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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/05/03 朝日新聞朝刊
42歳、定着進む憲法 平成彩った「順守」発言 政教分離でなお論議
 
 「昭和」から「平成」に時代が変わる中で、憲法は3日、42歳を迎えた。天皇陛下の憲法順守発言などにみられるように、憲法はいま国民の中に溶け込んでいるように見える。昭和天皇の「大喪の礼」が政教分離との関係で論議を呼んだが、竹下政権の下では改憲の動きは総じて鳴りをひそめてきた。憲法をめぐる最近の状況をまとめてみた。
 《昭和から平成》「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類の福祉の増進を切に希望してやみません」
 1月9日、天皇は「即位後朝見の儀」で、憲法順守の考えを述べられた。「朝見の儀」の「お言葉」は新天皇の国民に対する、いわば最初の所信表明に当たる。現憲法下での初の皇位継承にふさわしく、平成時代の門出を憲法の精神が彩るようにみえた。
 憲法に対して、朝日新聞社の一昨年の世論調査では「よい憲法」と答えた人が62%を占めた。今回の「お言葉」は、こうした世論の動向を踏まえ、憲法が国民に定着していることを改めて印象づけた。
 国民の天皇観も、昭和天皇ご逝去後の1月に行われた本社世論調査では「天皇は今と同じ象徴でよい」が83%。憲法1条の象徴天皇制が定着していることを示している。
 その一方で、昭和から平成への変わり目で、別の動きもみられた。昨年9月、外務省が昭和天皇に関する英国大衆紙の報道に抗議した際、天皇を「わが国の元首(ソブリン)」と表現。昭和天皇の「戦争責任」発言では、長崎市長にいやがらせが相次いだ。
 また、2月24日の昭和天皇の「大喪の礼」では、「国の儀式と皇室行事との区別があいまい」として、憲法の政教分離との関係で批判が出た。来秋予定される天皇の即位に伴う儀式「大嘗祭(だいじょうさい)」に対しても、同じような指摘が早くも出されている。
 《様変わり》「憲法改正を政治日程にのせる考え方は基本的には持っていない」「勉強はおおいに続けてもらって結構と思うが、平和、民主主義、基本的人権など国民の基本に関することに触れる考えもない」
 竹下首相は一昨年11月、就任後初の記者会見で、改憲の意思がないことを明言した。リクルート事件の大波にのまれ、退陣表明を余儀なくされたが、この1年半の間、憲法問題が国会などで活発に論議されることはなかった。「政治日程にのせない」としながらも、自ら「改憲論者」と名乗り、何かと物議をかもした中曽根前首相時代とは様変わりした。
 戦後の歴代内閣で、憲法改正を真正面から取り上げたのは鳩山内閣(民主党)。1955年の総選挙で、9条(戦争放棄)の改定と天皇の「元首化」を目指したが、支持を得られなかった。その後の歴代首相は改憲に慎重だったが、中曽根前首相は「どんな制度、法律にも完全なものはないのだから、憲法を見直してよりよくする態度は正しい」(82年の就任時の記者会見)として、憲法論議を提唱。
 これに対し、竹下首相はイデオロギー色を出すことを意識して避けてきた。首相自身、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の初代会長を務めていながら、首相になってからは靖国神社に参拝していない。
 改憲を党是とする自民党も、今年の運動方針では「自主憲法の制定が不可欠であることを広く国民に啓蒙(けいもう)していく」との表現に改めた。ここ数年の運動方針では「憲法改正について検討を進めていく」となっており、「検討」から「啓蒙」へトーンをやや和らげた。
 さらに、自主憲法制定国民会議の岸信介前会長が一昨年亡くなり、現会長の木村睦男氏や党憲法調査会長の稲葉修氏ら改憲派の中心人物も相次いで引退を表明。その一方で、若手議員が4月に結成した「平成の会」では、「憲法の精神を高く評価」する方針を打ち出した。
 《政教分離で意見相違》護憲運動もいま、曲がり角にきているようだ。「護憲」を掲げる野党各党も3日に集会や街頭演説会を催すくらいで、年間を通じた活動は見られない。
 自民党の改憲運動が沈静化してきたことも手伝って、「護憲」をことさら持ち出すような政治状況ではなくなってきたからであろう。事実、天皇の憲法順守発言について野党側は、「朝見の儀そのものが憲法違反」とする共産党を除き、「護憲の主張を理解したものだ」(山口社会党書記長)と評価、好感を示している。
 もっとも「大喪の礼」への参加をめぐって、社会党は出席議員の大半が皇室行事には欠席し、国の儀式のみに参列。公明、民社両党は2つの儀式とも出席、共産党は全員が欠席した。憲法の政教分離原則をどうとらえるか、各党の立場の差を浮き彫りにした。
 戦後の護憲運動の旗振り役となってきた護憲連合も、今秋の労働界の統一をにらんで、見直しが迫られている。これまで人、カネともに依存してきた総評が解散、都道府県単位にある護憲連合の地方組織を支援してきた県評も消える。護憲連合への支援は、その時点で発足する「総評(地方では県評)センター」(仮称)に引き継がれる方針だが、「これまでと同様の協力が得られるのは難しい」(牟礼事務局長)とみているからだ。
 
●意識されぬことが良い 佐藤功・東海大教授の話
 天皇が新憲法の下で皇位につき、初めてこの憲法の定める象徴天皇制が実現した。天皇は「日本国憲法の定めるところにより皇位を継承しました」と述べ、日本国憲法を守ることを誓った。欧米のように国民が国王、大統領に誓わせるというところまではいっていないが、天皇自らが誓った意味は大きい。
 憲法については「まあ、これでいいじゃないか」という受けとめ方が国民の大勢だ。私はそれでいいと思う。むしろ、憲法は常に意識されているものであってはならない。何か事件が起きたり、おかしなことが目立ってくれば、積極的に憲法を守ろうという動きがおのずと強まってくる。労働運動にしても、消費税や時短が当面の問題で、憲法の出てくる幕でないということは、憲法が問題になるほどの状況にないということだろう。
 
●平和憲法、死守したい 作家・藤原ていさんの話
 日本人のみならず、近隣諸国の人たちの血と涙を流してやっと生まれた憲法なのだから、戦争を知っている者として命をかけて守っていきたい。たとえ、押し付けられた憲法でも、よいものならば守ろうと思う。逆に、押し付けられなければ、生きる基本となるべき憲法を得られなかったことが恥ずかしい。
 日本人は微温湯に漬かってしまって、現在、平和だということを知らない。憲法を死守するという意識がないとダメだと思う。いまの趨(すう)勢を見ていると不安だ。
 平和憲法を守るには、世界が平和にならなくてはならない。そのため日本は、アフリカ、東南アジアなどの困っている国が自立できるように、教育や技術などの援助の手を差し伸べるべきだ。今の援助政策は、モノを送るなど上滑りで一時的なものにしかすぎない。


 
 
 
 
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