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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/01/16 朝日新聞朝刊
冷戦構造崩壊・政界再編ムード・・・ 憲法見直し論相次ぐ(時時刻刻)
 
 「憲法見直し」が、にわかににぎやかになった。これまで本音を隠してきた自民党の実力者たちが競うように改憲を唱え始めたと思ったら、護憲勢力と見られてきた野党からも見直しの声が相次ぐ。冷戦構造の崩壊や、政界再編ムードが醸し出す「改革ブーム」が、影を落としている様子だ。タブー視されてきた「改憲」が、果たしてどこまで本格的な議論に発展するのか。
 
○先陣争い
 板垣正参院議員:憲法に対する国民の意識が大きく変わってきた。
 梶山静六幹事長:国連憲章と憲法との整合性を見直す時期にきている。
 三塚博政調会長:待ったなしだ。与野党間に論議を起こして、一致点を見いだしたものから(改正を)やればいい。
 
 今月十三日。ことし初めての自民党総務会は、事務的な報告を除くと、憲法論議一色になった。同じ日、加藤グループの在京議員懇談会で、加藤六月氏は「これからは改憲が話題になる。よく勉強しておくように」と指示した。
 自民党では過去にも幾度か改憲論議が起きたが、今回の特徴は、冷戦の終結で戦後日本のバックボーンとなってきた憲法も再検討を迫られている、との共通した思いがあることだ。「いずれ改憲は政界再編のキーワードになる」(渡辺派幹部)と見て、先陣争いを演じている面もありそう。
 もっとも党内には、「改革はいまやブーム。改憲論もその変種さ」(宮沢派幹部)といった冷ややかな見方もある。党執行部の一人は「野党に改憲論議を挑むどころか、党内さえ意見はバラバラ。まず党の憲法調査会(栗原祐幸会長)で検討すべきだ」と話す。
 
○揺れる社公
 ひと昔前なら、野党の首脳が「改憲」や「憲法見直し」を口にしようものなら集中砲火を浴びた。が、状況は変わりつつある。
 「もはや憲法をめぐる後ろ向きの教義論争は許されない」。社会党の山花貞夫次期委員長は委員長選への出馬表明に合わせ、憲法の創造的発展をうたった「創憲」論を打ち出した。
 右派が委員長選で山花氏を支持する条件として求めてきた「自衛隊合憲認知」をはねつけた代わりに持ち出したのが、この「創憲」論。改憲に踏み込まず、「安保基本法」の形で自衛隊を規制するなどで、左右の対立をかわす狙いだ。
 もっとも党内の護憲派は「改憲への露払いになる」と反発。「従来の護憲論は限界」と創憲論を提唱した山口二郎・北大助教授も「憲法で自衛隊を明確に位置づけるべきだ。あいまいな問題提起は議論を混乱させるだけ」と手厳しい。
 社会党の「創憲」論議を横目に、公明党の市川書記長は十四日、「九条もタブー視せず議論する」と述べ、憲法見直しの陣に加わった。「護憲は党是」と見る空気が強いだけに、古参党員は「時代も変わった」と驚くが、自民党羽田派などとの「提携をにらんで」と解説する幹部も。
 昨年十二月に支援団体「民社党と語る会」から「九条改正」の提言を受けた民社党も、党内に特別委員会を設置して、四月の党大会をめどに検討を始める。こちらも「日本新党などとの関係強化を念頭に置いた計算」があるようだ。
 そんな中、共産党は「憲法の原則擁護の世論の担い手はわが党だけ」(志位和夫書記局長)と、冷ややかな視線を浴びせる。
 
○首相は距離
 「あ、そうですか。いや、聞いてないなぁ。三塚さんの話は聞いてない」
 昨年暮れ、三塚氏が改憲問題を検討する協議機関の国会設置を提唱したとき、宮沢喜一首相は記者団の質問を終始はぐらかした。しかし、自民党は十三日の役員会で、三塚氏の提案を代表質問に盛り込むことを了承。首相は外遊中とあって、首相周辺は「首相に連絡せずに決めたとしたら問題だ」と、不快感を隠さなかった。
 河野洋平官房長官らも「内閣としては改憲を前提とした論議に加わるつもりはない」と、改憲論議から距離を置く。
 首相は首相就任直前の雑誌の対談で「今の憲法で差しつかえないと思っている」と述べるなど、戦後政治に果たした現行憲法の役割を高く評価してきた。最近、「若い人たちが議論することは結構なことだ」としつつも、「保守が分裂するとすれば、おそらく改憲か護憲か、が指標になる。しかし、それは憲法にとって好ましいことではない」と周辺に語ったという。
 
