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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/02/21 朝日新聞朝刊
小沢調査会 安全保障問題に関する答申案<要旨>
 
 自民党の「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(小沢一郎会長)がまとめた安全保障問題に関する答申案の要旨は次の通り。
 
【はじめに】
 新たな日本の安全保障上の役割について考えるとき、我々の念頭を離れないものは、第2次世界大戦に至った我が国の歴史である。
 過去の歴史を真摯(しんし)に反省し、二度と同様の行為を繰り返してはならないことは当然であり、恒久の平和は日本国民の念願である。しかしながら、これまでの日本の平和国家としてのあり方は、他国の安全と平和には関与しないという受動的、消極的な姿勢につながり、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存しうるよう能動的、積極的に対応する姿勢に欠けがちであった。
 長い戦後体制の中で、国民の多くは「平和イコール非軍事」という考え方に慣れ、その中で「一国平和主義」に陥りがちであり、一部ではあるが「非武装中立」といった議論すら行われてきた。
 我が国は自国の利益のために戦争の惨禍を引き起こすことは二度と繰り返してはならない。しかし、「平和イコール非軍事」という図式から抜け出そうとしない態度は、歴史を正面から受け止めて反省し、日本がかつて抱えていた問題点を克服することから逃避することにつながってしまっていたのではないだろうか。
 先般の湾岸戦争にみられるように、平和はただ単にこれを唱えることによりもたらされるのではなく、国際社会が一致協力して行動しなければ実現できない場合もあることが明らかになった。今後の世界の平和秩序維持において我が国が積極的に役割を果たしていくためには、「世界の平和を守るための役割」についての世界の常識に、日本も歩調を合わせていかなければならない。
 
1、国際情勢認識と日本の立場
<1>冷戦の終結と国際秩序の行方
 (1)冷戦の終結 略
 (2)不透明な国際秩序の行方 略
 (3)集団指導体制の強化 略
 (4)国連の機能の重要性 略
<2>日本の立場
 (1)安全保障に対するより広範な責任分担
 新しい国際情勢の中で、日本は経済的役割のみでなく、様々な国際的役割の強化が求められており、同時に自ら求めるべき立場にある。この中には、当然のことながら、安全保障面の役割の強化が含まれよう。
 (2)新たな役割のための4原則
  (イ)日米の基軸的関係 略
  (ロ)G7での連携・強化 略
  (ハ)国連への積極的参加・協力 略
  (ニ)アジアの一員としての努力 略
<3>湾岸戦争の教訓
 (1)湾岸戦争と国際社会の未来像 略
 (2)日本の対応の問題点
 我が国においては、安全保障問題について具体的にどのような責任を負うべきかについては事前に十分な検討が行われていなかったうらみは否めない。このため、一昨年秋の「国連平和協力法」廃案以来、湾岸危機・戦争への対応が後手後手にまわってしまった。
 (3)掃海部隊派遣の残された課題
 湾岸戦争終結後の海上自衛隊の掃海部隊の派遣は、自衛隊法第99条の「機雷等の除去」に基づき、公海の船舶航行の安全を確保するとの目的で行われたが、今後の自衛隊の海外での平和的活動に当たっては、法制面でのより積極的な整備が求められる。
 
2、安全保障に関する日本の持つべき理念
<1>積極的・能動的平和主義
 今こそ、我々は、日本国憲法の平和主義の本質とは何かについて、根本的な考察を加えなければならない。憲法全体の立法の趣旨を示すものは、憲法の前文である。そこでは「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」との決意が述べられ、また、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」と表明されている。
 これらは、国際社会と協調し、世界の平和秩序維持と世界経済の繁栄のために努力する、という精神を示すものである。憲法第9条第1項において「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」すると宣言しているのも、憲法前文の精神に沿ったものである。
 こうした憲法の精神は、消極的平和主義や一国平和主義とは全く異なる積極的、能動的な平和主義の精神である。国際平和を守り抜くために、時として、国際社会が一丸となって専制に対して立ち向かわなければならない場合がある。
 その場合に、こうした行動に参加せず、専制を黙認しようとすることは、決して日本に名誉ある地位をもたらすものではない。
<2>憲法第9条と国際平和の維持・回復
 憲法前文に示された立法の趣旨は、同時に条文解釈の指針である。これまでの政府解釈においては、憲法第9条では自衛のための必要最小限度の実力行使は許しているが、それ以外の実力行使は憲法の禁止する武力の行使に当たり、許されないと解されている。
 憲法前文に示された積極的・能動的平和主義の理念に照らしてみると、国際協調の下で行われる国際平和の維持・回復のための実力行使は否定すべきものとは考えられない。具体的には国連憲章第43条に基づく国連軍のように、国際的な合意に基づき国際的に協調して行われる場合には、当該実力行使が「国際平和の維持・回復」という目的に沿ったものとなることは疑うべくもないと考えられる。
 したがって、そのような場合には、仮に我が国が海外で実力を行使したとしても、それは憲法第9条の禁止する我が国の「国際紛争解決手段としての戦争・武力行使」には該当せず、憲法第9条にも抵触しないと考えられる。
 これまでの政府解釈は、国際平和をどのように維持・回復するかについて国際的に十分な合意がなく、それへの日本の協力が求められておらず、日本自身そうした協力を行う力がなかった時代の産物であり、もはや妥当性を失っていると考えられる。
 したがって、国際的な合意に基づき国際的に協調した形で、海外で国際平和の維持・回復のための実力行使を伴う協力を行うためには、新たな解釈が必要であり、それは十分可能であると考えられる。
<3>経済的寄与の重要性 略
<4>人的協力の推進 略
 
