日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年仙審第37号
件名

漁船第三十一金亀丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年12月10日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(上中拓治、亀井龍雄、大山繁樹)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:第三十一金亀丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底に大破口、浸水し全損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月25日03時20分
 新潟港西区

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十一金亀丸
総トン数 19トン
登録長 17.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 433キロワット

3 事実の経過
 第三十一金亀丸(以下「金亀丸」という。)は、いか釣り漁に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、船首0.5メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成14年5月24日12時00分新潟港西区を発し、佐渡島北方沖合において操業し、スルメいか約700キログラムを漁獲したのち、23時30分弾埼灯台から330度(真方位、以下同じ。)10.8海里の地点より帰途に就いた。
 ところで、A受審人は、同年5月13日以来、同月18日及び21日の休漁日以外は、基地の新潟港を12時ごろ出港して佐渡沖の漁場で夜間操業し、翌朝06時ごろ帰港することを繰り返しており、往復の航海当直及び操業中の船橋当直を同人が一人で行うほか、入港中も水揚げや燃料・水の補給などに立ち会っていたことから、十分な休息をとることができず、睡眠不足の状態にあった。
 A受審人は、帰航開始後、他の乗組員を休息させて単独で船橋当直に従事し、機関を全速力前進にかけ、西北西風の影響を避けるべく当初は佐渡島寄りを航行し、翌25日01時20分新潟港西区第2西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から306度23.0海里の地点で、針路を同防波堤の先端に向首する125度に定め、12.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 A受審人は、船橋左舷側に置かれた椅子に腰掛けて当直に当たり、時々立ち上がって船橋後部の無線機で僚船と交信するなどして眠気を払っているうち、02時55分新潟港西区第2西防波堤まで約5海里となったところで、最後の交信を終えて椅子に座ったところ、激しい眠気を感じたが、まもなく入港だから居眠りすることはあるまいと思い、立って外気に当たるとか、手動操舵に切り換えるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 こうして金亀丸は、A受審人がレーダーで第2西防波堤まで約3海里となったのを認めたものの、まもなく椅子に座ったまま居眠りに陥り、原針路、原速力のまま続航し、03時20分西防波堤灯台から124度1.5海里の地点において、新潟空港沖合の消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力4の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、金亀丸は船底に大破口を生じて浸水し、後日クレーン船によって引き下ろされたものの、解撤されて全損となった。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、漁場より新潟港西区に帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、当直者が居眠りに陥り、陸岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に従事し、椅子に座った状態で自動操舵として、漁場より新潟港西区に向けて帰航中、眠気を感じるようになった場合、連日の夜間操業で睡眠不足の状態であったから、居眠り運航とならないよう、立って同当直を行うとか、手動操舵に切り換えるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、入港が近いのでまさか居眠りすることはあるまいと思い、立って同当直を行うなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、椅子に座ってまもなく居眠りに陥り、陸岸に向首したまま進行して新潟空港沖合の消波ブロックに乗り揚げ、船底に大破口を生じて全損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION