日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1946/03/08 朝日新聞朝刊
憲法草案と世界平和(社説)
 
 このたびの憲法改正政府草案は、従来、民間から発表されたいくつかの草案の民主主義精神を含むと共に、更にそれを●越えているとすら思われる。たとえば戦争放棄を規定した如き、世界各国の憲法に類例を見ない所であり、これを単に敗戦国としての現状肯定と見るのは浅い見方であって、マツクアーサー元帥のいわゆる「日本の将来の安全と生存権を世界の平和を愛好する諸国民の信頼と信義に任せる」という考え方は政治哲学的にも大きな問題に●れているといえよう。
 政府草案という限りにおいて、それは天降ともいえようが、上述の理由により、われわれはこの草案を以って、国民が論議研究するに足りる高い価値を持っていることを断言し得る。これは幣原内閣単独の力のよくなし得る所でなく、おそらく連合軍最高司令部、なかんづくアメリカの強力な助言が役立っているとみるべきである。この草案が世界各国にどのような反響を与えるかは、われわれの最も注目したい所である。戦争放棄を、単純に敗戦国としての現状肯定とみるか、乃至は、その中に世界平和への積極的意識を読み取るかが問題の岐れ目である。このことは、日本人にとっても、同様に重大である。なぜならば、この点についての深い考察を欠くならば、その結論は、敗戦国としての現状肯定という安易なあきらめに堕してしまうからである。かかる安易なあきらめは、人類の進歩向上という見地からすれば、明白に無価値であり、世界に寄与すべき何物を含まぬのである。
 しかし乍ら、日本が一方的に戦争放棄を憲法に規定しても、それだけで世界の平和が維持できぬことはゆうまでもない。従って、憲法にかかる条項を入れようとする以上は、日本人民として、世界平和維持に対する積極的発言が許されねばならぬのである。現在日本は連合軍の管理下にあり、政府当局としては、かかる発言はなお許さるべき時期ではないが、日本人民の声だけは、率直に世界各国民に伝えておきたいと思う。
 世界各国民が、如何に恒久的平和を希求しているかは、国際連合憲章に極めて明白に且つ強く表明されている。然るに世界の現状はどうであろうか。平和を脅かすような事象が、なお余りにも多く存在しているのではなかろうか。かかる疑問は、おそらく各国民がひとしく発っせざるを得ない疑問であると思う。なかんづくソ連に対する米、英の関係は、各国民が危惧してやまぬ所である。
 われわれは、米英ソ三国の関係が、紛争の形をとらず、あくまでも論議をつくした上での、合理的解決に向かうべきことを第一に希望する。国際連合が健全に発展し、その内容と任務とがいよいよ充実したものになるかならぬかは、米英ソ三国の協力にかかる所多いからである。
 この意味で、たとえそれが「個人的資格」で発言されたにもせよチャーチル氏が英語国民の反ソ的同盟を提唱するような演説を試みたことは、一つの行過ぎとして、われわれの同意し得ない所であり、アメリカの国会議員にこの演説が不評であったことも肯づけるのである。
 米英ソの現在の紛争は、論議をつくせば、過渡的な落着点を発見することは決して困難ではない筈である。過渡的落着であっても、世界平和にとって十分な意義を持つことは、それが、誕生したばかりの国際連合に成長の時間をいささかでも与えるからである。生れたばかりの子供は弱い。これを成長させて思慮分別ある青年に育て上げねばならぬ。国際連合がこのような青年になれば、どんなに激しい国と国との論争も、この青年を●すことなく、寧ろそれは青年の頭脳をより充実したものとするに役立つであろう。
 しかし、恒久的世界平和を確立するためには、過渡的な落着点を越えて、より根本的な問題に当面せねばならぬ。一切の「イズム」を離れて、これを人類の平和と繁栄の問題として抽象するならば「完全雇用」の実現する如き世界を作り上げることである。経済恐慌のない世界、失業のない世界、過剰資源も、過剰滞貨も生ぜざる世界、生産力の無限の向上が社会の無限の向上に全く矛盾なしに照応する世界、戦争の無い世界、かくの如きものが「完全雇用」の世界である。
 この問題は、ソ連以外の国々において特に重大な意義を持つ。ソ連は既にソ連方式によりこれを解決しているからである。アメリカはアメリカの立場から、この問題に対する理論的解決をせまられている。これは、「イズム」の問題でなく、人類が当面している理論的、科学的な問題である。理性と勇気とに富むアメリカの任務は重大である。同時にこれは、青年期に達した時の国際連合の任務である。

(日本財団注:●は新聞紙面のマイクロフィルムの判読が不可能な文字、あるいは文章)

 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
27位
(29,244成果物中)

成果物アクセス数
274,563

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年12月9日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から