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しおかぜ57号 平成15年新春 発行
しおかぜ Shiokaze
発行所 社団法人
関西小型船安全協会
発行人 山村 彰
神戸市中央区栄町通3−3−5(河西ビル)
〒650−0023
TEL 078−391−7223
FAX 078−391−7223
晴姿・初富士
 
想うこと
美しい海を後世へ
 
 最近、ボランティア活動という言葉をよく耳にする。
 忘れもしないあの一九九五年初頭の阪神・淡路大震災が契機となり、広範で多様に展開されたボランティア活動のうねりは、「ボランティア元年」という言葉を生み出した。
 以来、わが国でも団体・個人を問わず、自主的な善意の活動が活発化し、その気運は急速に広まってきた。
 「非営利・無償で世のため、人のためにささやかなお手伝い」がニュースとなり、殺伐な話題の多い中で人の心をなごませる。
 わが海の仲間の善意の行動も大きな話題となった。
 “美しい海を残し後世へ伝えよう”を合言葉に、昨夏、串本海上保安署と串本愛舟会の官民が協力して海岸の漂流ゴミを10トン余りも回収したが、善意で集まって汗を流した人たちは350人にも達したという。
 他所で同様の事例も多いと思うが、海洋環境を含めて、あらゆる事物への思いやりの心は、操船時の海難防止、航行安全にもつながるのではなかろうか。
 
年頭にあたって
社団法人 関西小型船安全協会
会長 山村 彰
 
 平成十五年の新春にあたり、会員の皆様ならびに第五管区海上保安本部の方々におかれましては、すこやかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。
 日頃はマリンレジャーボートの安全活動にご協力とご指導をいただき、心からお礼申し上げ深く敬意を表す次第であります。
 さて、このところ経済は低迷し長引く不況が続いていますが、マリンレジャーの中で特に若年層に人気のある水上オートバイの普及は急速に伸びています。
 しかし、その反面残念なことに海難事故は毎年に増え続けています。
 今年こそ、さらなる安全意識の普及活動を強力に推し進め、事故防止に全力を傾注したいと考えています。
 昨年は皆様方のご尽力により当協会の新しいメンバーを多数迎えることが出来ました。協会メンバーの皆様方の安全で事故のないマリンレジャーを楽しんでいただくことは当然のこと、メンバー以外の方々の安全についても救命ジャケットの着用や単独行動をとらないようにする、また緊急時の連絡に携帯電話による一一八番の活用など海上安全講習会を通じご指導をお願い申し上げます。
 海上保安本部では「マリンレジャー安全推進室」を設け、我々の活動を支援していただいております。
 出港、入港等の届けが管理されるようになれば、より一層の安全が確立されるのではないかと考えます。
 最後に会員皆様のご健勝と海上保安本部の皆様方のご活躍を祈念し、新年のご挨拶といたします。
 
新年のご挨拶
第五管区海上保安本部
本部長 伊藤 隆
 
 新年明けましておめでとうございます。
 平成十五年の初春を迎え、関西小型船安全協会会長をはじめ、会員の皆様方に謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 平素から海上保安業務に深いご理解とご協力をいただくとともに、プレジャーボート等小型船舶に対する海上安全指導をはじめ秩序ある海洋レジャーの普及と発展に寄与されています皆様のご苦労に対しまして、深く敬意を表する次第であります。
 さて、長引く経済不況の中ではありますが、マリンレジャーは広く国民に定着し、特に若者を中心とした水上オートバイの普及は年々増加傾向にあり、ゴールデンウイークや夏期のマリンレジャー期間中には、多数のモーターボートや水上オートバイ等が海上を遊走しております。
 これに対し、マリンレジャーによる海難や人身事故も年々増加している状況にあります。
 昨年の事故を振り返りますと、海難種類では衝突、乗揚、機関故障が、海難原因では見張り不十分や機関取扱い不注意など人為的なミスに起因するものが、それぞれ大半を占めております。特に、夏場を中心に事故が多発し、水上オートバイが見張り不十分等により衡突し、負傷者が発生しているほか、モーターボートが安全の確認を怠り、海中に転落した乗船者をスクリューで巻き込み死傷させた事故やモーターボート、水上オートバイが無謀運航により遊泳者を巻き込み負傷させた事故も発生しております。
 また、本年6月に小型船舶操縦士制度の法体系(「船舶職員法」)が改正され、「船舶職員及び小型船舶操縦者法」として施行が予定されていることから、施行後は免許の取得が容易になり小型船舶操縦者の増加が予想されるため、マリンレジャー活動がますます活発になるものと思われます。
 このような中、事故の発生を未然に防止するためには、海難防止の思想、必要とされる運航技能の保持及び運航マナー等の普及・高揚が必要不可欠であり、この点、海上安全指導等の諸活動により、秩序あるマリンレジャーの普及と発展に寄与されている、貴協会の果たす役割は極めて重要で、今後の活動が大いに期待されるところであります。
 第五管区海上保安本部といたしましても、各種の海難防止活動の機会をとらえ、マリンレジャーに係る安全対策について積極的に取り組んでいるところでありますが、事故防止に実効性を期すためには、海上安全指導員や安全パトロール艇との協力が不可欠であり、今後とも貴協会と密接な関係を保ちながら、各種訓練や巡視船艇との合同パトロール等を積極的に実施して実効を期したいと考えておりますので、会員の皆様方の一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。
 最後に、貴協会のますますのご発展と会員皆様方のご健勝・ご安航を祈念申し上げまして、新年の挨拶とさせていただきます。
 
