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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/05/05 朝日新聞朝刊
憲法と自民党政権 「改憲」「尊重義務」の2面性(現代社会)
 
 ちょうど10年前の憲法記念日、1975年5月3日、当時の稲葉法相が自主憲法制定国民会議総会(議長、岸元首相)に出席、野党が国会で追及しました。稲葉法相は「法相の身分で出席したのではない」と釈明しましたが、「私は改憲論者、現行憲法は欠陥が多い」と発言しました。
 憲法第99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定めています。野党は「欠陥憲法」発言は、この「尊重擁護義務」に反すると硬化、問題はさらに深刻になりました。稲葉法相は「憲法記念日に憲法問題を考える集会に出ることは当然。現行憲法は民主憲法だから、自由活発に論議していい。一切論議をしてはいけないというのでは、改正手続きを定めた憲法第96条は無用になる。憲法を論じることと尊重擁護することは別だ」と反論しました。稲葉法相は、自民党の憲法調査会長を務めたこともあり、いわば「政治的信念」として「欠陥憲法」論を述べたわけです。
 野党は稲葉法相の罷免・辞任要求に踏み切り、2週間以上も国会は紛糾。当時の三木内閣は苦しい立場に追い込まれました。結局、5月21日の衆院本会議で三木首相が「(1)閣僚の地位の重さからして改憲集会出席は慎重さを欠いた(2)欠陥憲法発言は国の最高法規である憲法の重要性にかんがみ不適当で、はなはだ遺憾である(3)首相から稲葉法相に厳重注意し、法相も反省している(4)三木内閣は改憲しない方針であるから改憲運動のリーダーシップはとらない(5)現行憲法が高い理想を掲げて現実政治の向かうべき目標を設定していることはすぐれたものと思う」と発言。中止されていた内閣主催の憲法記念日行事を復活することを約束して、ようやく、事態を収拾しました。(政府行事は1976年だけ復活しました)。
 この「稲葉発言」問題は閣僚と憲法との関係が問題になった典型的なケースですが、1968年、佐藤内閣の時には倉石農相が辞任に追い込まれています。「倉石発言」は「他国の誠意と信義に信頼している憲法は他力本願だ。こんなばかばかしい憲法を持っている日本はメカケみたいなものだ」との趣旨でした。「稲葉発言」「倉石発言」に共通なのは、現行憲法を「軽視・侮辱」する気持ちが含まれているところです。
 1980年、鈴木内閣時には、奥野法相が「国民の間から自主的に憲法を作り直す考えが出てくるなら、好ましい」と発言、また国会で問題になりました。この時も鈴木首相が「鈴木内閣は憲法改正は全く考えていない。現行憲法を順守し擁護していく」と確認しました。しかし鈴木首相は「自民党としては自主憲法制定の努力をする」との方針も打ち出しました。
 現在の中曽根首相は、この「党と内閣の立場の使い分け」を踏襲、「現行憲法の自由と人権、平和主義、国際協調などの原則は評価、順守するが、いかなる法律、制度も完全ということはない。憲法も見直していくべきだ」との立場です。
 もともと自民党は1955年の保守合同の際に決めた党の「政綱」に「平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う」とうたっています。今年の党大会でも「現憲法の見直し」を決議しました。
 現実には改憲発議に必要な3分の2の国会議席(第96条)が得られる見通しがないため、中曽根首相も「改憲を具体的な政治日程に取り上げることはない」と言明していますが、自民党政権が「党としては改憲」「内閣としては尊重擁護義務」という2面性をつねに持っていることは否定できません。


 
 
 
 
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