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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年那審第34号
件名

引船長崎丸引船列乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年11月14日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖、金城隆支、平井 透)

理事官
中谷啓二

受審人
A 職名:長崎丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
長良丸・・・船底外板全般に擦過傷及び同中央部に凹損
ナガシマ丸・・・船底外板に軽微な擦過傷

原因
長崎丸・・・曳航準備不十分

主文

 本件乗揚は、港内曳航時の曳航準備が不十分で、曳航索が切断し、風波により圧流されたことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年11月18日19時10分
 沖縄県那覇港

2 船舶の要目
船種船名 引船長崎丸 浚渫船第17長良丸
総トン数 19トン  
全長 16.50メートル  
登録長   30.00メートル
4.99メートル 10.00メートル
深さ 2.22メートル 2.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 882キロワット  
船種船名 揚錨船第5ナガシマ丸  
登録長 10.00メートル  
4.58メートル  
深さ 1.00メートル  
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 88キロワット  

3 事実の経過
 長崎丸は、沖縄県那覇港を基地とし、主として沖縄本島と周辺諸島間の台船などの曳航作業に従事する鋼製引船兼押船で、A受審人ほか1人が乗り組み、船首尾とも1.6メートルの喫水の作業員4人が乗った非自航の鋼製ポンプ式浚渫船第17長良丸(以下「長良丸」という。)とその後方の船首0.4メートル船尾1.0メートルの喫水となった無人の鋼製揚錨船第5ナガシマ丸(以下「ナガシマ丸」という。)を船尾に縦列に引いて引船列(以下「長崎丸引船列」という。)とし、船首1.0メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成13年11月18日09時30分同県運天港を発し、同県港川漁港に向かった。
 ところで、発航時長崎丸引船列の曳航索は、沖縄県内では被引船側が港内曳航用の同索を用意する習慣となっていたことから、長良丸が延出した直径50ミリメートル(以下「ミリ」という。)長さ50メートルで両端にアイの入ったナイロンロープの先端を、長崎丸の船尾端から前方約5.2メートル甲板上約1.5メートルの高さに設けられた曳航フックにかけ、その後端に、長良丸の船尾部両舷側のビットに係止した直径38ミリ長さ24メートルのワイヤロープの各先端をシャックルでY字型に連結したものであった。また、長良丸とナガシマ丸間は、長良丸の船首部のウインチに巻いた直径28ミリのワイヤロープを船首端から少し延出し、これにナガシマ丸の船首両舷側に取った直径18ミリ長さ6メートルの2本のワイヤロープをシャックルでY字型に連結していた。
 A受審人は、港内は穏やかであったものの、機関を前進にかけ曳航を開始してすぐにナイロンロープの曳航索が緊張した拍子に切断し、長良丸には予備の曳航索がなく、自船にも直径65ミリ長さ50メートルほどの港内曳航に適した曳航索(以下「港内曳航索」という。)がなかったので、代わりに手持の直径65ミリ長さ20メートルのクレモナロープ(以下「短索」という。)を使用して港の出入口水路に向かった。
 10時30分ごろA受審人は、運天港出入口水路を通航したところで、短索に自船の同径で長さ200メートルのクレモナロープ(以下「長索」という。)をつないで曳航フックにかけ、次いで長良丸がウインチからワイヤロープを約100メートル繰り出し、長崎丸引船列の全長が約390メートルとなった状態で、機関を極微速力前進にかけて曳航を再開し、徐々に増速して約6.5ノットの全速力前進としたのち、甲板員と船橋当直を交代した。
 15時52分A受審人は、残波岬西北西方約0.6海里の地点で、甲板員から船橋当直を引き継いだところ、同岬沖合通過が予定より遅れ、このまま目的地に向かっても、初めて入港する港川漁港への到着時刻が夜間になることが分かったので、同漁港への入港をあきらめ、途中那覇港に寄せて翌朝同港を出港することとし、全速力前進の4.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵として同港北部の浦添第1防波堤(以下「第1防波堤」という。)東端付近に向けて進行した。
