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2. 研修成果
 本コースは、第3回目の研修であり、11カ国17名の研修員が来日した。
日本語集中講座については、JICEによって合計100時間実施された。研修員は、全員初めて日本語を学ぶということで、非常に関心が高く、毎日5時間の集中講座を熱心に受講した。しかし、学んだことを積極的に使って話し掛ける研修員は少なかったが、当センターのスタッフのほうから話し掛け、会話練習する機会を設けた。
 この集中講座の後、実習に備えてもっと日本語を続けて学びたいという研修員の希望によりボランティア講師にお願いし、6月6日から8月29日まで週2回、日本語の補講を実施した。最後まで参加した研修員は8名だけであったが、彼らは、実習先でも出来るだけ日本語を活用し、コミュニケーションを図った様子である。
 技術講座については、講義・演習によりIMO関連条約の内容と解釈及び船舶安全検査の意味と要領を習得してもらうことを到達目標としており、専門の講師にSOLAS、MARPOL、ILLC、Tonnage、COLREG等の諸要件、図面審査・船舶検査の方法を詳細に説明してもらった。今回の研修員は、船舶検査官は半数であり、後は講師、機械技師、港湾管理者等で、予備知識と興味に相違が多くみられ、何人かの講師はその対応に苦労された。また、専門内容の習得度は各研修員により異なるが、すべて船舶検査業務に直接関係があり、帰国後に役に立つ講義科目であるので、全般的には、大半の研修員が満足した様子である。そして、講義期間中の研修旅行と日帰り見学においては、内部講師が講義と関連ある現場を案内したので、研修員に大変好評であった。
 現場実習については、2名ずつのグループに分け、各グループがそれぞれ2ヶ所の地方運輸局で船舶検査及びポートステートコントロール(PSC)の実習を行った。実習先運輸局を決めるにあたっては、昨年同様、各運輸局の検査業務状況、研修員の母国での仕事の内容、取扱い船舶等を考慮して、国土交通省の指導を受けて決定した。地方運輸局によって検査及びPSCの対象となる船舶、機器等の種類等はまちまちであったが、2ヶ所の運輸局で実習を受けることにより、各研修員は多くの種類の船舶、機器等について学ぶことが出来た。各局とも本来業務で多忙中にもかかわらず、造船所、舶用機械工場あるいは入港外国船において現場検査の指導をしていただいた。その結果、研修員は、非常にきめ細かい指導が受けられ、実務知識を多く得ることができたと思われる。
 スタディレポートについては、研修開始直後に研修指導者がガイダンスを行い、各研修員に自由に研究テーマを決めてもらうよう指導した。そして、講義期間中に資料収集を助け、技術的な助言を与えるだけでなく、実習期間中にも実習先に赴いて指導した。研究テーマがなかなか決まらない研修員、レポートを何回も書き直す研修員もいたが、最終的には、全員レポートを完成し、実習終了後のレポートの発表・討論では、各研修員が自分の研究成果をパソコンとプロジェクターを使って発表した。各研修員のレポートは全員分を纏めてCDにコピーして研修員に配布した。
 コース全体としては、ほとんど全員の研修員が、研修内容、期間ともに適当で、大変有益であったと評価しているところから判断して、研修成果は大いに挙がったものと考えられる。
 今回の研修員は、全般的に静かでおとなしく協力的であり、個人的な要望を強く主張する研修員はあまりいなかった。
 健康面では、来日直後のJICA健康診断の結果、特に治療を要する研修員はいなかったが、異国での生活で神経質になったせいであろうか、風邪、湿疹、筋肉痛等の軽い症状を訴えて病院へ通った研修員が多かった。ペルーの研修員が父親の逝去のため、5月3日から5月15日まで一時帰国し、その後、一時不眠症になった時期もあったが、最後まで無事に研修を続けた。
 生活面では、積極的に外出して休日を楽しむ研修員はあまりいなくて、ほとんどの研修員は当センターに留まって、インターネットを楽しんでいた。レクリエーションとして、サッカー観戦、富士山バスツアー、ディズニーシー見学、京都モーニングツアー等の行事を催したほか、ボランティアにホームビジット、ハイキング等に招待していただいた。また、JICA主催のサッカー大会に参加して他コースの研修員との親睦も深めた。
 実習期間中は、各運輸局で手厚い歓迎と親切丁寧な指導を受け、研修時問外もスタッフと親睦を深めた研修員が多く、楽しい実習を受けた様子である。これも一重に実習先である地方運輸局の実習担当者及び関係者の努力と配慮のお蔭であり、感謝いたしたい。
以上
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