【ワシントン22日=内藤特派員】中東危機が緊迫の度を加える中で、米国内では、日本の“沈黙”に対する不満がじわじわと強まっている。米政府はいまのところ、日本の経済制裁措置を高く評価し、さらに日本の協力に期待するとの姿勢を示しているが、米国民の間では、「新超大国(日本)はどこにいる?」というニューズウイーク誌最近号の記事が象徴しているように、これまでの日本の対応にあきたりなさを感じている向きが多い。
米マスコミの報道などによって、米国民の多くは、先進工業国の中で、中東石油への依存度が最も高いのは日本だと承知している。「日本の石油を守るために、なぜ米国が犠牲を払わねばならないのか」といった疑問は多数の米国民に共通する。
半面、日本が憲法によって海外派兵を禁じられていることも、繰り返し報道されている。米国内世論も、憲法改正を求めているわけではない。日本に対する不満のかなりの部分は、この危機に際して、日本が何を考え、どう行動しようとしているのかが、米国民に分かる形で伝えられていないことにある。
ブッシュ大統領は、海部首相とも話し合ったことを米国民に披露したが、イラク軍のクウェート侵攻以来、首相自身の発言は一度も伝えられていない。サッチャー英首相が「欧米の婦女子を盾に使い、その陰に隠れようとしている」とフセイン・イラク大統領を鋭く非難したのとは、余りに対照的だ。
これまで日本政府は、対米交渉ルートを政府間1本に絞り、決定済みの政策のPRはしても、広く米国内向けに、日本の考え、取り得る選択をあらかじめ伝えることには重点を置いてこなかった。現在の危機的状況下で、この手法は、日本の対応に米国民が感じているいらだちを静めるどころか、増幅することになりかねない。
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。