 そのころ、A受審人は、沖縄本島地方中南部に波浪注意報が発表されている中、北寄りの風が次第に強まり、波がやや高くなったのを認めたものの、曳航には支障がなかったので、同一速力のまま、曳航索の短縮を風波の影響の少ない第1防波堤南側の陰になったところで行うこととして南下を続けた。
 18時36分A受審人は、第1防波堤東端の手前約340メートルの、那覇港浦添北内防波堤灯台(以下「内防波堤灯台」という。)から340度(真方位、以下同じ。)1,220メートルの地点に達したとき、手動操舵に切り換えて機関を停止し、その後機関の前進と停止を繰り返して平均2.0ノットの速力で進行した。そして、18時41分第1防波堤東端を右舷側50メートルに航過し、同時48分半同端南西方約400メートルの地点に至り、ほとんど行きあしを止め、内防波堤灯台東南東方1,100メートルばかりのところの浦添ふ頭に向かうための曳航準備にかかった。
 A受審人は、長索を、曳航に使用できず巻き取り専用の船尾のロープ巻き取りリールを使用して巻き始め、つなぎ目のところでシャックルを外し、短索の先端を曳航フックにかけて曳航準備を終えたものの、自船には港内曳航索がなく、それまで使用中の短索では風波の影響を受けると曳航索としては短すぎて、長良丸の船首が振れ回ったり、動揺したりするなどしたときに短索が緊張し、衝撃的な張力がかかり切断するおそれがあったが、短索でも大丈夫と思い、長索を全部巻き取らずに途中で30メートルほど残して短索につないだままとし、港内曳航に適するとされる50メートルほどの長さに調整したあと自船船尾ビットに数回巻いて係止するなどの曳航準備を十分に行わなかった。
 18時55分半A受審人は、内防波堤灯台から302度900メートルの地点で、所定の灯火を表示し、針路を内防波堤間に向く130度に定めて手動操舵とし、機関を前進にかけて曳航を開始し、そのころ長良丸がウインチでナガシマ丸間のワイヤロープを巻き始め、その後自船は機関の前進と停止を繰り返して平均2.0ノットの速力で、折からの北寄りの風波により右方に10度圧流されながら、140度の進路となって続航した。
 こうして、長崎丸引船列は、北寄りの風波により圧流され、動揺しながら進行中、19時05分内防波堤灯台から275度400メートルの地点で、長崎丸と長良丸間の短索が切断し、A受審人が急いで自船の係留索を長良丸に送り、船首を109度に向け、機関を極微速力前進にかけて曳航を再開したものの、これもすぐ切断し、長良丸は、風下の浅礁に向かって圧流され、19時10分内防波堤灯台から210度340メートルの地点において、船首を東方に向けて浅礁に乗り揚げ、続いてナガシマ丸は、長良丸に引き寄せられ作業員1人が乗り移ってワイヤロープのつなぎ目を外し、長良丸を離礁させようと同船を押すなどしているうちに圧流され、19時15分内防波堤灯台から198度430メートルの地点において、船首を東方に向けて浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力5の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、波浪注意報が発表されており、かなり波があった。
 乗揚の結果、長良丸は船底外板全般に擦過傷及び同中央部に凹損を生じ、のち救助船により引き下ろされて修理され、ナガシマ丸は船底外板に軽微な擦過傷を生じたが、長崎丸により引き下ろされた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、波浪注意報が発表されている状況下、沖縄県那覇港内において、長良丸及びナガシマ丸を内防波堤内の浦添ふ頭に向け曳航する際、曳航準備が不十分で、曳航索が切断し、両船が風波により浅礁に向かって圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、波浪注意報が発表されている状況下、沖縄県那覇港内において、長良丸及びナガシマ丸を内防波堤内の浦添ふ頭に向け曳航する場合、自船には港内曳航索がなく、それまで使用中の短索では風波の影響を受けると曳航索としては短すぎて、長良丸の船首が振れ回ったり、動揺したりするなどしたときに短索が緊張し、衝撃的な張力がかかり切断するおそれがあったから、曳航索が切断しないよう、長索を全部巻き取らずに途中で30メートルほど残して短索につないだままとし、港内曳航に適するとされる50メートルほどの長さに調整したあと自船船尾ビットに数回巻いて係止するなどの曳航準備を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、短索でも大丈夫と思い、曳航準備を十分に行わなかった職務上の過失により、北寄りの風波により圧流され、動揺しながら曳航中、短索が切断し、長良丸及びナガシマ丸が風下の浅礁に向かって圧流されて乗揚を招き、長良丸の船底外板全般に擦過傷及び同中央部に凹損を、ナガシマ丸の船底外板に軽微な擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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