02 朝日新聞朝刊
小沢調査会 憲法論議の背景:1 (なんでもQ&A)
 
Q:このところ、自民党から野党、労働界、マスコミに至るまで憲法見直し論が噴出しています。なぜですか。
A:今、「冷戦後の時代」と呼ばれて、新しい世界秩序の構築が求められる中で、日本が国連にいかに貢献していくのかが論議される過程で火がついたのです。ただ、今度の見直し論が、過去のそれと趣を異にするのは、折からの政治改革や政界再編への思惑などが絡んでいるため「護憲」か「改憲」かで割りきれない複雑な側面があることでしょう。
 
Q:それにしても、さきの国会での代表質問では、野党の党首クラスまでもが、われ先にと憲法問題を論じていましたね。
A:そう。議場内で見ていて「バスに乗り遅れてはいけない」といった気配を感じました。社会党などは表現明瞭(めいりょう)・意味不明な「創憲」論を打ちだしました。国会関係者は「最近の動きは“便乗改憲論”というか、非常に安易で危険な部分を感じる」と指摘しています。
 
Q:国際貢献とのからみで浮上してきたとのことですが、具体的にはイラクのクウェート侵攻に伴う一九九〇年の「湾岸危機」が発端だったのでしょうか。
A:そうです。自衛隊の海外派遣という即憲法にかかわる問題で「太平の眠り」をさまさせられたのが、九〇年八月十四日のブッシュ米大統領から当時の海部俊樹首相への早朝電話でした。大統領は「日本が、われわれの共通の利益を守ることに完全参加しているシグナルを送ることが世界にとって重要だ。掃海艇や給油艦を出してもらえればデモンストレーションになる」と要請しました。首相は、この時はまだ「憲法、国是の問題、国会論議もあり難しい」と答えたのですが、後日「自衛隊の出動」に踏み切ったのです。
 
Q:海部首相は最初、憲法をタテにしりごみしながら、なぜ急変したのでしょう。
A:自民党最大派閥・竹下派幹部で自民党幹事長でもあった小沢一郎氏らの圧力があったからです。小沢氏は海部首相に対して「首相の態度では米国は納得しない。憲法がうたう恒久平和の追求は国連憲章とも合致するのだから、現行法でも自衛隊の中東への派遣は可能だ。これは集団的自衛権とは違うのだ」と。つまり、国連軍への自衛隊参加は憲法九条が禁じている集団的自衛権の行使ではないという憲法解釈で強引に押し通したのです。
 
Q:でも、湾岸に展開した多国籍軍の場合は、国連決議に基づくといっても実際は「米軍主導」で、国連の指揮権が確立しているのかどうか疑問だったのでは。
A:その点、ずいぶん論議を呼び、間もなく自民党に小沢一郎氏を会長とする「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(小沢調査会)が設置されました。そこでは、国連憲章と日本国憲法前文・第九条問題、PKO問題など幅広く検討されて、二月三日に最終答申が出されています。
 
Q:中身は、予想されたよりも、おとなしいものになったと聞いていますが。
A:スタート時の姿勢は、自衛隊の海外派遣に憲法上の制約があるというのなら、憲法そのものにもメスを入れるべきだ、という考えもありました。ところが、答申では、憲法改正にはふれず、「国際安全保障」という概念のもとに、現行憲法下でも自衛隊の海外派遣は可能だという姿勢を出しています。この点について小沢氏は「党からは現行憲法下でどんな役割ができるかを諮問されたのであって、改正問題を諮問されたのではない。勘違いしてもらっては困る」と反論していますが、党内外から強い批判がでていたので一歩後退したのではないでしょうか。
 
Q:憲法論議再登場の先導役が小沢氏だったことはわかりましたが、今後も主役なのでしょうか。
A:そうでもありません。東京佐川急便事件をきっかけとした竹下派の分裂、つまり「竹下派支配」といわれた二重権力構造の崩壊に伴う政治情勢の変化が、小沢氏の立場にも微妙に影響しています。小沢氏は、今「護憲開国」をキーワードにしていますが、これは、現行憲法の精神を守りながら、自衛隊も含めて、いままでしていなかった人的協力をしていくという考え方です。多国籍軍への自衛隊派遣も認めていませんし、かつて、首相をも恫喝(どうかつ)した小沢流手法は影を潜めています。だが「戦後政治体制の見直し」派の代表格であることは間違いありません。
(編集委員・国正武重)


 
 
 
 
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