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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/09/20 朝日新聞朝刊
どんな国を目指すのか 政治大国への誘惑(PKO・岐路の日本:上)
 
 国連平和維持活動(PKO)をめぐる論議のなかで、あまり声高に語られていないことがある。「国際貢献」を掲げつつ、日本政府はPKOへの参加を「政治大国への踏み台」にしようというシナリオを描いているという点だ。
 
○湾岸戦争が契機に
 昨春、栗山尚一外務次官(当時)の論文(「外交フォーラム」90年5月号)が注目を集めた。「国際秩序に受け身の『中小国の外交』から、欧米とともに新秩序づくりに参加する『大国の外交』に脱皮しなければならない」と説いたものだった。経済力を生かし、国際政治でも影響力を発揮すべき時期が来た、という認識に基づいていた。
 自衛隊を使ったPKO参加構想は、実は今回が初めてではない。1956年の国連加盟直後から、外務省がひそかに練ってきた。しかし、構想が表面化するたびに、憲法に反するとして、野党や世論の猛反発にあった。そんな「死屍累々のPKO(ししるいるいのPKO)」(菊地清明・元国連大使)をよみがえらせたのは、湾岸戦争だった。
 戦争は、政府・自民党内部にひそむ「大国意識」を刺激した。米国の求めに応じ、多国籍軍の後方支援に自衛隊を派遣しようとする試みは挫折。湾岸の当事国を除けば、世界最大の財政貢献をしたにもかかわらず、「小切手外交」の批判すら受けた。
 昨秋、PKO法案の「種子」ともいえる国連平和協力法案が廃案になったとき、政府は「大国の条件」を「ヒト、カネ、政治的役割が三位一体となった平時の国際貢献」(外務省幹部)に求めた。日本政府にとって好都合だったのは、米国が湾岸戦争に国際的な正当性を与えるのに国連を巧みに活用した結果、「国連ルネサンス」がうたわれ始めたことだった。
 「国連の網をかぶったPKOが、憲法を膨らまして参加できるぎりぎりの限界だった」と首相に近い政府筋は述懐する。PKOに参加すれば結果的に、国連憲章の旧敵国条項の削除や安保理常任理事国入りなどの政府の「悲願」を達成するうえでも役立つ、という読みも込められていた。
 
○「即効性」を求めて
 海部首相や自公民3党の幹部たちが、当初、モデルに描いていたのは、北欧諸国が持つ志願制の国連待機軍制度である。自民党国防族の有力議員さえ、第2自衛隊ともいうべき「日本型PKO組織」を考えた。
 しかし、「『ヒト』は自衛隊以外にありえない」という結論に達するまでに、時間はかからなかった。湾岸戦争が見せつけた軍事力の圧倒的な威力、戦争に十分な貢献ができなかったという「負い目」が、「完成された能力を持ち、即効性のある自衛隊」に飛びつかせた。
 PKOへの参加は、何を意味するだろうか。実は、ヒトを出す側の防衛庁はPKOにはあまり関心がない。国連よりも米国に目が向いているからだ。冷戦後の日米防衛協力のあるべき姿として、防衛庁が想定しているのは、地域紛争に対応するために世界に展開する米軍に、できるだけ後方支援する体制を整えておきたい、という「日米安保の地球規模への拡大」である。
 しかし、実質的には自衛隊派遣法といっていいPKO法案が成立すれば、少なくともいつでも海外派遣が可能な体制が整い、補給や輸送の訓練もできる。その意味ではPKOは、防衛庁にとっては在日米軍の行動範囲を「極東」と定めた日米安保体制さえひょいと超えた軍事的な責任分担体制への一里塚、とも言えるのだ。
 
○“次”模索の動きも
 PKO法案よりもっと踏み出したところに「大国の証明」を求めようという動きの波頭も見え隠れしている。小沢一郎前自民党幹事長は湾岸危機のさなか、「憲法の禁じた集団的自衛権の行使と国連軍の集団安全保障とは全く違う。国連軍に自衛隊が参加しても憲法9条に違反しない。地球規模の安全保障から判断すべきだ」と首相を説得した。小沢氏が会長を務める自民党の「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」は、PKOの次の検討課題として、「国連軍や多国籍軍への積極的な協力」を挙げ、それを可能にする理論的な根拠として「国際安全保障」という新しい概念を提起している。ここには、戦後の日本が歩んできた「抑制的国家」からの転換を図ろうとする意図が読み取れる。
 PKOは本来は地味で補完的な活動のはずだ。その実績を批判する人はまずないだろう。だが日本では今、大国への思惑が先行するあまり、PKOに具体的にどのような貢献をするのかという議論は、ほとんど聞こえてこない。 (政治部・西村陽一)


 
 
 
 
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