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1946/11/04 朝日新聞朝刊
新憲法の公布に際して(社説)
民主日本、平和日本を建設するための主柱ともいうべき、日本国憲法は、三日公布された。東京において、首相と貴衆両院議長が主催する公布式典と祝賀会をはじめとして、全国各地で、それぞれこの民主、平和憲法の誕生を記念するいろいろな催しが行われた。敗戦というきわめて大きな●が、はらわれたとはいえ一国の政治と社会に大変革をもたらす憲法が、このように平和のうちに生れたという事実は、たしかにこれを記念し、喜ぶに値するであろう。
時あたかも、東京裁判の審理は太平洋戦争突入のいきさつを明かにしようとする段階にさしかかっている。われわれは、この新憲法の誕生に当って、ここに再び敗戦の意義を考えるべきではないかと思う。連合国は、第二次世界大戦を民主主義防衛戦争だと意義づけている。ヨーロッパにおけるドイツ、東亜における日本は、民主主義の敵として、戦われそして敗れ去ったのである。この民主主義の敵として、敗れたという事実を、われわれは深く味わわなければなるまい。敗戦国のわれわれとしてはこの際民主主義を通じてのみ、生き得る道があるのだということは、認めなければならないのである。われわれはかかる民主国家実現のための道標として、新憲法に対するものである。
新憲法のさし示すものは、民主主義と、平和主義であるが、日本におけるこの両思想の基底は、必ずしも強いとはいえないものがある。日本国民は、世界各国民と等しく、個人の尊重、自由、平等を愛するものであるのに疑いはないが、その生活の実態は著るしくゆがめられていた。従って、今回の新憲法は国民の中に実在する思想や慣習を整理して、成文化したものというよりは、国民の向うべき道路を理想として高くかかげ、それによって規定された部分が多いといわなければならない。このことが、今後日本の民主化と、平和主義の実践を困難とする大きな要素となることを、われわれは心に銘じておかなければならないのである。
この困難を克服するには、制度や組織の民主化によって、生活の実態からする部面は、もちろん欠くことの出来ない重要性をもつが、同時に知性または理性によって、この二つの思想を理解して行く方法も採らなければならないと思う。そして、日本のような場合には、その方法の●は相当大きく評価されてよいのではなかろうか。新憲法の普及、理解促進の運動に際して、教育機関、言論その他文化機関のになう役割の重大さを特に指摘したいのである。
新憲法の法典は完成して、公布されたが、これは民主政治の出発であって完成ではない。立法の面からだけいっても、新憲法が必要とするいわゆる憲法付議の法案は、新たに制定するもの、大改正を要するものを合わせて、夥しい数にのぼっている。直接の効果からいえば、これらの法律が、民主政治の実体を形成するものというべく、その重要性は、決して憲法そのものに劣るものではない。われわれは憲法が出来たからといって安心することなく、今後議会で審議される法案に、多大の関心を寄せるべきであろう。
憲法は、国家の基本法であるから、しばしば改正することは、もとより望ましいことではないが、人民の福祉のために存在する法律である以上、恒に生命のあるものとしておかなければならない。それには、社会の進歩と共に憲法が歩みを進めることが大切である。例えば、新憲法が、●問題に触れることの少ないことは、必ずや遠からぬ将来において補強を要する問題であろう。慎重は要するが、憲法改正については、国民として不断の注意を怠らないよう心がけるべきである。
ともあれ、民主的、平和的な新憲法はここに公布され、明年五月三日から施行されるのである。そして、この憲法の要求する民主化と平和主義遂行の道は、決して平坦ではない。われわれは、国民大衆と共に新憲法の指向する方向を●ることなく前進したい。あらゆる困難を克服し、関苦に耐えて、民主主義革命遂行の成果を得たいと念願してやまないものである。新憲法公布の日に当って、あえてその決意と志を新たにする次第である。
(日本財団注:●は新聞紙面のマイクロフィルムの判読が不可能な文字、あるいは文章)
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