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(2)廃船対策の推進
 海上保安庁は、毎年、約千隻の廃船の不法投棄を確認していますが、その約7割弱を占めるFRP船については、数年後には毎年一万隻を超える廃船が発生するとの予測もあります。
 FRP船の処理については、技術的にも施設的にも解決すべき多くの問題がありますが、問題をかかえたまま、廃船は更に増加し、また不法投棄が増加することが懸念されています。廃船については、自動車のような処理体系が未確立、マリーナ等の保管施設が不十分、FRP船体の再資源化技術等が未開発、さらに制度上の問題など多くの問題があり、これらの種々の問題が原因となった悪循環により廃船の不法投棄が後をたたない状況となっています。
 廃船所有者に対して効果的な指導を実施するためには、廃船の所有者を知る手がかりとなる船舶検査済票の番号や船名等の文字を読みとることが必要となります。しかし、船舶検査済票を故意に剥がしたり船名を消したりすることにより、所有者の割り出しが困難な場合が少なくありません。こうした場合であっても所有者の割り出しができるようにするため、海上保安庁では、科学的に文字を判読する技術の開発を検討しています。この所有者割り出し手法により早期に廃船所有者を割り出し、所有者に対する指導を強化することで、廃船の適正処理の促進に寄与することとしています。
(3)廃棄物対策への新たな取組み
 廃棄物の最終処分場のひっ迫や家電リサイクル法の施行等により、廃棄物の海洋への不法投棄の増加が危惧される中、海上保安庁では巡視船艇・航空機を効果的に使い、廃棄物の不法投棄事犯の取締りを実施しています。しかし、干潮時においても海面下となるような場所に廃棄物が不法投棄された場合、発見が困難であり、潜在化することが少なからずありました。そのため、こうした潜在化した廃棄物の不法投棄事犯をこれまで以上に積極的に探し出し、廃棄物の不法投棄事犯を根絶するために、平成12年度末に水中テレビカメラシステムを導入し、効果的な監視取締りを実施しています。
(4)「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づく監視取締り
 平成12年1月に施行された同法に対応し、従来から実施している汚水排出の監視取締りに加え、今後はダイオキシン類による海洋汚染の監視取締りを行います。
 平成13年に実施した規制対象施設からの排水調査の結果、基準値を超えるダイオキシン類を含む排水を排出している施設はありませんでした。平成14年においては、引き続き規制対象施設からの排水調査を実施し、ダイオキシン類による海洋汚染の防止に努めていきます。
 
コラム 学校紹介
〜秋田県の海洋環境保全協力校〜
 海上保安庁では海洋環境保全思想の普及活動に努めています。特に次世代を担う子供たちに海をきれいにする気持ちを持ってもらうための活動を強力に推進しています。
 近頃は学校からの団体参加による活動も増えており、その一例として、秋田県の次の2校の例を紹介します。
 
秋田県秋田市立土崎小学校
 土崎小学校は学校挙げて図画コンクールに参加し、また海上保安庁が海洋環境保全推進週間に開催した環境教室に参加してくださいました。
 
秋田県男鹿市立北陽小学校
 北陽小学校は海洋環境保全推進週間に開催した漂着ゴミ分類調査に参加してくださいました。
 
 この2校は、秋田海上保安部からそれぞれ「海洋環境保全協力校」として指定され、児重への環境保全思想の普及に大きく貢献しています。
 
(3)地域に根ざした取組み
(1)沖縄県環境美化(ポイ捨て)条例
 −漂着ゴミとの大いなる闘い−
 沖縄県においては、市民、経済団体等からの強い要望を受けて、「沖縄県環境美化(ポイ捨て)条例」の制定に向けた動きが活発になり、平成14年2月から開催された県議会において、成立しました。
 同条例では、海洋観光立県という沖縄の特性を踏まえて、陸上からのゴミなどが周りの海や海岸を汚している実態をよく知る第十一管区海上保安本部(那覇市)による、同条例の適用範囲を陸域のみならず沿岸海域にも広げるべきという主張を反映しており、全国でも例をみない海岸への漂着ゴミにも対応する条例となります。
 同条例は、平成14年7月から施行される予定ですが、今後第十一管区海上保安本部としては、関係行政機関や環境保全ボランティア団体と連携を図り、海洋環境保全活動をさらに推進していきます。
(2)若松海岸探偵団
 「若松海岸探偵団」は、若松海上保安部の呼びかけにより、同保安部とNPO法人によって平成13年5月に発足しました。この探偵団は、郷土の自然を参加者自身の五感で感じ、「海の環境」について考えていくものです。
 海岸探偵団は、毎月一回地元海岸を清掃する他に、韓国、中国などから流れ着く工業製品やペットボトルなどの日用品、流木などを集め、集められた漂着物の一部をスーツケースに入れ「トランクミュージアム」として、また、造形を施しごみのアートとして展示するなど環境保全に対する啓蒙活動を行っています。
 
平成13年11月に行われた「若松海岸探偵団による響灘海岸クリーンアップ大作戦」の様子
 
コラム 図面コンクール入賞者紹介
〜未来に残そう青い海〜
 海上保安庁では、平成13年に(財)海上保安協会の協力を得て、海洋環境保全推進週間にあわせ、全国の小中学生を対象とした「第2回未来に残そう青い海・図画コンクール」を行いました。作品の応募期間は6月1日から9月30日までの3ヶ月間でした。
 今回は第1回の3倍以上となる13,186点の応募があり、小学生の部及び中学生の部それぞれにおいて、海上保安庁長官賞1点、海上保安協会会長賞1点、佳作5点が選ばれました。
 この図画コンクールは平成15年も同様の時期に行う予定です。
 このコンクールによって児童、生徒のみなさんに直接海洋環境の重要性を理解していただき海洋環境保全思想が少しでも普及できればと考えています。
 
海上保安庁長官賞
 
小学生の部
 
中学生の部
 
海上保安協会会長賞
 
小学生の部
 
中学生の部
 







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