日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/09/22 朝日新聞朝刊
ほかに道はないのか 貢献の構想力欠く(PKO・岐路の日本:下)
 
 ここに、1つの文書がある。
 「将来、国連平和維持活動(PKO)の文民分野は、重要な責務を担うと予想される。日本は文民分野への貢献を増すための部局の設置を考慮中である」
 
○消えた「文民重視」
 外務省が昨年4月、国連に提出したPKOに関する提言の一節だ。この提言からわずか1年半後、PKO協力法案からは、提言の「文民分野重視」はうそのように消え去った。
 湾岸戦争後の政府・自民党の「国際貢献」論議は常に、「カネだけでは不十分、人的貢献が必要」「ヒトは自衛隊以外にない」「憲法の制約をどう乗り越えるか」という論理が主役だった。国際社会で一人前と認められるには憲法は足かせ、ととらえる見方だ。自民党内の一部には、平和憲法が「一国平和主義」の根源、という気分さえ漂っている。
 ここには、憲法の平和主義はそもそも、戦争の「反省の証(あかし)」として、「国際社会において名誉ある地位を占めたい」と、戦後日本の「国際貢献」の方向を示したものだという認識はみられない。
 戦後、日本政府が憲法の精神を生かす原則として掲げ続けてきたものに「国連中心主義」がある。今回のPKO論議でも推進の「旗印」にしてきた。
 しかし、戦後の日本の国連での行動は、国際社会から「日本は、分担金の支払いでは優等生だが、日米関係を中心に2国間外交が優位に立つことが多く、国連外交はともすれば従属的な地位を与えられてきた」(明石康・国連事務次長)と、冷ややかな視線を浴びてきた。
 
○目立つ「対米協力」
 裏付ける調査がある。国連での各国の投票行動を追跡している新聞資料センター主宰河辺一郎氏によると、人権問題などを担当する「第3委員会」への付託決議に対する賛成率は、日本は80年代、米国とともに常に西側諸国の平均を下回り、89年には両国とも賛成ゼロに。軍縮問題でも米国同様、消極姿勢が目立っている。河辺氏は「国連での投票が、日米関係の円滑化のための取引に使われている」と分析する。
 政府・自民党にとって「国際協力」とは「対米協力」にほかならなかったのではないか、という疑問は消えない。
 一方、そんな外交姿勢を「対米追随」と批判し、自衛隊の平和維持軍派遣に「憲法違反」と反対している社会党もまた、国際貢献に関する明確なビジョンを示せないでいる。PKOに関する党内論議も、自衛隊違憲の「原則論」と、何らかの形での自衛隊活用の「現実論」の応酬に終始してきた。
 
○軍事集中へ「一石」
 同党の伊藤茂副委員長はこの夏、ドイツのシュピーゲル誌に掲載されたワイツゼッカー大統領の次のような提言を読んで「なぜわれわれも、こんなスケールの大きい発想をもてないのか」とためいきをついた。
 「日本のように安保理事会の常任理事国になることを求めるのが、大切なのではない。重要なのは、ヨーロッパが国連に新しい構想を提案することだ」「人口過剰、飢餓と貧困、難民の波、自然の破壊などの危機に対処するため、(PKOの代名詞の『ブルーヘルメット』に加え)国際部隊である『グリーンヘルメット』をつくるべきだ」
 湾岸戦争への対応で、日本同様批判を浴びたドイツでは、キリスト教民主同盟が国防軍の北大西洋条約機構(NATO)域外派遣を、野党の社会民主党がPKOへの国防軍派遣を可能にするための憲法改正を、それぞれ主張している。しかし、大統領の提言には「国際貢献」論を「軍事」だけに収れんさせまいとする強い意志がある。
 進藤栄一・筑波大教授(国際政治学)は、日本のPKO論議の現状を「PKOへの協力は必要だが、自民党には軍縮の発想がない。一方、もし自民党が軍縮構想とワンセットで出して来たら、社会党はどうしようもないだろう」と指摘する。
 自民党の「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(小沢一郎会長)は多国籍軍や国連軍への参加など早くも次のステップを視野に入れ始めている。その時、説得力ある「もうひとつの道」を示す構想力が、今の政治にあるかどうか。 (政治部・持田周三、根本清樹)


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
27位
(29,137成果物中)

成果物アクセス数
273,890

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年9月23日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から