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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/05/01 朝日新聞朝刊
沖縄への巡幸 開く国民との距離(不惑の憲法:2)
 
 沖縄で「日の丸」を掲げ、生徒に「君が代」を歌わせる学校が、急にふえている。入学式の「日の丸」だけを見ても、一昨年の文部省調査では小、中学校とも6%台、高校はゼロだった。それが今年春には小、中学校とも98%に、高校では100%にはね上がっている。池田光男県教育長は「文部省の学習指導要領の周知徹底をはかっただけ」というが、この異常なまでのふえ方は、今年秋の「海邦国体」に天皇陛下が来県されるのに備えてのことだ。
 
○地元は複雑な表情
 しかし、ある町教委は「天皇が来県されるといって押しつけるのは反対だ」と、住民と話し合い「日の丸」を拒否した。「君が代」は、いまだに小、中学校で5%、高校で8%台を低迷している。「歌おうにも、先生の方が知らないのです。戦後、歌える状況でもなかったし・・・」と、県教組の福地昿昭副委員長はいう。
 さきの大戦で、市民まで戦闘に巻き込まれて多くの犠牲者を出し、戦後も長い占領統治、そして今なお米軍基地が多い沖縄が、初めて天皇を迎える表情は複雑だ。
 天皇にとっても沖縄訪問は、恒例の国体臨席にとどまらず特別の意味を持つ。戦後まもなく全国各地を回られた「戦後巡幸」の際、天皇は「戦争を防止出来ず、国民をこの災禍に陥らしめたのはまことに申し訳ない。この際、位を退くことも1つの責任の果たし方だろうが、私は親しい者を失った人、困っている人の所へ行って慰めてやり、働く人を励ましてやって、1日も早く日本を再興したい。そうすることが新憲法の精神に従った国民と皇室との関係を確立できるのではあるまいか」と、その志を側近に述べられた。この旅が果たされていないたった1つの県が沖縄だ。
 だが昭和50年、ひめゆりの塔に参拝した皇太子ご夫妻に火炎瓶が投げられるなど、戦争責任をめぐる問題へのわだかまりもあって、天皇を迎えることには反対の空気が強かった。「象徴天皇」40年にしてようやく、実現の機会が訪れたのである。
 
○権威強化の動きも
 新憲法が公布された昭和21年11月3日、皇居前広場は新憲法を祝う都民大会に集まった約10万の人びとで埋まった。天皇、皇后両陛下が式場正面に立たれると「万歳」を叫んで総立ちとなった人びとが式台に殺到、大会が終わっても両陛下の後を追った。「潮のような人波のなかに両陛下を乗せた御馬車がすっぽりとのみこまれ、広場を大きく回りながら二重橋へと流されていった」と、当時の「朝日新聞」は伝え、大群衆の中に埋まった陛下の写真をマル印で囲んでいる。
 「たしか両陛下がおそろいで出席されたのは、あの大会が初めてでした。新憲法で『男女同権』になったのだから、皇后さまにも出ていただいたわけです」と、当時の宮内次官加藤進さん。「あのころは、どこへ行かれてももみくちゃ」。もみくちゃの中に、多くの国民は「統治権の総攬者(そうらんしゃ)」から「国民統合の象徴」に変わった天皇をはだで感じた。この天皇と国民の距離の近さが、象徴天皇制の原点だった。
 今日、象徴天皇制は各種の世論調査で常に7、8割が支持している。「新憲法の中で9条(戦争放棄)などと比べて最も安定した部分」(佐藤功東海大教授)といわれるほどだ。だが最近は「天皇の権威強化の動きが目立ち、国民との距離がだんだん遠くなってきた」(横田耕一九州大教授)と指摘する向きも多い。
 
○40年の念願だが・・・
 天皇の出かけられるところ、警官の垣根が沿道の人波と向かい合って立つ。ビルから車列を見下ろさないよう窓のカーテンを閉めさせる。空にも警備のヘリコプター。皇居の門には鉄さくが作られ、近づく人びとを双眼鏡が追う。「過激派ゲリラ防止のため」と警備陣はいうが、天皇を権威づけ、国民との距離を遠のかせるばかりだ。
 天皇来県に備えて、過剰警備で人権が侵されたときの駆け込み寺として、沖縄では弁護士らが「皇害・人権110番」を準備中だ。再び沖縄で――。
 「象徴といわれても私たちとはなじみの薄い人ですよ」「皇軍の大元帥からどう変わられたのか。天皇といっしょに、地元県警の2倍とも3倍ともいわれる機動隊が本土から来るそうですが・・・」「なりふり構わぬ警察力で『沖縄の戦後が終わった』としても、天皇のイメージと県民の心に傷はつかないか」
 天皇は「念願の沖縄訪問が実現するならば、戦没者の霊を慰め、長年の県民の苦労をねぎらいたい」と述べておられる。40年を経た「国民統合の象徴」の真価が沖縄で問われようとしている。(岸田英夫編集委員)


 
 
 
 
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