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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1986/11/04 朝日新聞朝刊
中曽根首相の「仕事」(社説)
 
 中曽根首相はしばしば「仕事本位」という言葉を口にしてきた。
 4年前、初めて内閣を組織した時は「国民は仕事をやる内閣を待っていたと思う」と述べ、「仕事師内閣」と銘打った。今度、政権5年目を迎える際の感想は「1日1日を大事にして公約を実現していきたい」であった。
 政治家が「歴史に残る仕事をしたい」と願うのは当然であり、社会改革の推進力ともなる。問題はその仕事の質と内容である。国民一部の利益を図るものや、ひとりよがりのものであってはならない。一国の指導者が、功を焦って国政のカジ取りを誤るようなことがあれば、国民全体が迷惑する。
 わが国は事実上の保守1党支配が長期間続いているため、政治が変わるのは総理・総裁の個性、政治スタイルによることが小さくない。そうはいっても内政、外交ともに戦後政治の歴史のなかで築き上げられた大きな枠組みが存在するのもまた確かである。
 たとえば、最近の中曽根首相の憲法改正問題に関する姿勢には変化がうかがえる。米国占領下に制定されたことを、ことさらに言い立てて、憲法改正の理由とする「押し付け憲法」論では、現在の若い世代を説得できない、との感想をもらしたという。
 池田内閣以降、歴代の自民党政権は現行憲法の枠を守るなかで、それぞれの政策を実現するよう苦心してきた。改憲論者であることをかくさなかった中曽根首相は、その中では異質の存在であったが、政権担当の経験を重ねるうちに、現行憲法が国民の間に定着していることを、実感として分かってきたのであろうか。
 また、中曽根首相が実現しようとした「仕事」の1つに「靖国神社の公式参拝」があったが、これは中国、韓国などの抗議に配慮して、取りやめねばならなかった。防衛費の国民総生産(GNP)比1%枠の撤廃は自民党内からの反対もあって、実現しなかった。
 一方、内政面で中曽根首相が手がけている「仕事」は行財政、教育、税制などの一連の改革である。特に現在、国鉄改革は目に見えて進行している。中曽根首相が先の同日選挙の勝因にこれらの改革に取り組んだことを挙げ、「自民党は改革者の党だ」と自賛するのは、理由がないことではない。
 これら一連の改革はこれからの国民生活に長期的、根本的に影響を与える性格のものである。中曽根政権には、「長くても、あと1年」という制約があるが、これらの改革の重要性からみて、政権のタイムリミットに合わせて、無理な結論を急ぐようなことは避けた方がよい。
 中曽根政権は外交面の「仕事」でイメージアップして、支持率を上げる傾向があった。ところが、自民党が大勝した衆参同日選挙の後に飛び出した「藤尾発言」、首相自身の「知識水準発言」は国民に失望感を与えた。朝日新聞社調査の内閣支持率もかつての53%から42%に下がった。しかし、外交上の得点で、この失地を回復しようと焦るのは禁物である。とりわけ、対ソ交渉では足元を見られないよう注意すべきであろう。
 長期政権だった吉田首相、佐藤首相は、退陣の際さわやかな印象を与えなかった。政治的影響力の温存にこだわったからだ。
 今後、自民党内ではポスト中曽根の争いが本格化することになるが、中曽根首相は個人的な功名心などは捨てて国民本位の「仕事」に専念すべきだ。体操ではウルトラCの演技をしても、着地に失敗すれば、命取りになる。中曽根首相にとって、これから最も難しい「仕事」は乱れのない着地であろう。


 
 
 
 
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