●「タブー視否定」拡大 抵抗感も根強く 可能性薄い政治日程化
 「憲法見直し」発言が昨年末から相次いでいる背景には、冷戦後の国際社会で日本の役割が問われる中で、自衛隊の海外派遣による国連協力など現行憲法が想定していなかった問題が次々に現れている事情がある。一口に「見直し」といっても、それぞれの立場で改正の方向や内容、力点の置き方には隔たりがあり、ただちに憲法改正が政治日程にのぼる可能性は薄そうだ。ただ見逃せないのは、「改憲問題をタブー視すべきではない」といった見方が、与野党を通じて、徐々に支持を広げつつあることだろう。
 これまで、憲法改正は常に保守の側から提起されてきた。一九五四年に発足した鳩山内閣は改憲を公約に掲げ、総選挙に臨んだが、挫折した。
 岸内閣は五七年、政府に憲法調査会を設置した。しかし、六〇年の日米安保条約改定後に成立した池田内閣が経済成長優先に方向転換する中で、改憲論議はしだいに低調になった。
 憲法が国民の間に定着する中で、自民党も、いわゆる明文改憲を事実上あきらめ、改憲を実際の政治日程に乗せることはなかった。野党側も「護憲」を唱えることは、平和勢力の証(あかし)だった。
 ところが事情は一変。自民党ばかりか野党幹部までが憲法見直しを公然と唱え始めた。湾岸危機以降、国際貢献のあり方をめぐって激しい論議を呼ぶ中で、昨年、国連平和維持活動協力法(PKO協力法)が成立した。その論議の過程で、改めて平和憲法の「効用」と「制約」に焦点が当てられた。
 自民党内では、小沢一郎元幹事長らが現行憲法でも正規の国連軍への参加は可能、などの考えを打ち出したが、「やがて日本は政治大国としてさらに重い責務を負わされる」(渡辺派幹部)として、集団自衛権の行使が可能なように憲法九条の改正を訴える動きが目立つ。
 その一方で、なし崩し的な「軍事貢献」を封じるために、あいまいさを残す現行憲法の条文を改正すべきだとする、いわば「護憲的改憲論」もあり、改憲論議はまだら模様だ。
 特徴的なのは、公明党の市川雄一書記長が国民投票制や環境権の憲法への明記を唱え、日本新党が昨年十二月にまとめた政策大綱で地方分権の推進を盛るよう訴えている。自民党内には首相公選論を手がかりに改憲を探る動きが出るなど、「九条問題」にとどまらず、幅の広い改憲論議が提唱されていることだろう。
 だが、社会党などに「改憲論議」の解禁に根強い抵抗感がある。政府・自民党内にも「冷戦終結で平和憲法の価値はむしろ高まっている。憲法の範囲内でやれる国際貢献はまだまだ多い」(宮沢派幹部)といった見方は少なくない。
 杉原泰雄・一橋大学教授(憲法学)は「国民生活にとって憲法の原理・原則がマイナスになっているなら改正を考えるべきだろうが、具体的な検証がないムードだけの見直し論は意味がない」と話している。
 
◆「憲法見直し」に触れた最近のおもな発言
《自民》
 三塚博政調会長:「憲法改正問題を検討する与野党協議の場を国会に作ったらどうか。国連平和維持活動(PKO)への自衛隊参加が憲法の禁じる武力行使に当たらないことを、9条に明記すべきだ。各条文を審査する必要がある」(昨年12月25日、記者団に)
 梶山静六幹事長:「国連憲章と憲法のかかわりや整合性を中長期的に研究すべきだ。憲法は不磨の大典というが、50年に1度くらいは見直さないといけない」(1月6日、講演で)
 羽田孜・羽田派代表:「憲法をタブー視してはならない。解釈を広げるだけでは、子や孫の代になったとき、なんでこの憲法がこう読めるのかということになる」(1月12日、記者会見で)
 
《野党・労働界》
 大内啓伍民社党委員長:「国際貢献に自衛隊をどう使うかなどをめぐる混乱の根源が憲法にあるなら、だれが読んでもわかるようにしないといけない」(昨年12月28日、NHKの録画撮りで)
 山花貞夫次期社会党委員長:「『護憲』を発展させ、憲法の創造的展開を図る『創憲』の立場に立つ。自衛隊についての合憲・違憲の二元論的論議を脱し、矛盾した現実をどう変えていくのか、国民的論議を進める」(1月4日、「立候補の決意」)
 山岸章連合会長:「ポスト冷戦時代の今日、従来の基本理念、基本政策を白紙に戻し、再検討するぐらいの大胆な発想が必要。近い将来、平和憲法の精神を踏まえて護憲的立場から、新しい時代に憲法をどう適応させるかとの観点で本格的な検討が必要だ」(1月13日、講演で)
 市川雄一公明党書記長:「憲法を不磨の大典ととらえる必要はない。国民主権、基本的人権の保障、恒久平和主義の三原則は将来にわたって擁護、発展させる。ただ、9条もタブー視せずに議論する。現代の時代状況にフィットしていない面もあり、国民投票制度導入、環境権の明記、人権尊重の徹底、地方分権の拡大・強化、議会権限の強化などを議論する」(1月14日、記者会見で)


 
 
 
 
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