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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1948/05/03 朝日新聞朝刊
日常のたゆみなき精進(社説)
 
 新憲法が施行されてから、今日でちようど一周年になつた。国会議事堂においても、街においても祝典が催されている。
 しかし、まず考えさせられ那ることは、この一周年のうちに、国際的にも、また国内的にも大きい変化のあつたことだ。さらに新憲法が公布された二十一年十一月三日当時の世界情勢、国内情勢と現在のそれとくらべると変化の激しさというか、歴史の●のきびしさに驚くほかはない。激しい変化の中に、新憲法施行の一周年を迎えたのだ。このような変化した環境の下において、われわれは、単なる憲法論でなく、もう一度日本国憲法のもつている大きい意義について、さらに深く、さらに新しく考えてみなければならない。もちろん新憲法は、過去の多分に封建的は要素をもつた体制からの解放であつたのであるから、その一周年は祝典には相違ないが、現実の情勢はだた祝典だけに終ることを許されない。封建的な体制からの解放は何を意味し、その解放が新憲法の中においてどのように語られているか、それをつかみとつて、われわれの生活の中にこれを●しつくさなければならない。
 憲法のめざすところを大きくいえば、社会の平和的発展と国民生活の安定とにある。そして新憲法である日本国憲法を貫く精神は憲法の前文に明かに表現されているように、「民主主義」と「平和」である。平和は単に日本の平和ばかりでなく、世界平和に目標を置くものである。
 このような新憲法の基礎的な性格を頭において、われわれはこの一周年に当つて、もう一度深く、新しく新憲法を考えてみなければならないし、またこの一周年の過程において、どのくらい新憲法の精神が、現実の中に生かされてきたかを厳しくかえりみなければならないのだ。
 政治、経済、文化など各分野の現実の姿を回顧した場合、不幸にして、この一年が民主々義的に大きい成長の年だつたとは言い切れない。たとえば、新憲法によつて国権の最高機関とされ権力の集中されている国会の現状はどうであろうか。新憲法の建前からいえば法案は、主として国会の方から出なければならないのであるが、現在の国会は満足な法案を自ら作る意志と能力さえなく、依然として行政技術に基礎を置いた官僚政治が横行しているではないか。そればかりでない。現在の国会の一部は、政治腐敗の点からいわば被告の立場にさえ立たされている。
 新憲法の歴史的な性格は、戦争放棄の規定だ。憲法が公布されたころは、この戦争放棄という問題は率直にいつて、一般的には一つの観念として受け取られた。しかし現在の情勢においては、それは最早や、単なる観念ではなくして、血と肉をもつた実感として、われわれに迫つており、また現実の問題として肉体的に考えられている。国家が自ら戦争を放棄すると宣言することは重大なことであり、大きい勇気を要するが、この宣言を最後まで貫くにはどうしたらよいであろうか。それは国民全体が、国内において戦争を考える一部のものの力を永久に根絶させる努力をつづけることだ、 この努力が完全に行われているであろうか。われわれはこのような点まで新憲法と結びつけて深く考えてみなければならないのだ。
 新憲法は、旧憲法にくらべて進歩的であり、普遍的な理想をもつているものだ。しかしわれわれは一九一九年に制定されたドイツのワイマール憲法の運命を考えてみなければならない。ワイマール憲法は、民主主義的な最高の理想をもつていたばかりでなく、社会主義的な理想さえその中にもつていたのだ。このワイマール憲法も一九三三年ナチスによつて死灰の中に埋められてしまつた。このことを深く反省してみなければならない。
 権力の移行の点から新憲法の制定は無血革命だといわれる。アメリカ革命、フランス革命の歴史をみても、新らしい憲法が生れる前に、革命のための血が流されている。日本においては無血のうちに革命が行われた。これは日本のために喜ぶベきことであつた。しかし、他面、民主主義革命のための闘争が日本人の側から十分に行われなかつた消息をもふくんでいる。連合軍の絶大の援助がなかつたならば革命は容易に成就しなかつたであろう。したがつて、日本全体からいうと民主々義の体得が足りず、足が地についていない危険性をもつているといえよう。この危険を防ぐためには、新憲法の精神と理想を国民のものとするために、民主主義革命の完成に向つての●的な日常平時のたゆみない闘争が必要なのだ。

(日本財団注:●は新聞紙面のマイクロフィルムの判読が不可能な文字、あるいは文章)

 
 
 
 
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