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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/05/12 朝日新聞朝刊
「権利」の爆発 互いの調和が課題に(不惑の憲法:8)
 
 「ラッシュアワーはポルノアワー?」。ドキッとさせるタイトルを掲げたポルノ告発の集いが、東京・渋谷で今年1月に開かれた。
 仕掛け人は「行動する女たちの会」。会場の壁には裸の女性の写真を載せたスポーツ紙のピンク記事がベタベタと張られている。「身動きできない満員電車で、鼻先に暴力的なセックス記事を突きつける鈍感さはヒドイ」「男文化による女の性の商品化は女性の人権侵害ですよ」。約100人の参加者から、憤りの声が次々とあがった。
 翌日、この集いが「嫌ポルノ権打ち上げ」と新聞に報道された。さっそく、反発の声があがった。「ヌードのどこが不潔なのか」「男性にとって嫌ポルノは人権の侵害だ」。男性側の投書と女性側の再反論で、ちょっとした論争になった。
 「私たち自身は、『嫌ポルノ権』とまでは考えていない段階。ポルノという言葉をどう定義するかも難しい問題ですから」と、「女たちの会」の木村理真子さん(24)は、やや当惑気味だ。しかし、予想を超える反響に手ごたえを感じている。
 
○認知された「嫌煙」
 静穏権、入浜権、眺望権、健康権・・・。このところ、新しい権利の主張が相次ぐ。「権利の爆発現象」とか「権利のインフレ」などといわれる。そんな中で最近、裁判所から一定の認知を受けたのが「嫌煙権」だ。
 「まずマスコミの話題にならなきゃ、と考えましたね」。「嫌煙権」という言葉の生みの親、コピーライターの中田みどりさん(34)は振り返る。
 「排煙」「遠煙」・・・。いくつか浮かんでは消え「嫌煙」と決めたのが51年暮れ。ちょうど東京では「日照権」運動が大きな成果を収めつつあった。「ひょっとしたらたばこの煙が嫌、ということも基本的人権なのかもしれない」。中田さんは、日照権にあやかって「嫌煙」に「権」の字を加えた。
 当初は非難の声にもみくちゃにされ続けたが、やがて大きな関心を集め、たばこの害に対する見方を変えた。55年、国鉄などを相手に嫌煙権訴訟を提訴。今年3月、東京地裁は請求を棄却したものの、人格権の1つとして権利性を認めうる場合がある、との考えを示した。
 「嫌煙権」とは違い、日常生活の場ではだれもが賛成するのに、裁判の場では権利として認知されていないものもある。典型が「環境権」だ。環境権は「良き環境を享受し、支配する権利」として、45年に日本弁護士連合会が提唱した。被害発生前に侵害行為を止めることをめざす多くの公害裁判で主張されている。
 「1羽の鳥のことから語り始めたい」。環境権だけを根拠に、福岡・豊前火力発電所の建設差し止め訴訟を12年にわたって続けた作家の松下竜一さん(50)=大分県中津市=は、裁判所への1回目の準備書面をこんな風に書き出した。埋め立てで失われる干潟、浜辺の鳥や植物への愛惜。弁護士がつかない本人訴訟とはいえ、そうした心情の吐露は、裁判のルールからははずれた「演説」としか見られなかった。60年暮れ、最高裁は、環境権に触れることなく松下さんらの上告を棄却した。
 「あの当時、住民側からすればとにかく武器がほしかった。実にいいタイミングで『環境権』が出てきた。とにかく突っ走ろう、その間に学者や弁護士が、議論を整理して権利として煮詰めてくれる、と願ったのです」。松下さんの思惑ははずれた。「乱訴の弊」の非難に対して、松下さんは、「ランソの兵」の切り込み隊長を自認して、ひるむところはない。今も、九州電力を相手に、「株主権」裁判を起こしている。
 
○確立へ険しい前途
 新しい権利の前途は、まだまだ険しい。淡路剛久・立大教授(民法)は「権利が生成し確立するには、まず当事者の行動、次いで社会的な価値観の共有、そして法技術的な錬磨、の3段階が不可欠だ。環境権も最後でつまずいた。保護すべき環境の範囲や権利の主体などがあいまいだからだ」と分析する。
 新しい権利にとって、他の人権との調和をいかに図るかも大きなハードルの1つだ。「嫌ポルノ権」でいえば「表現の自由」とのかかわりや、「わいせつ」を国家権力の手で規制することの是非など、難問は多い。
 だが、この40年間の日本社会の激変は、従来、想像もできなかった生活環境や人間関係の変化を引き起こしている。住民らの訴えが真剣なものである限り、裁判所が基本的人権尊重の理念に照らして柔軟な解釈をしていくことも、時代の要請といえるだろう。それはまた、憲法の中身をより豊かにする道につながる。(増田誠記者)


 
 
 
 
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