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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/05/02 朝日新聞朝刊
NATOなみ 進む日米防衛協力(不惑の憲法:3)
 
 ベトナム戦争の実相を赤裸々に描ききったと、いま評判の米映画「プラトーン」の試写会を陸海空の自衛隊中堅幹部たちが見に行った。一様にショックを受けた表情で、ため息が漏れ、1人がポツンとつぶやいた。「やっぱり、平和が一番ですね・・・」
 
○勢い衰えた改憲派
 憲法制定以来、改憲勢力と護憲勢力のせめぎ合いの主戦場は、戦争放棄、戦力不保持を定めた「第9条」をめぐってだった。ところが、このところ改憲勢力にひところの勢いが見られない。第一、「戦力」そのものの自衛隊員の大半が、平和憲法にどっぷりつかって育っている。
 「最近、憲法改正の動きは冷えてるね。憲法成立の時の事情を国民に理解してもらうのが先だということで、自民党憲法調査会の中に憲法成立事情調査小委員会を作ったが、一昨年以来開いてないですよ。中曽根内閣のもとでそんなことやっても、意味ないのではないか、と不安を持ちだしてね・・・」(奥野誠亮・党憲法調査会副会長)
 といった、いらだちの言葉が出てくるほどだ。
 1978年の「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)合意で日米軍事協力の幅が格段に広がったのをきっかけに、「改憲」が声高に語られだしたのは記憶に新しい。翌79年のソ連軍のアフガニスタン侵攻が生み出した危機感がこれに油を注ぎ、日米安保を北大西洋条約機構(NATO)並みに格上げすべきだとする戦略論が大手を振って登場した。
 
○首相答弁で沈静化
 奥野法相、桜内自民党幹事長(いずれも当時)が改憲発言を繰り返し、国会も憲法論争でわいた。80年夏、日本で開かれた「日米安保条約20周年記念シンポジウム」では、三原朝雄自民党安保調査会長(当時)が安保条約改定を示唆する発言をし、米側の議員、学者らが憲法の見直しを主張した。
 米国を利用して自分の立場を強めようとした改憲論者もいたが、それだけではなく「米国のタカ派から下田会議で安保条約改正を提言してくれと頼まれたこともある。当時、米側の圧力があったのは事実」と三原氏は明かす。
 皮肉なことに、こうした動きが急速に沈静化していくのは、護憲の色合いが濃かった鈴木首相から「改憲論者」だったはずの中曽根首相に政権がバトンタッチされた82年前後からである。
 政府が従来の憲法解釈の枠をぐいぐい踏み越えたからだ。鈴木首相は81年の訪米の際「日米の役割分担」を約束、「周辺数百カイリ、航路帯1000カイリの防衛」を表明し、それまでの「専守防衛」の中身を一変させた。残る課題は憲法で禁止された「集団的自衛権」との矛盾だったが、中曽根首相は初訪米直後の83年の国会で内閣法制局の抵抗を押し切り「自衛隊の米艦護衛」の合憲性を主張、一気にこの問題を乗り越えてしまった。「日米防衛協力の質が、ガイドラインの前と後ではっきり変わった。首相のあの答弁がなかったら、憲法改正問題が顕在化しただろう」(防衛庁筋)という。
 このような「解釈改憲」の積み重ねによって、日米の共同作戦研究、共同訓練は飛躍的に拡大。米国防総省のアワー日本課長が「日米協力の実態はNATOに匹敵する」と断言するまでになっている。
 
○米側は逆に警戒も
 米側からの憲法改正の圧力も消えた。逆に、日本が米国にとっての脅威にまでなった経済力を基礎に、米国の期待する枠以上に軍事大国化するのをけん制する姿勢の方が強まっている。キッシンジャー元国務長官の「1%突破=軍事大国化」論を引き合いに出すまでもなく、82年からマンスフィールド駐日米大使は「日本が憲法などの制約にもとるような任務を負うような示唆はしていない。日本が東アジアで地域的な軍事役割を果たすことを期待していない」と言い続け、国防総省関係者も同様の言葉を繰り返すようになった。
 「憲法は改正しなければいかんと思うが、今の政治情勢ではとても変えられるものではない。第9条で言えば『自衛軍』なんだという解釈をはっきりさせるだけでもいいと思うが、それでも内閣が2つぐらいつぶれるでしょう」(堀江正夫自民党国防部会長代理)
 国民の憲法支持率は高く、いまや自衛隊員の大半は平和憲法しか知らない戦後派だ。よほどの国際情勢の変化がない限り、米国からの改憲圧力が再燃する状況にはない。米国のタカ派の動向をにらみつつ解釈改憲の実をとったともいえる改憲勢力の一部は、当面の照準を国家秘密法(スパイ防止法)制定に向けている。
 (本田優記者)


 
 
 
 
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