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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/10/07 朝日新聞朝刊
自民党に求められる憲法感覚(社説)
 
 自民党は、「改憲政党であらねばならない」という呪縛(じゅばく)に、長い間とらわれていたのではないか。「結党30年」を機会に党の綱領、政綱など基本文書を再検討する政綱等改正委員会(井出一太郎委員長)が発足した時、金丸幹事長が「憲法改正はにしきのみ旗であり、降ろさない」とわざわざ発言したのも、その現れだった。
 だが、同委員会がまとめた「特別宣言・政策綱領」案では、結党以来うたわれてきた「現行憲法の自主的改正」の表現が消えた。若手議員を中心に呪縛からの解放を求める空気がようやく強まってきたからだろう。
 代わって用意された文言は「絶えず厳しく憲法を見直す努力を続ける」である。実は10年前、「結党20年」の際には「憲法見直し」の文言をめぐって、激しい党内論争があった。当時、自民党の若手議員であった河野洋平氏(現在は新自ク代表)が中心になってまとめた「新政綱草案」は「憲法を含め、選挙制度、行財政制度などの諸制度を見直し、改革に努力する」との表現であった。
 この時は党内右派の青嵐会グループなどが強く反対し、結局、「三木おろし」の政争も重なって新政綱制定は流産した。「憲法改正は立党以来の党是」とする主張は崩れなかったのである。
 今回も自主憲法期成議員同盟ら改憲派議員は巻き返しをねらっているが、当時とは自民党を取り巻く環境が大きく変わった。
 この10年間に4回あった総選挙のうち、3回は自民党公認候補の当選者が過半数を割った。一昨年12月の総選挙の結果、自民党は「護憲保守」の旗を掲げる新自クと連立して辛うじて政権を維持した。改憲論者を自認する中曽根首相でも「改憲を具体的な政治日程に取り上げることはない」と言明している。取り上げたくても、取り上げることができるような政治状況にないのだ。
 自民党議員の世代交代が進み、10年前には青嵐会の有力メンバーとして、党執行部を突き上げた渡辺美智雄氏がまとめ役にまわっている。新憲法感覚になじんだ若手議員が「古い衣」を脱ぎたくなっても、不思議ではない。時の流れであろう。
 現在の自民党内では、積極的な改憲推進派は声高ではあっても、実態としては多数派とはいえまい。保守合同の際に、「占領政策の是正」の名目で「現行憲法の自主的改正」をうたった意義は認めても「深甚なる敬意を込めて党史に収め」(特別宣言案)る必要を感じているのが、党内の大勢ではないか。
 改憲発議に必要な3分の2の国会議席を得られなかったことから見ても、国民は改憲政党としての自民党に政権をゆだねてきたのではない、といえる。逆に平和主義をはじめとする現行憲法の枠組みが政権党の暴走を抑止してきた事実を、自民党は素直に認めるべきだ。特別宣言案は現在の日本を「かつてない繁栄期を迎えつつある」とした。「繁栄」をもたらした平和憲法の役割についてこそ深く考えてほしい。
 「見直し」は「検討」「善処」と同種のあいまいな言葉である。歴代の自民党政権は、内閣としては「憲法順守」、党としては「自主的改正」という立場を使い分けて「解釈改憲」を強行してきた。「自主的改正」が「見直し」に変わっても、従来の憲法感覚が変わらないのであれば、せっかく「特別宣言・政策綱領」を制定する意義が薄れる。
 最高法規である憲法の理想、基本精神に照らして、現実政治を見直し、ひずみを正すこと。これが「結党30年」の自民党に求められる憲法感覚であろう。


 
 
 
 
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