3、安全保障に関する日本の果たすべき役割
<1>世界の平和秩序維持のための活動
 (1)国際的軍縮への寄与 略
 (2)国連平和維持活動への協力
 我々はいま、国連が行う平和維持活動に対して、自衛隊も含めた積極的な参加を準備している。
 このような平和維持活動への参加すら、我々日本はこれまで真剣な検討を加えず、人的協力は極めて限定されたものであった。
 (3)国連における地位の強化と国連自身の体制強化 略
 (4)「国際的安全保障」への参加の検討
 我々日本は、国連平和維持活動への参加の実績を踏まえて、次の段階としては、国連の指揮命令の下に置かれる国際平和維持・回復のための軍、いわゆる国連軍に対して、積極的な協力さらには参加を検討する必要がある。
 なぜならば国連憲章43条には「国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要請に基づき…(中略)…国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する」と規定しており、日本国憲法の前文の精神を実現するには、同条の規定を誠実に履行する必要があるからである。
 国連軍への参加は、ある程度の実力行使を前提としているが、現在の政府の憲法第9条の解釈においては、自衛以外の実力行使、あるいは集団的自衛権に基づく実力行使は認められていない。しかし、我々は同時に国連の設立の趣旨や国連憲章第6章、第7章、さらには日本国憲法前文にすでに内包されている、集団的自衛権とは別の概念、すなわち、国連が国際社会の平和秩序の維持のために、実力行使も含めた措置を担保する集団的安全保障という概念(集団的自衛権との混同を避けるために、むしろ「国際的安全保障」という名称のほうが適切と考えられる)が、国際社会で広く認められていることを承知している。
 我が国としても、憲法第9条に関し、この概念にしたがえば、新たな政府解釈を行うことにより、国連軍への参加が可能になるものと考える。
 こうした国連軍の結成を急ぐとしても、その実現の前に湾岸戦争のような非常の事態が発生する危険性は否定できない。このため、湾岸戦争の際に編成された、国連の権威の下にあるが国連の指揮命令下には置かれない多国籍軍に対して、日本がどのような協力を行うかをも検討しておかねばならない。
 少なくとも国連の権威の下にあり、国際的な合意に基づく多国籍軍であれば、資金面・物資面での支援を行うとともに、実力行使を伴わない医療・輸送・環境保全などの人的協力を進めるべきであろう。
<2>人的協力のための条件整備
 (1)国内政治システムの強化
 今後日本が国際社会で人的協力を展開するには、政治のリーダーシップの強化はもとより、政策意思決定を適時適切に行うための政治システムの構築が必要である。
 (2)自衛隊の任務の明確化と人的協力に従事する者に対する保障
 今後の人的協力の中で、自衛隊には我が国の防衛という主たる任務(自衛隊法第3条)に加えて、国連平和維持活動や緊急援助活動への参加などの新たな任務が付与されることになる。今後は上記の新たな任務を明記すべく自衛隊法を改正する必要がある。
 (3)諸外国の理解醸成
 日本が安全保障上、新たな役割を担うに当たっては、残念ながら、諸外国、特に近隣アジア諸国からは、十分な理解と信頼を得るには至っていない。
 日本としては、こうした懸念・警戒感を払拭(ふっしょく)するため、新たな役割は「先の大戦の反省にもかかわらず」担おうとするものではなく、むしろ「先の大戦の反省ゆえに」担おうとするものであることを示していかなければならない。すなわち、日本の安全保障上の新たな役割は、あくまで世界平和の維持と回復を目的として、国際協調の枠組みの下で担われるものであることを明らかにして、諸外国の理解を求めていかなければならない。
<3>日米安保条約の堅持 略
<4>アジア地域の平和への寄与 略
 
