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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1946/02/03 朝日新聞朝刊
憲法改正の手続を質す(社説)
 
 政府は憲法改正原案の作成を、非常に急いでいるようである。そして勅令による議会提出を、どうしても現内閣の手で行いたい、強い希望を持しているかの如く見える。政府が憲法改正の問題を採り上げ、その試案を作成するまでの手続を現内閣が行うことに、敢えて異議を差し挟むものではない。しかし、議会提出の手続までが、現内閣の職責であるとは諒解し難い。現政府は周知の通り、凡ゆる施策に当たって反動性を暴露し、国民大衆の信頼を失っているのであるが、不幸にして対抗勢力の政治的結成を見るに至らず、全く●むを得ざる事情に依って、命脈を保っている形であるに過ぎないのである。かかる現内閣が、再生日本の民主化の基本法である憲法の改正の如き重大問題の原案提出者たるに、適格であるか、どうかは自明であると思う。このことは現在の政治情勢の下にあっては勿論であるが、現内閣を支配していると思われる従来の政治道徳に照らしてもいい得ることで、国民の全き信頼を握っていないものが、勅命をもって議会に提出する憲法改正法案を、どうして敢えて●し得るのであろうか。これで所謂●の責に任ずる自信を持ち得るのであるか。
 政府は本月中に政府原案を決定し三月早々憲法改正審議会に諮議するという。その時期は恰も選挙運動の期間と重なり合うので、果たして十分にして慎重なる審議を尽くすのに、好適なる時機であるとはいえない。松本国務相は、審議会の審議と併行して選挙題目として国民に論議して貰うのが民主的方法だ、といっているが、論議するだけで、その結果が改正案に反映しないのでは、何のために論議するのだか判らない。我等の考えるところでは、現内閣は総選挙前に改正案の試案を公表し、総選挙の結果を見てそれに依り、時の政府が改正原案を作成し、更に憲法改正審議会に付議するというのが、最も妥当なる順序ではないかと思う。
 政府が現在の方法を強行する場合は、選挙前に憲法改正審議会が設●されるわけであるが、現内閣の性格から推して、その構成と運営が、国民の意に副うような、民主的なものとなり得るか、大いに疑問とせざるを得ない。我等が既に指摘したように、政府の作る委員会の多くは最初から政府原案が成立するように仕組まれるのが、従来の実例である。我等は今回の憲法改正委員をしてこの轍を踏ませないために、予め政府に警告をしておくとともに、国民に対しても厳重なる監視を要請するものである。
 そのためには、憲法改正問題が単なる法律問題としては勿論、議会政治乃至は狭義の政治問題として取扱われてはならないので、国民の国家生活全体の問題として理解され、その意味における広汎なる層からの委員の選好が要請される。また運営に当って特に注意したいことは、少数意見の取扱い方である。従来この種の委員会において、少数意見は殆ど無視され、国民の多数は決定案のみを押付けられていた。かかる在り方は憲法改正問題の如き重要事業に対しては、決して許されてはならない。政府は必ず少数意見をも共に発表すべきである。
 憲法は国民の生活の実態を支配する国家の基本法であるから、その改正は単なる法律問題ではない。我国は敗戦の結果、国民生活は凡ゆる部面において根底から揺り動かされ、正に激動期にある。勿論大なる方向としては民主的日本の再建に決定されているが、個々の部門における反動勢力は、今だ清掃されるに至らず、最近は現内閣の施策と相俟って寧ろ防御的攻勢に出づる兆さえ見えるのである。各部門の民主化が完成とまではいえないにしても、一応の安定を得た後にそれ等を総合し、それを基盤とした上に上層建築としての、改正憲法の制定が可能であるとするのが国民多数の意見ではなかろうか。少なくとも総選挙も終らない前に政府案の決定を押付けようとする方法の如きは承服出来ることではない。憲法が不磨の法典でないことは、今日既に実証されたとはいえ、国家の基本法はそう短期間に度々改正せらるべきものであってはならないことは当然であるから十分に慎重に取扱われる必要がある。それには現内閣が現に採らんとしている方法は、決して妥当とはいえないと信ずるものである。

(日本財団注:●は新聞紙面のマイクロフィルムの判読が不可能な文字、あるいは文章)

 
 
 
 
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