日本財団 図書館


身体障害者の小型船舶操縦士へのチャレンジ
「自由な海があった」
日本財団・六分儀より
服部一弘さん
 
 服部さんは、横浜市在住の39歳。2000年障害のある身で、北米一周ツーリングにでかけ、帰国後NPO法人ANIMI(アニミ)を設立し、代表に就任。現在15名の仲間とIT講習会、福祉講座、住宅リフォームの相談、行政と協働した街づくりなどの事業を手掛ける。今年4月にみなと未来(44街区)にて、インターネットカフェを立ち上げ、「作業所で働く障害者には更に社会性を身につけてもらい」また一般の人には、「障害者の働く姿を理解してもらえる」よう、社会のバリアフリーをめざす。(ちなみにANIMIは、エスペラント語で「魂を注ぐ」という意味とのこと。)
 以下は、服部さんの報告である。
 
 ぐーっと、体が後ろに押され、上下に揺さぶられるのを胸から上でこらえた。船首に見え隠れしながら浮いていた防波堤が波間に吸い込まれて青空に変わり、視界から消える。アクセルを少し戻し、加速を終えると防波堤が帰ってきた。
 「左45度に転進」エンジンと波の音を切って、日に焼けた、いかにも海の男といった指導者の強く、はっきりした声が響く。「後方よし、左方よし、左転舵します」一つ一つ確かめながら舵を切る。船体が大きく左に傾く。体のバランスを首とアクセルを持つ手でとりながら、遠く陸の目印を追う。
 
教官より説明を受ける受講生
 
 潮のかおりが、ほのかに漂う風が少し緊張した頬を心地よく冷やす。ゆっくりとしたピッチングとローリングを繰り返しながら船が停まる。振り返ると船が二つに分けた海が、白い波とともに一つになっていった。「おもしろい、試験に合格して、海に出たい」と思った。
 鎌倉生まれで、気管支があまり調子よくなく、潮風をもらうため、毎日のように海を見に連れていってもらった。横浜に住まいは移ったが、中学、高校とも鎌倉にある学校に通った。16歳の時にバイクの免許を取ってからは、湘南海岸を横目で見ながら走ることは多かったが、そこに行くことは、ほとんどなかった。体の一部というか人生の一部になっていたバイクで事故に遭い、下半身が麻痺して車いすを使う生活になってからは、ますます海との接点がなくなっていた。
 限られてしまったように見えた、白分自身に、また、見られている自分たちが、くやしかった。今までやれていたことが、やれないわけはない。「勇気と情熱をもてば、何でもできる」と、いつの間にか、できてしまった壁に少しでも穴を開けたくて、チャレンジする気持ちを形にした。14年の時を越えて、中断している北米大陸一周ツーリングを3輪バイクで単独走破した。
 それから2年後、いろいろなことに挑戦してきたが、今までの挑戦は歩いているときに、すでに経験していたことを形を変えて、実行していたのだが、今回は少し違う。車いすを使っている人にも、船の免許を取得する機会が与えられ、これに挑戦することになった。歩いているときには体験したことがない、初めてのことだ。
 学科の勉強は、まるっきり知らないことを一から勉強するので、とても楽しく勉強できたのだが、堅くなってしまっている頭に刷り込むのは並大抵の事ではなく、苦労をした。いや苦労をしたのは笑いを交えながら、一生懸命教えてくれた、先生の方だったのかもしれない。いよいよ、試験日を迎えた。学生の頃と、ちっとも変わらないで、試験の直前まで教科書を見ている自分が、おかしかった。どきどきしながら学科試験の合否の連絡を待った。マリンスポーツ財団から合格の連絡がはいる。合格だ。いよいよ実技の練習に入った。
 
船内移動用マット
 
岬と灯台―佐田岬灯台(さだみさきとうだい)
 
所在地 愛媛県西宇和郡三崎町
北緯 33度20分23秒
東経 132度1分3秒
塗色及び構造 白色・塔形(コンクリート造)
灯質 群閃白光 毎20秒に3閃光
光度 46万カンデラ
光達距離 19海里(約35km)
高さ 地上から頂部 18m 水面上から灯火 49m
初点灯 大正7年4月1日
 