命を守るライフジャケット
海上保安庁警備救難課
 
●はじめに
 海上保安庁では、第七次交通安全基本計画に基づき船舶海難および船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数を平成十七年までに、年間二〇〇人以下(平成十三年は三二〇人)とするため、さまざまな施策を実施しているところです。
 ここでは小型漁船・プレジャーボート等から海中転落による事故の発生状況とライフジャケットの有効性および海中転落した場合の対応を紹介します。
 
●海中転落事故
 平成十三年に発生した海中転落者数は、小型漁船一〇六人、プレジャーボート等五八人で、うち、死亡・行方不明者数は小型漁船七五人(七一%)、プレジャーボート等二九人(五〇%)であり、海中転落により死亡・行方不明となる場合は非常に高いものがあります。
 また、平成九年から平成十三年までも海中転落者数と死亡・行方不明者数の状況は図1のとおりで、毎年、海中転落により一〇〇人前後の方が死亡・行方不明となっています。
 
●ライフジャケットの有効性
 平成八年から平成十二年までの調査では、着用・未着用による生存率は、未着用者一九%、着用者七七%となっています。(図2)
 また、平成十三年における海中転落した乗船者の場合、小型漁船が、着用者四人、未着用者一〇二人、プレジャーボート等は、着用者八人、未着用者五〇人であり、これらの着用率を見ると、小型漁船四%、プレジャーボート等一四%と非常に低い結果となっています。
 最近発生した事例(事例(1)、(2))を見てもライフジャケット着用の有効性は明らかです。死亡・行方不明者数を減少させるため、海上保安庁では平成十七年度までに着用率五〇%以上の達成を目指しています。
 
●海中転落に備えて
 海中転落した場合には、まず、海上に浮いていることが重要であり、ライフジャケットを着用しておけば簡単に浮くことができ、転落によるパニックや、体力の消耗を防ぐこともできます。
 また、救助機関へ速やかに通報し、迅速な救助活動につなげるためには、通信手段を確保しておくことも重要です。
 このことから海上保安庁では「大切な命を自分で守るために」をテーマに
(1)ライフジャケットの着用
(2)携帯電話の携行(防水パックの利用)
(3)118番の有効活用
の三つを基本とする自己救命策確保キャンペーンをマリンレジャー安全推進旬間や海難防止強調運動等あらゆる機会をとらえ積極的に展開しています。
 
●事例
(1)遊漁船が磯波を受けて転覆、乗組員全員が海に投げ出され、ライフジャケットを着用していた二人とクーラーボックスにつかまっていた一人のみが救助され、未着用者七人全員が死亡した。
(2)平成十三年十一月、遊漁を行っていたプレジャーボートが浸水転覆し四人が海に投げ出されたが、全員ライフジャケットを着用しており、かつ、乗組員が防水携帯電話を所持していたことから、この電話で救助機関に通報し、当庁巡視艇に全員無事救助された。
 
(拡大画面:53KB)
 
小型漁船・プレジャーボート等の海中転落と死亡・行方不明者状況







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