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アイコウボウ USA?障害者とボランティア 13年のあゆみ

 事業名 国際交流活動に係る印刷物の配布及び講演会開催
 団体名 注目度注目度1


大雪のもちつき大会
 暮れも押し迫った十二月も半ば過ぎ、誰からとなく「もちつきをしよう」という声が上がった。もうすぐお正月。お正月といえばおもちつき。日本の古式ゆかしい年中行事である。
 杵と臼はアイコウボウにあった。宮前さん一家が日本を発つ前に船便で送ったものである。もち米は日本食材のお店「安全」で買えばいい。アメリカのお正月でお雑煮を食べるのも、なかなかおつなものである。
 だがここで「待った」がかかった。待ったをかけたのはボランティアの宮前祐子さん。
 「どうせやるならアメリカ人を呼ぼうよ。アメリカ人を呼んで、日本の文化を知ってもらおうよ」
 この意見にみんな大賛成。しかし、アメリカ人を呼ぶとなると準備が必要である。出来るだけ多くの人に来てもらいたい。招待状を作ったり、発送したり、十二月中にするのはちょっと難しい。そうでなくても十二月はクリスマスの準備で忙しいのである。
 そこで私たちは、余裕を持って年を越した一月二十七日にもちつき大会をすることにした。お正月におもちは食べられないが、それは仕方がない。私たちはもちつき大会を目指し、さっそく準備に取り掛かった。
 リーダーは祐子さんに決まった。そこでまずリーダーがしなければならないのは案内状作り。
 ところが、英語は話せる祐子さんだが、案内状の文面となるとちょっと心もとない。さて、どうしたものかと考えた結果、最適な人物を思いついた。シャーロットさんである。
 シャーロットさんは近所に住むアメリカ人で、祐子さんが彼女に日本語を教え、彼女からは反対に英語を教えてもらっている関係だった。
 話をすると、もちろんOK。祐子さんがイベントの趣旨をシャーロットさんに話し、それを文章にまとめてもらった。こうして出来た案内状を、こ近所の人たち、日頃お世話になっている方々、理事の皆さんとその家族に発送する。
 さて肝心のもちつきだが、祐子さんは日本でもちをついたことはあったが、もち米の蒸し方が分からなかった。そこで日本に電話をして、もち米の蒸し方を友達に訊いた。
 友達が言うには、セイロを使って二時間で蒸し上がるらしい。ところがアメリカにはそのセイロがない。そこで、大なべにさらしを敷いてもち米を蒸すことにした。セイロではないので二時間では無理だろうが、四時間ぐらい蒸せばどうにかなるだろう、そう考えて予定を立てた。
 もちつき大会前日には家中の掃除をした。これは全員参加。スタッフやボランティアだけでなく、メンバーの健くんたちも掃除を手伝った。それから「安全」で買ってきたもち米を水に浸けて、準備はOK。あとは明日を待つばかりである。
 明日はいったい何人の人たちが来てくれるだろう。その夜、私たちは期待と不安に胸をドキドキさせながら眠りに就いた。
 しかし、翌朝起きて私たちはビックリ。外は一面真っ白である。どうやら夜のうちに大雪が降ったらしい。未だやむ気配を見せない雪は、次から次へと舞い落ち、辺り一面に降り積もっている。道路はとても車が走れる状態ではなかった。
 普通であれば降り積もる雪に大喜びの私たちだが、この時ばかりはみんな呆然。せっかくの準備が水の泡である。事情の分からない杏ちゃんだけが、犬のスミレと一緒に雪の中を転げまわっている。テレビでもこの大雪は報道されていて、各地で道路が通行止めとなり、交通機関は麻痺しているようだった。
 時間をかけて準備したもちつき大会だったが、これはもう中止せざるをえない。私たちはがっくりと肩を落とした。しかし、もち米はもう水に浸けてしまっている。これは今日中についてしまわないとどうしようもない。祐子さんは予定通り昼前からなべを持ち出し、もち米を蒸し始めた。
 ところが、四時間で蒸し上がる予定のもち米がいつまで経っても蒸し上がらない。アイコウボウのレンジはガスではなく電気なので火力が弱く、思うように蒸せないのである。結局もち米が蒸し上がったのは七時間後。陽はとっぷりと暮れてしまっていた。
 このあと私たちは、夜になっても降りやまない雪の中、玄関先の外灯に照らされながら、ただひたすらもちをつき続けた。こうして、お客さんの誰もいないもちつき大会が終了したのは、夜の九時を少し過ぎた頃であった。
 
雪の中、さびしいもちつき大会
 
 さて、こんなことでめげてはいられない。今日がダメなら明日がある。私たちは再びもちつき大会のプランを練り始めた。
 二月二十四日。日程はすぐに決まった。だが一度ケチがつくと、ただもちつきをするだけではつまらないような気がしてきた。何かもっと面白いことはないだろうか。そこで、スタッフの小林さんが茶道を習っていることを思い出した。
 これだ、茶道だ。即座に決定。それから三月も近いということで、雛祭りも一緒にやることにした。案内状を作り直し、もう一度発送する。
 ところがアイコウボウには雛人形がなかった。しかし、案内状には「雛祭りをする」と書いてしまっている。雛人形をどこからか調達しなくてはならない。私たちはアメリカで知り合った友人知人に片っ端から電話をした。
 しかし、雛人形を持っているという人はなかなか見つからなかった。二十四日はどんどん近づいてくる。私たちはだんだんあせってきた。このままでは雛人形抜きで雛祭りをしなければならない。なんて間抜けな。そんな不安に駆られはじめた頃、「友人が雛人形を持っている」という人が現れた。
 私たちは飛び上がって喜んだ。聞けば立派な壇飾りだそうである。これで面目も保たれる。私たちはホッと胸をなでおろした。
 
 当日は、前回とうって変わって晴天に恵まれた。
 もち米を蒸すのに七時間かかることが前回の経験で分かっていたので、祐子さんは朝九時からもち米を蒸し始めた。スタッフの小林さん、留学生の安楽さん、それに杏ちゃんが着物に着替えて雛祭りの準備をする。
 三時前から三々五々人が集まりだした。予定では三時から小林さんがお茶をたてることになっていた。
 まず最初に、雛人形の前で祐子さんが雛祭りの由来を説明する。お客さんのアメリカ人はみんな神妙な顔つきで聞いている。
 それからリビングに敷いたござの上で小林さんがお茶をたてる。アメリヵ人も慣れない正座をしてお茶をいただく。抹茶は苦いので大丈夫かなと思っていたが、案外「おいしい」という人が多かった。
 そして、いよいよ四時からもちつき大会が始まった。
 もちつきが始まる頃には参加者も五十人以上になり、玄関先に臼を出してみんなで代わる代わるもちをついた。アメリカ人のおじさんやおばさん、子供たちもたくさん参加した。
 前回の寂しいもちつき大会とは違い、今回は人数が多いので、もちは瞬く間につき上がった。ついたもちは一旦家に持って入り、メンバーと一緒に丸めて、用意していたあんこ、きなこ、大根おろし、納豆をつけて食べた。
 意外にあんこの人気が高く、お汁粉も作ったがすっかりなくなってしまった。さすがに甘い物好きのアメリカ人である。ちなみに納豆は予想通りてんで人気がなかった。
 そんなこんなで大盛況のうち、怒涛のもちつき大会は終了した。
 紆余曲折をへながらも大成功に終わったもちつき大会。その夜、祐子さんはさぞやぐっすりと眠れたことだろう。







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更新日: 2008年11月15日

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