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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成14年神審第57号
件名

プレジャーボート釜石転覆事件(簡易)

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成14年10月1日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:釜石船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船外機に濡損

原因
磯波の発生状態に対する確認不十分

裁決主文

 本件転覆は、磯波の発生状態に対する確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月28日08時20分
 兵庫県竹野海岸沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート釜石
登録長 4.50メートル
1.20メートル
深さ 0.60メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 7キロワット

3 事実の経過
 釜石は、船外機付無甲板のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、魚釣りの目的で、船首0.15メートル船尾0.30メートルの喫水をもって、平成14年4月28日08時00分兵庫県竹野港竹野川上流にある船着場を発し、同県切浜漁港北方沖合の白埼付近に向かった。
 08時16分半A受審人は、竹野港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から300度(真方位、以下同じ。)720メートルの地点に達したとき、これまでに何回となく行ったことのある竹野海岸沖合のわかめの自生水域(以下「岩礁水域」という。)に寄せ、生育状態を見ることとし、同水域に磯波が発生しているのを認めたので、その西側から接近することとして針路を181度に定め、機関を半速力前進にかけ、8.1ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行した。
 岩礁水域は、北防波堤灯台から250度580メートルばかりの、竹野海岸から約30メートル沖合にあり、3つの離岩礁を中心にして外側へ20メートルばかり拡延する底質が岩の水深1メートル足らずのところで、当時、同水域には、北寄りの風とうねりとの影響で磯波が発生しており、5ないし6回の割合で波高約1メートルの大きい波が含まれていた。
 08時19分A受審人は、北防波堤灯台から248度690メートルの地点に達したとき、岩礁水域に向かうこととしたが、さほど大きい波はないものと思い、船舶に危険を生じないよう、磯波の発生状態に対する確認を十分に行わなかったので、時折大きい波が発生していることに気付かず、針路を同水域に向かう060度に転じたのち、機関を微速力前進の2.6ノットに減じ、右舷船尾に座って操舵に当たり、海中の様子を見ながら続航した。
 こうして、A受審人は、08時20分わずか前離岩礁が間近になったので機関を停止したとき、突然左舷側に大きな磯波を受け、釜石は、船体が右舷側に大傾斜して復原力を喪失し、08時20分北防波堤灯台から249度610メートルの地点において、右舷側に瞬時に転覆した。
 当時、天候は晴で風力1の北北西風が吹き、北寄りのうねりと時折大きな磯波があり、潮候は下げ潮の末期であった。
 転覆の結果、A受審人は海中に投げ出された後、船体につかまっているうち、竹野海岸に漂着したが、釜石は船外機に濡損を生じ、のち修復された。

(原因)
 本件転覆は、兵庫県竹野海岸沖合において、磯波の発生状態に対する確認が不十分で、わかめの生育状態を見るため岩礁水域に進入中、大きな磯波を受け右舷側に大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県竹野海岸沖合において、わかめの生育状態を見るため岩礁水域に向かう場合、船舶に危険を生じないよう、磯波の発生状態に対する確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、さほど大きい波はないものと思い、磯波の発生状態に対する確認を十分に行わなかった職務上の過失により、時折大きい波が発生していることに気付かないまま同水域に進入し、大きい磯波を受け右舷側に大傾斜して、復原力の喪失により転覆を招き、船外機に濡損を生じさせるに至った。





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