●憲法の規範性を軽視 奥平康弘・国際基督教大教授
 国連軍への参加も合憲という考え方は、現在の政府・自民党の憲法解釈を変えるべきだという主張であり、自衛隊創設に続き、2度目の解釈改憲を狙おうとしていることを意味している。憲法の解釈は時代によってどうにでも変えられるということなら、憲法の規範性を軽く考え過ぎているという気がしてならない。
 多くの憲法学者は、憲法の解釈には限界があると考えている。国連軍なら武力行使も可能という解釈は、憲法の前文を見ても9条を見ても、限度を超えている。本来は憲法改正という手段で問うべき性質のものだ。それを解釈によって進めようという手法は、長い目でみていいこととは思えない。
 答申案が提唱する「能動的平和主義」も、軍備がなかったら平和がないという伝統的な考え方を、また持ち出してきたに過ぎない。憲法はそれを否定したところに、世界の中でも独自のものとして存在する意義があると思う。その上に立って日本は国際協調を進めていくと宣言したのではなかったか。
 答申案は、軍備をもてる「普通の国」になろうというイデオロギーに基づいていると思われるが、それは、平和は軍事で保たれるという考え方に再び戻れということを意味する。こうした指向は、憲法に混乱をもたらすと思う。
 
●憲法解釈は変わるもの 北岡伸一立大教授
 日本の政治は、小手先の手直しだけで終始することが多い。それでは世界の大きな変化に対応できない。世界の平和と日本の安全のために何が必要で何が可能か、とらわれずに論じようとした点を評価したい。
 答申案も言うとおり、憲法前文の平和主義と、9条2項の非軍事主義は違う。戦争直後には、日本の非軍事化が世界平和の道だったが、現在の日本は、軽武装の経済大国として、世界平和のためにもっと積極的な役割を果たすべきだ。9条2項をあまりに厳格に解釈すると、かえって前文の平和主義や98条の国際法規順守義務と抵触してしまう。
 なお9条1項は、1928年の不戦条約に起源をもち、国際紛争解決のための武力の行使や威嚇を禁じたもので、国連軍のようなものに日本が参加することを禁じたものではない。
 従来の憲法解釈との関係では、政権が代われば多少解釈が変わるのが当然で、それを最高裁が判断し、国民が選挙で判断するのが民主主義の原則だ。法制局見解の絶対視はおかしい。
 ただ、集団的自衛権と日米安保条約に関する議論が物足りない。国連重視は当然だが、国連は万能ではない。国際的安全保障という考え方は悪くはないが、それだけでは不十分だ。
 
●軍事的貢献重視しすぎ 山口二郎北大助教授
 冷戦構造の終結、世界の構造的変化を受け、日本の外交・安全保障政策は状況にそぐわなくなっている。「軽武装・経済重視」の保守本流路線こそが、一国平和主義だったが、これがもはや妥当しないという認識は的を射ている。新しいパラダイム(枠組み)を探す努力を始めたのは評価できる。
 また、憲法の理念に批判的だった保守の側が、憲法を前提に外交・安全保障の戦略を模索しはじめたことは、日本の政治にとって新しいできごとだ。もはや護憲は革新側の専売特許ではなくなったので、革新側もこれに対抗する具体的なビジョンの提示が求められる。
 しかし、答申案の内容については、国連軍への参加など軍事的な国際貢献を重視しすぎている。日本が果たすべき国際貢献はどのような分野があるか、より広い視野から考える必要がある。韓国、中国、東南アジア諸国が指摘するように、日本の国際貢献の手段が軍事的なものである必要はない。日本の特徴を生かした貢献の方法があるはずだ。
 さらに、日本の軍事力を縮小させる展望が示されていないことも問題だ。国際的な軍縮を訴えるならば、80年代の軍拡で膨れあがった自国の軍事力を削減する発想があって当然だ。自国の軍事力をそのままにして、国際貢献を強調するのはアジアなど近隣諸国に対して説得力をもたない。


 
 
 
 
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