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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/02/21 朝日新聞朝刊
「憲法つまみ食いの独断だ」 小沢調査会の答申案(潮流・底流)
 
 自民党の安全保障政策は、これまでも現行憲法下で自衛隊の役割を拡大することをめぐり、慎重派と積極派が意見を戦わせてきた。小沢一郎元幹事長を会長とする「調査会」の答申案は、同じ積極派でも、これまでのようにジワジワと自衛隊の認知を目指すのではなく、日本が国際社会で果たす責務という観点から憲法解釈を一気に転換しようとする新しい流れだ。しかし、同党の憲法調査会からは「憲法の精神を独断的に解釈するもの」という批判の声があがっている。「小沢流」の考え方が、どこまで党内の支持を得られるのだろうか。
 
●市民権
 自衛隊は発足当時から憲法違反との批判を浴びてきた。「日陰者」扱いが続き、自民党の防衛関係議員らは、いかに「市民権」を得るかに腐心してきた。
 「シーレーン防衛(海上交通防衛)」など日米安保強化を柱とする役割を拡大・定着するため、既成事実を積み重ねた。87年ごろからは、自衛隊の活動領域を海外まで徐々に広げようと努めてきた。
 小沢一郎氏は、こうした手法にむしろ批判的だ。「原則もなく、なし崩し的に自衛隊を外に出すのはおかしい」。湾岸危機以来、そう言い続け、「まず理念を打ち立てる」との方針で、調査会に取り組んできた。
 しかし、国連平和維持活動(PKO)協力法案の扱いも決まらないうちに、国連軍、多国籍軍への自衛隊参加まで視野に入れた小沢氏の主張には、反発も強い。有力な防衛関係議員、山崎拓建設相(元防衛庁長官)は「実績なしに先のことは論じられない。まず海外災害派遣、国連平和維持活動(PKO)協力を定着させ、国民の理解を深めることだ」という。
 
●反発
 小沢調査会に触発されて、自民党の憲法調査会も動き出した。
 昨年12月4日には、小沢氏の主張に近い憲法学者、小林節慶大教授を党本部に呼んで、質問攻めにした。
 後藤田正晴氏:憲法解釈には過去の積み重ねがある。国際安全保障のための戦争はOKというあなたの説明は、改憲しない限り無理じゃないか。
 小林教授:筋としては、ここまできたら憲法改正が正論だと思います。ただ、改正が社会学的に不可能なら、どこまで解釈で可能かというアプローチをやってるわけでして・・・。
 もともと憲法調査会は改憲派の「本拠地」だったが、いまは様変わり。栗原会長や後藤田氏らベテランの議員が中核だが、基本認識は「専守防衛」を基本とする自衛隊が海外で軍事的な役割をすることには「よっぽど慎重でないといかん」というもの。さらに護憲派とされる河野洋平氏らも加わり、「特定のところが憲法解釈の幅を勝手に決めるのはいかがなものか」。憲法解釈の転換をはかる小沢調査会の前に、立ちはだかった形だ。
 
●乱反射
 「いつか来た道論はナンセンス。先輩のやってきた戦後の民主主義は壁に突き当たっている」
 小沢氏はそう言い、調査会の答申案をまとめる際も「官僚の意見には左右されない」「若手の考えを大切にし、自民党の将来に向けた指針をつくる」との方針で臨んだ。起草にも党外交部会長の船田元氏ら中堅・若手議員を登用。調査会の踏み込んだ提言が、安保政策で党内外にハレーション(乱反射)を引き起こすのも計算のうちだった。
 ただ、小沢調査会のメンバーの1人は「調査会が一番注目されたのは、昨秋の総裁選で各候補が小沢さんの考え方にすり寄ってきた時。いまは宮沢さんもはたして関心があるのかどうか」。答申案が党内にどのような衝撃をもたらすかについてはいま一つ、はっきりしない。
 
○「解釈改憲許されぬ」
 栗原・自民党憲法調査会長に聞く:自民党内で、小沢調査会の論議に真っ向からかみついているのが、「老舗(しにせ)」の憲法調査会だ。同調査会の栗原祐幸会長に今回の答申案について意見を聞いた。
 ――「積極的・能動的平和主義」という新しい憲法解釈をどうみますか。
 「憲法前文の『国際社会において、名誉ある地位を占めたい』とか『他国を無視してはならない』という部分をつまみ食いして、憲法の精神を『積極的平和主義だ』と断ずるのは非常な独断だ」
 「前文のハイライトは『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』という部分と『国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ』という部分だ。9条の『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し』という部分も、平和を強く求めるという意味だ。憲法を素直に読めば、自衛隊が国連軍の活動を積極的にやってよろしいというふうにはどうしても読めない」
 ――憲法9条の解釈を変更することについては。
 「憲法調査会で議論した結果、解釈の変更で(事実上)改憲のようなことをするのは良くない、という結論になった。それに、国民は9条というのは、日本が他国から侵略を受けた場合に、必要最小限度の武力行使をすべきものだと理解している」
 「この方向で議論を進めて行くと、侵略戦争以外なら、自衛隊がどこへでも行って戦えるということになる。そうなったら、どこに歯止めがあるのか。解釈を変えることによって今までと違うことを行うというのは、国民的な感情からいっても許されるものではない」
 ――憲法改正論議は。
 「国際貢献という観点から憲法を見直そうというのは良い。大いに議論すべきだ。しかし、それは自民党の1調査会がやるべきことではない。国民みんなが考えるべき問題で、私は臨調方式の『臨時憲法調査会』を作って国民各層の意見を聞きながら検討を進めるべきだ。そうすれば国民の関心は深まるし、諸外国も、なるほど日本は国際貢献について本格的な国民的検討を始めたと見る。それだけで十分に国際的なシグナルにもなる」
 
<憲法前文(抜粋)と第9条>
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
 
 第9条【戦争の放棄、軍備及び交戦の否認】
 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


 
 
 
 
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