四国の最西端で九州を望む
 
 佐田岬半島は、俗に「岬13里」といわれ、全長約50km、幅の最大6.2km最小0.8kmの半島である。海岸線はリアス式海岸の断崖が続き、奇岩奇石が多く風光明媚な景色が随所にみられる。
 灯台は、四国から九州を指さしたように細長く突出た半島の突端、四国の最西端に位置する。南は宇和海、北は瀬戸内海、見下ろせば、古くから海の難所として知られ、鳴門海峡に匹敵する速吸瀬戸の激しい潮流が渦巻き、この地方では碆(はや・はえ)と呼ばれる岩礁(黄金碆)が波間に見え隠れしている。
 灯台の東、椿山は絶好の展望地。夏には貝や海藻を採る海士の姿、豊予海峡を横切る大型船、海峡を隔てて九州佐賀関の高さ200mの大煙突を間近にし、九州の山並み、南には、海賊の首領、藤原純友の島、日振島まで望める。
 灯台真下には、豊予要塞の砲台跡の洞窟が残る。佐田岬要塞工事には地元住民も従事し、伽藍山監視所跡でも地元有志による防空監視が行われていた。戦時中は要塞地帯として、灯台の周辺は一般の立入りが禁じられていたが、今では三崎町の観光シンボルとして親しまれている。
 四国最西端の町、三崎町は温暖な気候に恵まれ、清美タンゴール、いよかん、新甘夏の日本でも有数の名産地。周囲を絶好の漁場に囲まれ、一本釣りにこだわり大切に釣り上げられる岬アジ、岬サバ。多種多様の魚介類が水揚げされる。
 
【アクセス】
■鉄道・バス等
●三崎町〜灯台行き(乗合タクシー)35分〜徒歩約2km 約30分
三崎町まで
●JR予讃線八幡浜駅〜三崎(バス)約1時間
●別府港〜三崎(フェリー)2時間10分
●佐賀関〜三崎(フェリー)1時間10分
■自動車
●八幡浜〜国道197号(佐田岬メロディーライン)三崎町約40分約42km〜県道約30分約14km
 
事務局だより
協会活動に新企画
「ナビゲーション講習会」
 
 平成15年度より教育活動に新しく「ナビゲーション講習会」を企画し組み入れていきます。
 この講習会は、ボート免許の取得後の安全運航を身につける目的で実施するものです。
(内容)
 午前(実習)
■チャートワークによる航海計画の作成
■ロープワークと係船実習
 午後
■機関の点検
■操船実習
(受講対象者)
ボート免許取得者または免許取得予定者
(開講時期)
平成15年6月及び7月の土、日曜日
(講習予定会場)
兵庫県(姫路、神戸)木場ヨットハーバー
大阪府(貝塚)二色ヨットハーバー
(参加人数)
各回10名
(参加費用(予定))
参千円・昼食及び資料代
※お申込方法・具体的な日時等決定次第お知らせします。
 受講ご希望の方は、募集人数が限られていますので、お早めに当協会までお問合せお申込みをしてください。
 
“放置艇を追放しよう”
 マリンレジャーが普及してプレジャーボートの隻数が年々増加してきたが、プレジャーボートの保管スペースが増加隻数に追いつかず、港湾、漁港、河川にプレジャーボートの多くが係留され、その隻数も約250,000隻となり、違法駐車、ゴミ、トイレ、環境問題や美観上の問題、災害(増水等)時の二次災害など多くの問題がおきてきて、今や社会問題となってきました。
 更にプレジャーボートの海難事故原因の第1位である「機関故障」が放置艇によるものであることが調査の結果判明しました。
 当協会の活動目標である“海難事故防止”の観点からも、“放置艇”問題に積極的に取り組んでいくこととなりました。
 放置艇問題解決のため保管係留場所を設置している自治体と連絡を密にして、放置艇問題を解決するために側面から協力をし、また会員の皆さんからのご意見もとり入れて積極的な活動をしてまいります。
 
〔放置艇調査結果〕
平成8年の運輸省港湾局、水産庁、建設省河川局の3省庁により実施されたプレジャーボート係留保管対策合同調査の結果を都道府県別で表1.8−1に示す。
 これから、平成8年の全国の放置艇は138,194隻で、それはプレジャーボート総隻数の約66.6%であることが分かる。
 都道府県別にみてみると、最も放置艇の隻数が多いのは広島県で17,066隻(89.2%)、次いで静岡県の9,231隻(74.4%)岡山県の8,132隻(68.5%)、長崎県の7,085隻(61.1%)、兵庫県の6,786隻(67.2%)の順であることが分かる。
 一方、放置艇隻数を総隻数で割って求めた放置艇率が最も低いのは、山梨県で約6.9%、次いで滋賀県の約28.2%、北海道の約31.0%、大阪府の約33.2%、沖縄県の約33.7%であることが分かる。
 次に、同3省庁により平成8年以来6年ぶりに実施された放置艇の全国実態調査結果によると、平成14年の全国の放置艇は約13.8万隻で、総隻数の約55%であることが分かる。
 河川における保管については、放置艇が平成8年は約80%であったものが、平成14年は約61%に減少した。漁港における保管についても、放置艇が平成8年は約83%であったものが、平成14年は約55%に減少した。
 
 
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